岐阜県関市は、包丁の国内生産量の約5割を占める刃物の名産地として知られる。市内には約400もの刃物関連業者がひしめき、完成メーカーも100を超える。市内の事業所の約4割が刃物関連に従事しているといわれる関は、刃物関連の職人が集結する町なのである。
そんな関にある刃物の完成メーカーのひとつ「三星刃物」の包丁も、職人の手から手へ渡り、完成品となる。
『サライ』9月号の「メイド・イン・ニッポン」特集でも紹介している、三星刃物の『和 NAGOMI 丸』という洋包丁の場合、金属の打ち抜き、熱処理、削り、ハンドル成形、ハンドル取り付け、ハンドル磨きといったさまざまの工程を経て、最終的に「刃付け」がされて製品となる。それぞれの工程に、専門の企業が関わる。
誌面では伝えきれなかったその製作工程を、下記に写真で紹介しよう。
■1:プレス
金属の板から包丁の元型を打ち抜く「プレス」工程は、長村金属という会社が担当している。
■2:焼き入れ
包丁の元型を窯のなかで加熱する「焼き入れ」工程は、藤田熱処理場の担当だ。
■4:ハンドル成型
包丁の持ち手の部分を担当するのは、山信製作所。コンピュータ制御により緻密な成形が可能となっている。
■5:ハンドル取り付け・磨き
三星刃物の工場に納品された包丁本体(金属部分)とハンドルは一体となり、ハンドル部分の磨きが施される。
以上、洋包丁が完成するまでの各工程をご覧にいれたが、いかがだろうか。1本の包丁が、複数の専門業者と、そこにいる熟練職人たちの合作であることが、おわかりいただけたと思う。
作るだけではない。いい包丁は、いつまでも切れ味よく使ってほしい。かといって砥石で研ぐのはややハードルが高い。そこで三星刃物では、新聞紙と紙やすりを使って、誰でもできる包丁研ぎの普及にもつとめている。
下は同社が公開している、家庭でできる包丁の簡単なメインテナンス法の動画だ。筆者も体験したが、新聞紙だけでも切れが復活する。ぜひ試していだきたい。
世界に誇れるメイド・イン・ニッポンの刃物づくり。知れば知るほど、台所で包丁を手にするのが楽しくなってくるだろう。
写真(指定以外)・文/宇野正樹
※「メイド・イン・ニッポン」を特集した『サライ』9月号が発売中です。「世界がうらやむ『ニッポンの銘品』11」の一つとして、三星刃物の洋包丁「和 NAGOMI」を紹介しています。