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ビートルズ「イエスタデイ」がジャズの最高難度曲である理由

文/編集部

サライ責任編集でお届けしているCDつき隔週刊マガジン『JAZZ絶対名曲コレクション』第2号「ビートルズ・ジャズ」(10月23日発売/小学館)は、タイトルどおりビートルズ・ナンバーをジャズで楽しむ一冊である。「イエスタデイ」をはじめ、「ノルウェーの森」「ゲット・バック」「イマジン」など、知らない人はきっといない10曲を、ヴォーカルとインストのジャズ・アレンジで収録している。

ジャズ・ファンはもちろん、ビートルズ・ファンも驚くであろう名演ぞろいだが、じつはジャズマンが演奏するにあたってもっとも難しい題材が、ビートルズ・ナンバーなのだ。「イエスタデイ」は世界一カヴァーされているといわれるほど、ジャンルを超えて多くのミュージシャンが演奏しているにもかかわらず、なぜジャズマンだけがたいへんなのか。

本誌監修者の後藤雅洋氏は、こう解説する。

「ビートルズの楽曲を、ジャズマンが取り上げるのは極めて難しい。その理由はジャズ・スタンダードとは違って、誰もが楽曲の『オリジナル』を知っていて、しかもそれはビートルズの強烈な個性とセットになって認識されているから。つまり、ビートルズの楽曲を聴けば、誰もがまずビートルズを想像してしまうわけです。ジャズマンのジャズたるところは、自分の個性を表現することなのですが、そのビートルズのイメージは、ジャズマンにとって大きな足かせになってしまうのです。」

ここがいわゆる「カヴァー」と「ジャズ演奏」の大きな違いである。ジャズは「個性」を聴く音楽なのだ。

さらに後藤氏は続ける。

「ただし、時代によって違いはあります。難しいことにかわりはないのですが、ビートルズの現役時代とそれ以降では、ジャズマンたちのビートルズとの向き合い方も変わってきています。」

では実際ジャズマン自身はどう考えているのだろうか。世界を舞台に活躍するヴォーカリストakikoに聞いた。本号では、akikoの「カム・トゥゲザー」を収録している。

ヴォーカリストakikoさん。豊島岡女子高校から中央大学文学部卒。2001年、名門ジャズ・レーベル、ヴァーヴ・レコード初の日本人女性シンガーとしてデビュー。パリ、ロンドン、ニューヨーク、リオデジャネイロ、オスロ、ニューオリンズと世界各地でレコーディング、 台湾、韓国、ノルウェー、ポーランドなど各国のジャズ・フェスティバルにも出演。アパレル・ブランドとのコラボレーションで帽子やワンピースなどのアイテムを展開するなどファション方面でも活躍。ボイス・ワークショップや、子供のためのジャズワークショップも開催。アーユルヴェーダプランナー、アーユルヴェーダヨーガの資格も取得。今年4月には初の著作『ジャズを詠む/人生を幸せにする、25のスタンダードナンバー』を上梓した。

「ビートルズをジャズで歌うのは難しい。でももっと難しいのは、『今の人』の曲。たとえばレディー・ガガとかテイラー・スウィフトなどはほんとうに難しいと思います。本人たちのイメージが強すぎますから。それらに比べると、私にとってビートルズはスタンダードに近く感じますが、それでも存在感は大きく、気軽に手を出せるというものではないですね。ジャズはいかに自分のテイストを出せるかどうかが大切ですから」

まさに後藤氏の解説を裏付ける発言だが、ではakikoより前の世代、ビートルズが「今の人」だった時代はどうだったのか。本誌CDにはビートルズ現役時代と、それ以降のジャズ演奏を半々に収録している。

「イエスタデイ」ヒットの真っ只中で歌ったのが「女王」サラ・ヴォーン。akikoの言葉にもあるように、「今の人を歌う」これこそ、もっとも難度が高いといえるだろう。サラは即興的に楽曲を改変して歌うのが看板だが、ここではその技を封印。原曲のイメージそのままに「歌」で勝負している。メロディが新鮮な魅力をもっている時期なので、メロディはそのまま。ポール・マッカートニーの声と自身の声を対比させることで、サラは個性を際立たせた。のちにサラは大胆なメロディ改変ヴァージョンも発表していることからも、これは「今の人」に対してのサラの戦略だったのだ。

akikoはどうか。じつはakikoはビートルズ曲集アルバムをリリースしている。「難曲」ビートルズをどう「料理」していったのだろうか。

「大胆に変えるものもあれば、原曲のイメージをそっくり踏襲しながら、今の時代に合わせて感覚をアップデートさせていったり、『85%はオジリナルで、10%エレクトロを加えて、残りの5%はノイズで…』とアレンジャーに注文を出したりと、いろいろです。ただそれらは、無理に作り出すのではなく、曲の方から指示してくれているという感覚があります。曲を受けとめた時点で、もう表現が始まっている、自分の歌が形づくられているという気がします。」

音楽は時代とともにある。演奏者もリスナーも、音楽と時代は切り離して考えられない。

「JAZZ絶対名曲コレクション」の第2号「ビートルズ・ジャズ」は、akikoの「カム・トゥゲザー」をはじめ、ジャズで聴くビートルズ名曲の新旧「名演」全10曲を多角的に徹底解説。ビートルズの名曲が時代によってどう捉えられ、解釈されていたかも、ジャズ・アレンジ演奏からよく見えてくる。これを聴けば、ジャズの面白さもビートルズの面白さもあらためて浮かび上がってくることだろう。

「JAZZ絶対名曲コレクション」公式サイト:http://www.shogakukan.co.jp/pr/jazz4/

【akiko ライヴ・スケジュール】
12/2 愛媛 砥部 TOBEオーベルジュリゾート
12/12 栃木 那須塩原 SHOZO音楽室
12/21 京都 Four Seasons Hotel Kyoto クリスマスディナーコンサート
12/24 東京 Park Hyatt Tokyo クリスマスディナーショウ
このほか最新情報の詳細はこちら>> http://akiko-jazz.com

 

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