昨年9月に75歳で亡くなった女優・樹木希林さんの講演会の貴重な記録が、DVDつき書籍『樹木希林 ある日の遺言 食べるのも日常 死ぬのも日常』として上梓される。

《やはりね、死ぬにも時がある、どんな人でもね》

《ただ捨てるんじゃなくて、モノの冥利も考えて、どう活かすか》

(『樹木希林 ある日の遺言 食べるのも日常 死ぬのも日常』より)

2016年10月29日、「樹木希林の遺言」の演題で静岡市にて開催された講演の模様をDVDで初公開。希林さんが講演を引き受けることは滅多になく、講演自体が貴重な記録だ。講演では、希林さん独特の人生観、死生観が、時折笑いを交えながら、淡々と語られた。

2016年10月29日、「樹木希林の遺言」の演題で静岡市にて開催された講演の模様をDVDで初公開。希林さんが講演を引き受けることは滅多になく、講演自体が貴重な記録だ。講演では、希林さん独特の人生観、死生観が、時折笑いを交えながら、淡々と語られた。

「病気になったっていうことが、すごく自分の人生で得してる」

樹木希林さんが、2年半前に、静岡市で行なわれた講演会で語った言葉だ。

2004年に乳がんが発覚した希林さんだが、その後、全身にがんが転移する。人によっては絶望を感じるだろう。だが希林さんは、それを“得”という。

この講演会を希林さんに依頼したテレビ・プロデューサーの田川一郎さん(80歳)は、希林さんと30余年の付き合いになる。

「希林さんらしい言葉です。彼女は、“ありのまま”を受け止める人でした。例えば、女優は日頃からシワの一本を気にしますが、希林さんは違いました。“シワの一本一本を大切にしていこうと思う。せっかくここまで生きてきたのに、もったいないものね”と言っていたほどです。化粧っけもまったくありませんでした」

時折、冗談を交えながら、希林さんの講演は進む。

「健康な人も一度自分が、向こう側へ行くということを想像してみるといいと思うんですね」

今生きているところにずっと留まっていると、自分が見えなくなる。いざ自分ががんになり、“死”が身近になると、いろいろな欲や執着心からすっと離れた。

「死ぬというのは日常なんですね。生きるのも日常、死ぬのも日常」

そう思えるのは、「病気をしたお陰」と希林さんは笑う。

《健康な人も一度自分が、向こう側へ行くということを想像してみるといいと思うんですね。
そうすると、つまんない欲だとか、名誉欲だとか、いろんな欲がありますよね、そういうものからね、離れていくんです》

(『樹木希林 ある日の遺言 食べるのも日常 死ぬのも日常』より)

モノの冥利

田川さんは、希林さんの講演が貴重であることがわかっていた。

「僕自身、彼女の講演を聴いたことがありませんし、度々やっているとも思えなかった。そこで、収録を思い立ち、ご本人の許可を取りました。そして、あまりにも素晴らしい内容だったので、映画館で公開しようと思い、希林さんにお願いしたのですが、彼女の答えは“映画館ねぇ、そこは監督さんが必死に作った作品を上映する場所でしょう”というものでした」

田川さんには、さらにインタビューなども交えたドキュメンタリー作品にする構想もあり、この話はそのままになっていた。

「ところが、希林さんは逝ってしまった。このまま埋もれさせるのはもったいない。何より、使い切ることこそモノの冥利だと考えていた希林さんです。“いいわよ”と言ってくれそうな気がして、娘の也哉子さんに相談したんです。そしたら、“母の話を聴いてみたい、と言ってくださる方がいるのであれば、いいのかもしれませんね”と言ってくれまして」

結果、実現したDVDブック『樹木希林 ある日の遺言 食べるのも日常 死ぬのも日常』。希林さんのメッセージを受け止めたい。

*  *  *

4月19日(金)発売

樹木希林 ある日の遺言
食べるのも日常 死ぬのも日常

食べるのも日常 死ぬのも日常

DVD62分+冊子32頁に樹木希林の遺言を収録

2016年10月の講演「樹木希林の遺言」の映像を収録したDVDと、講演での希林さんの言葉(抄録)、希林さんと田川一郎さんの秘話を掲載した冊子のセット。講演の模様は本書が初公開となる。希林さんの語りは、病気への不安や死への恐怖を和らげてくれ、生きる勇気をもらえる1冊といえよう。

●『樹木希林 ある日の遺言 食べるのも日常 死ぬのも日常』
著・樹木希林/田川一郎 DVD1枚+四六判冊子32頁、1800円
小学館 電話:03・5281・3555

※この記事はサライ2019年5月号より転載しました(取材・文/角山祥道)

 

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