暑い夏がやってきました。この季節、特に気をつけたいのが愛猫さんの水分補給問題。お水を容器に入れて置いておくというお宅が多いかと思いますが、愛猫さんがどれだけ飲んでいるか把握できているという人はあまりいないのではないでしょうか。どのような容器だったら愛猫さんが喜ぶのか、検証してみました。
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猫の祖先とされるリビアヤマネコは、水の少ない砂漠で暮らしているため、尿の濃度を高めて、あまり水分をとらなくても生きていける体の仕組みになっています。その遺伝子を受け継ぐ猫(イエネコ)もあまり水分をとらない動物で、腎臓に負担がかかるなど、泌尿器系の病気にかかりやすいといわれています。
飲まなくても平気な様子でいても、実際に猫に必要とされる1日の水分量は、体重1キロにつき50~70ミリリットルほど(具体的には、1日に必要なエネルギーの量とほぼ同等の水分量が必要)。体重が5㎏の猫さんなら250~350ミリリットルくらいは必要になります。
充分な水分をとっていないと、腎臓の病気の他にも、尿路結石ができたり、便秘(ひどいと手術も)になったりと、いいことはありません。愛猫さんの健康を考えたら、ちゃんと必要な量の水分はとってほしいですよね。(必要量以上にお水を飲み過ぎている猫さんは、病気の可能性があるので、病院で診てもらいましょう)
筆者は2匹の猫を飼っていますが、13歳、15歳の高齢猫。慢性腎不全の指標となるクレアチニンの数値(高いと腎臓機能が低下している)も正常値が0.8~1.6のところ、1匹は2.8でステージ2(軽度)と3の境、もう1匹は3でステージ4(中程度)。できるだけ水分をとってもらいたいと思って、猫たちが飲みやすい、飲みたくなる給水器はないかと、いつも気にかけています。
もともと、かかりつけの獣医さんにすすめられた、お水が美味しくなるらしい陶器の器を使っていました。確かに飲んでくれてはいますが、「おいしいにゃ!」と直接いわれたわけでもなく美味しく飲んでくれているのか、よくわかりません。
ただ、直径が大きいため、ひげが水や器の縁に当たらないのは、飲みやすい点ではあると思います。
目盛りのある陶器の器も買ってみましたが、現実的には家に複数の器を置いていたり、人間が水道を使っている時にそこから直接飲んだりすることもあるので、我が家ではメモリを活かせていません。
陶器やステンレス、プラスティックなど素材は様々。金属製など素材によっては漂白剤などに浸けて消毒できないものや、陶器のように割れやすいものなど、それぞれメリットとデメリットがあります。
ただ、ひとついえることは、こうした深いお皿タイプの器だと、置いておくと埃や猫の毛が浮かんで気になるということ。ちょっと油断すると、水面に張り付くようにたくさんの猫毛が浮かんでしまうなんてことも。いくら猫は自分の体をなめては毛を食べて、毛玉を吐き出す動物とはいえ、わざわざ毛が浮かんだお水を飲ませるのも忍びないものです。
そこで我が家では、フィルターがついた電動式のファウンテン(噴水状)の給水器も用意しています。ひとつは、水道の蛇口のように水がちょろちょろと落ちるタイプ。もうひとつは、もこもこと水が湧いてくるタイプ。どちらも水たまり部分もあります。これなら毛が浮かぶこともなく、流水式なので蛇口から飲みたがる猫も納得してくれそうです。
いろいろ置いてみた結果、我が家の猫たちが一番好んで使っているのは、水道の蛇口のように水が零れ落ちてくるタイプです。こればかりは好みによるので、愛猫さんが気に入ってくれる器を探したいですね。
飲み方いろいろ、楽しく水分補給
我が家の猫は水道から水が落ちるタイプが好きだと書きましたが、もうひとつ、うちの猫にはこだわりがあります。それは、筆者が直接手で持っている器から水を飲むこと。
帰宅すると、我が家の黒猫(雄)はすぐさま台所に上がり、ちょこんと行儀よく座って筆者を待ちます。それが「お水」の合図。水を満たした入れ物を猫に差し出すと、ぴちゃぴちゃと嬉しそうに飲み始めます。コップやマグカップ、計量カップ、ボール、湯飲み、鍋…なんでもいいらしいです。とにかく、筆者が直接持っている入れ物から飲みたいのです。
給水器の水を好きな時に飲んでいますから、筆者が持った水でなければ断じて飲まない、というわけでもないようです。だから、これはおそらく、筆者とのコミュニケーション手段のひとつなのだろうと解釈しています。
インスタグラムで4匹の愛猫さんの写真や動画を投稿している@kamenyannyanさんのおうちでは、ちょっと変わった水の飲み方で水分補給を楽しんでいるようです。
@kamenyannyanさんのお宅のアポロ・ライト・エル・アンという名の4匹は、カラスに襲われた子猫のわさびちゃんを保護した夫妻(わさびちゃんちの父さんと母さん。詳しくは小学館刊『ありがとう!わさびちゃん』)が保護し、@kamenyannyanさんが里親さんになった保護猫です。
この元保護猫さんたちがどんな飲み方をするかというと、お風呂場でシャワーの水を浴びながら飲むというもの。ちゃんと部屋に水は用意してあるのに、@kamenyannyanさんがお風呂場に行くとついてきて、シャワーの水をせがむのです。
最初にシャワー給水の楽しさを発見(?)したというアポロ・ライト兄弟は浴槽の縁にのってシャワーのサイドで水を上手に飲みます。2匹のお兄ちゃんの間を割るように真ん中に陣取って、浴槽の内側から、縁に手をかけて一心不乱に水を飲むのは後から@kamenyannyanさんの家族になったエル。顔も手もすぐにずぶぬれになりますが、全く気にする様子もなく、水を飲みます。
4匹のうち、このずぶぬれシャワー給水をするのは男の子のアポロ・ライト・エルの3匹。女の子のアンちゃんは決して参加せず、冷たい視線を男の子に投げかけているだけ。本当に、何を考えているんでしょうね、男の子たちは……。
これも、愛猫さんとの給水コミュニケーションの一環なのかもしれません。後で拭いたりするのも手間だと思いますが、猫たちが好んでこういう飲み方をするので続けている@kamenyannyanさん。猫愛に溢れている飼い主さんですね。
@hako3hnさんも、愛情たっぷりの方法で愛猫さんに水分補給をさせています。
@hako3hnさんの愛猫さんは、旅先の牧場で見かけ、牧場の人に「最近来るようになった、捨てられたみたい」と聞いたためそのまま連れ帰ったことから、牧くんと名付けられた保護猫さんです。持病があるため、@hako3hnさんは牧くんの健康管理にはいつも気をつけています。
そんな@hako3hnさんは、牧くんに水分をしっかりとってもらいたくて、手作りのスープを作って飲ませているそう。チキンと人参などの野菜をコトコトと煮て、おいしい出汁が出たスープは、牧くんも大好物。
もちろん、玉ねぎなど猫が中毒になったりアレルギー症状を誘発したり病気の原因になってしまうような野菜は使わないよう、気をつけています。塩なども一切加えません。総合栄養食と併用して、水分補給を兼ねたおやつとして与えています。
日頃、ドライフードばかり食べている愛猫さんには、こういうおいしく健康的なスープを与えるだけでも、水分補給になります。普通の水にマグロやチキンの煮汁を加えて、愛猫さんが飲みたくなるような味にするのも手ですね。
ドライフードは日持ちがしやすいように水分量も少なめで、10%前後のものがほとんどです。ウェットフードは歯に歯石が付きやすいなどのデメリットもありますが、水分量は75%~85%と高く、食事をするだけである程度の水分補給ができるというメリットがあります。ちゅーるなどのどろどろとしたおやつも、水分補給になります。
普段はあまりウェットを与えないという飼い主さんもいるかもしれませんが、災害時のための愛猫さん用備蓄の中には、ぜひ、ウェットフードを入れておくことをお勧めします。非常事態では充分な水が得られるかもわかりませんので、水分量の多いウェットフードを与えることで、水分補給になるためです。
話はそれましたが、ともあれ、愛猫さんの健康管理の一環として、水分補給の方法や器選び、楽しみながら見つけてみてください。
文/一乗谷かおり