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ミナセの腕時計|山間の工房で匠がつくる機械式時計【知られざる秋田・羽後町へ2】

文・取材/山内貴範

個性的なデザインと、職人技を感じさせる作りで人気が急上昇している国産の機械式腕時計「ミナセ」は、秋田県羽後町に本社を置く「協和精工」が手掛けるオリジナルの腕時計ブランドだ。何本も時計を所有している愛好家からも高い支持を集めている。

ミナセが作られる工場は、羽後町の隣、湯沢市の皆瀬にある。ブランド名もこの地名にちなんだものだ。冬には2mも雪が積もるという地に立つ小さな工場の中で、熟練の職人が腕時計製作を行っている。

工場の周囲には広々としたやわらかな野原が広がっている。冬は雪が約2mも積もる豪雪地帯。夏は小鳥のさえずりが心地よく響く、長閑な環境だ。どこかスイスのジュウ渓谷を彷彿とさせる。

この工場で、年間に製造する本数はわずか400本ほど。大量生産とは異なるこだわりのモノづくりが一心に継承されている。

ミナセの腕時計を象徴する技術”ザラツ研磨”を手掛ける職人が、高橋稔さんだ。研磨一筋、30年というベテランである。

「ザラツ研磨はケースの歪みをなくし、美しい面を作る作業。時計の顔を作る工程ですから、気が抜けません」と語る高橋さん。あらかじめザラツ研磨を施すことで、鏡面仕上げを行ってもシャープなエッジが保たれる。ただし微妙な力加減で歪みが生じるため、熟練の技術が要求される作業だ。

時計のイメージを決めるケースの仕上げができるのは、高橋さんのほか、わずか2人に限られる。国内はもちろん、世界的にもザラツ研磨ができる職人は限られている。何しろ、1つのケースを仕上げるだけで約15時間を要するというのだから、大量生産には向かない。

事実、同業者からも”やりすぎ”と言わることもあるそうだが、ミナセにとって、それ以上の褒め言葉はないだろう。

文字盤の略字とケースが一体になった作りも、ミナセの大きな特徴。長年培った協和精工の金属加工の技術がなければ、作れなかった構造だ。

ミナセのこだわりは、ケースだけにとどまらない。なんと、革ベルトまでも自社で製造している。時計工場の脇にある小さな建物の中で、職人が黙々とストラップに糸を通す。完全な手縫いだ。両方向から糸を通すことによって、切れにくく、耐久性の高いストラップになるのだという。

協和精工の鈴木豪社長は、こう話す。

「当社はブランドを立ち上げる段階から、すべてのパーツを自社で製造することを目指してきました。現在でこそ、時計のムーブメント(時計の駆動装置)は他社の製品を用いていますが、すでに自社のムーブメントも開発中です。ゆくゆくは世界進出を目指して、マニュファクチュール(ムーブメントから自社一貫製造する時計メーカー)の時計工房になれるように、努力しています」

秋田から世界へと羽ばたこうとしているミナセの腕時計。人と違ったデザインや、職人技のこだわりが感じられる腕時計を探している人におすすめしたい逸品だ。

文・写真/山内貴範
昭和60年(1985)、秋田県羽後町出身のライター。「サライ」では旅行、建築、鉄道、仏像などの取材を担当。切手、古銭、機械式腕時計などの収集家でもある。

※ミナセの商品の問い合わせや販売店は下記ホームページをご覧ください。
http://www.minase-watches.com/

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