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「そこの障子を開けてみよ、外は広いぞ」(豊田佐吉)【漱石と明治人のことば198】

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今年2017年は明治の文豪・夏目漱石の生誕150 年。漱石やその周辺、近代日本の出発点となる明治という時代を呼吸した人びとのことばを、一日一語、紹介していきます。

【今日のことば】
「そこの障子を開けてみよ、外は広いぞ」
--豊田佐吉

「世界のトヨタ」の源流を逆上ると、この人、豊田佐吉に至り着く。豊田佐吉は、慶応3年(1867)静岡県の生まれ。「何か世のために」という志を早くから抱いていた。明治23年(1890)に東京・上野で開催された内国勧業博覧会は、そんな佐吉に衝撃を与えた。機械館に足を踏み入れると、えりすぐりの最新式の機械がずらりと並んでいて度肝を抜かれたのである。

佐吉は2週間余り毎日会場に通いつめて細かく機械を観察し、科学と発明に目を開かれた。従来の手織機(てばたき)に比べて質も能率も格段に向上させた「豊田式木製人力織機」を開発して特許を得るのは、その翌年のことだ。

以降、佐吉は紡織機の改良に取り組みながら、さまざまな発明を重ねていった。欧米視察を経て、豊田紡織(のちの豊田自動織機製作所)を設立、社長にも就任した。

掲出のことばは、豊田佐吉が第一次世界大戦後、中国への事業進出を図ろうとした際、周囲の者がこぞって反対するのを説得した台詞。これは、発明家・事業家としての佐吉の信念でもあったろうし、その精神はその後のトヨタにも受け継がれてきたのではないだろうか。

佐吉はまた、「完全なる営業的試験を行わざれば真価を世に問うべからず」ということをモットーとしていた。折角の発明も、実用化まできちんと発明者が責任をもって面倒を見ないと、思わぬつまずきやトラブルが起こりかねないことを体験的に学んでいたのである。

豊田佐吉は広く外に目を向けるだけでなく、時代の先をも見据えていた。関東大震災後、急速に普及しはじめた外国製自動車に将来性を見いだし、その国産化を決意。G型自動織機の欧州特許権を売り渡して資金を捻出して、長男の豊田喜一郎に国産自動車の研究・開発の夢を託したという。

昭和5年(1930)、佐吉は63歳で逝去した。喜一郎は父の意志を継いで、その5年後にA1型乗用車の試作に成功した。豊田自動織機内に設置されていた自動車部を独立させ、トヨタ自動車工業が設立されるのは昭和12年(1937)であった。

文/矢島裕紀彦
1957年東京生まれ。ノンフィクション作家。文学、スポーツなど様々のジャンルで人間の足跡を追う。著書に『心を癒す漱石の手紙』(小学館文庫)『漱石「こころ」の言葉』(文春新書)『文士の逸品』(文藝春秋)『ウイスキー粋人列伝』(文春新書)『夏目漱石 100の言葉』(監修/宝島社)などがある。2016年には、『サライ.jp』で夏目漱石の日々の事跡を描く「日めくり漱石」を年間連載した。

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