洋画家・中川一政(1893-1991)の展覧会が、神戸市東灘区の香雪美術館で開催されています。(~9月19日まで)
同美術館は、朝日新聞社の創業者・村山龍平が蒐集した日本、東洋の古美術などを収蔵する美術館で、春秋のコレクション展のほかに日本美術の作家に焦点を当てた企画展を開いています。
今回焦点を当てた作家は、没後25年を過ぎてもなお人々を魅了し続ける中川一政(1893-1991)です。
中川一政は、鮮やかでうねるような力強い筆致の薔薇や、風景などの連作で知られる洋画家ですが、油彩のみならず随筆、装丁デザイン、岩彩、書、陶芸など多方面で活動し、1975年には文化勲章を受章しました。
本展の見どころを香雪美術館・学芸員の落合治子さんにうかがいました。
「薔薇の画家として知られる中川一政ですが、表現者としては与謝野晶子に認められて短歌から出発した文芸志向の人で、生涯を通じて漢詩や万葉集に親しみ、60歳頃より本格的に書に取り組んでいます。
晩年は陶芸も試み、絵付けだけではなく手捻りから手掛けて器を作りました。それは、彫刻を作り上げるような姿であったといいます。自分は上手いものを作ろうと思っているのではなく、心に響いたものを表現しているだけ、と語っています。
優れた墨蹟に対峙した瞬間を『心の太鼓が鳴りわたる』と語っていた一政は、芸術は生きていなければいけない、とも語っています。
本展では、一政の文字や造形に創作の情熱が表れた絵画、書、陶芸などの作品65点を展観し、一政の『心の響き』を伝えます」
中川一政の多彩な芸術を一堂に観られるまたとない機会です。ぜひ足をお運びください。
香雪美術館のサイトはこちら
【「没後25年 中川一政展」~心の太鼓が鳴りわたる】
■会期/前期:2016年8月20日(土)~9月19日(月・祝)
■後期:9月21日(水)~10月23日(日)
※作品保護のため、一部展示替えあり
■会場/香雪美術館
■住所/神戸市東灘区御影郡家2-12-1
■電話番号/078・841・0652
■料金/一般800(600)円 大高生500(400)円 ( )内は20名以上の団体料金 ※中学生以下無料
■開館時間/10時から17時まで(入館は16時30分まで)
■休館日/9月20日(火)
■アクセス/阪急神戸線御影駅南改札口より東南へ徒歩約5分、JR東海道線住吉駅より西北へ徒歩約15分、阪神本線御影駅より市バス19系統で「阪急御影」下車東南へ徒歩約5分
取材・文/池田充枝
1989年「サライ」