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そのとき神が…藤原新也が撮った世界遺産「沖ノ島」渾身の写真展

文/編集部

周囲わずか4㎞の小さな島が、世界の注目を浴びている。

福岡県の玄界灘上に浮かぶ沖ノ島。古代4世紀後半から9世紀にかけて大和朝廷による国家祭祀が行なわれ、「神宿る島」とも「神坐す島」とも呼ばれる島だ。去る7月9日、ポーランドで開催されたユネスコ総会で世界文化遺産に登録された。

古代の中央政府を挙げて祈りを捧げていた沖ノ島からは、金製指輪、金銅製龍頭、奈良三彩など当代最高級の品々が約8万点も採集された。それらのご神宝が、天平時代一流の工芸品が納められている奈良・正倉院に匹敵することから、沖ノ島は「海の正倉院」の異名を与えられている。

沖ノ島から出土した金銅製龍頭 撮影/藤原新也

平成24年以降3度にわたって、宗像大社の特別な許しを得て沖ノ島に上陸した写真家・作家の藤原新也は、沖ノ島のご神宝の撮影にも挑んだ。撮影が行なわれたのは宗像大社の「神宝館」である。

藤原新也(写真家・作家)[撮影/戸澤裕司]

昭和56年から藤原の助手を務めるカメラマンの石田昌隆が、この日も助手を務めた。石田が語る。

「使用したレンズは、ライカのノクチルックス50mm f1.0。接写をするためにボディとレンズを離して手持ちで撮影するという、藤原さん独自の手法で撮影しました」

この手法での撮影は、ブレずにピントを合わせるのが至難の業。撮影現場は緊張感に包み込まれ、撮影に立ち会った宗像大社の学芸員はいつしか正座で見守ったという。石田が続ける。

「藤原さんは、呼吸を止めて弓道の矢を放つように集中して撮影していました」

その光景はまるで神事の如く厳かな雰囲気だったという。

*  *  *

沖ノ島での祭祀は、国家の安寧と航海の安全を祈るものだった。

古代、中国大陸や朝鮮半島の情勢が不安定な中、その影響を受ける大和朝廷にとっては切実な祭祀。だからこそ、当時の最高級の品々が神に捧げられた。古代の人々の切実な思いが染みこんでいるという点では、奈良・正倉院の宝物をも凌いでいる。

藤原新也が古代の人々へ畏敬の念を抱きながら撮影したのは、ご神宝の写真だけではない。平成24年以降、宗像大社の特別な許可を得て、3度渡島した藤原は、荒れる玄界灘から望む沖ノ島や今も古代のご神宝が遺される島内の遺跡、14にも及ぶ巨石群など島の全貌もカメラにおさめている。

藤原新也の印象に残った風景(『沖ノ島 神坐す「海の正倉院」』より)

荒れる玄界灘で撮影された「奇跡の一枚」(『沖ノ島 神坐す「海の正倉院」』より)

沖ノ島には今も古代の奉献物が遺されている(『沖ノ島 神坐す「海の正倉院」』より)

巨石の岩陰。藤原新也は女陰と見立てた(『沖ノ島 神坐す「海の正倉院」』より)

船首を彷彿とさせる沖ノ島の巨石(『沖ノ島 神坐す「海の正倉院」』より)

これら70点以上の作品は、写真集『神の島 沖ノ島』『沖ノ島 神坐す「海の正倉院」』に収められているが、世界遺産への登録を期に、7月19日から日本橋髙島屋で開催される写真展「沖ノ島 神宿る海の正倉院」で見ることができる。

大型のパネルに引き伸ばされた沖ノ島の威容は、関係者をして、「実際に上陸したときよりも古代の残気を感じる」という。

ぜひ会場で迫力ある写真群を体験いただき、国家の存亡をかけて祈りを捧げた古代人に思いを馳せていただきたい。(文中敬称略)

沖ノ島にある「耳石」。古来、絶対に踏んではいけないと語り継がれている。

文/編集部

『沖ノ島 神坐す「海の正倉院」』
(藤原新也著、本体1200円+税、小学館)
https://www.shogakukan.co.jp/books/09682249

『神の島 沖ノ島』
(著・写真/藤原新也  著/安部龍太郎、本体2,800円+税、小学館)
https://www.shogakukan.co.jp/books/09682081

【展覧会のお知らせ】
「沖ノ島 神宿る海の正倉院」展 撮影/藤原新也

■会期:7月19日(水)~8月1日(火)
■会場:日本橋髙島屋8Fホール
■料金:大人800円、大学・高校生600円、中学生以下無料
■入場時間:10時30分~19時 ※最終日は18時閉場。
https://www.takashimaya.co.jp/tokyo/special_event/okinoshima.html

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