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写真・文/山内貴範

黒っぽい“鳥”が描かれた100円の普通切手。オフィスや家庭に届く郵便物で、誰もが一度は見たことがあるのではないでしょうか。

現在、郵便局では2015年にデザインが“さくらそう”に変更された100円切手が発売されていますが、写真の“鳥”デザインの普通切手は、1981年に発行されてから、途中に一部のデザイン変更を挟みつつ、約34年にもわたって発売されていました。まさに、100円切手の顔だったのです。

銀鶴が描かれた100円切手。左が1981年発行のもので、右は額面の書体などが一部変更された2010年発行のもの。

銀鶴が描かれた100円切手。左が1981年発行のもので、右は額面の書体などが一部変更された2010年発行のもの。

この鳥の正体は、春日大社の宝物である「若宮御料古神宝類」の一つ“銀鶴”です。平安時代(12世紀)に制作されたもので、国宝に指定されています。

そんな銀鶴が、東京国立博物館で1月17日から開催されている特別展「春日大社 千年の至宝」に出展されていると聞いて、『サライ』本誌2月号の切手特集にもご登場いただいた、日本郵趣協会会員の田辺龍太さんとともにでかけてきました。

もともと美術展巡りが趣味という田辺さん。とくに切手の題材になった美術品が出展される展示会に足を運ぶのが楽しみなのだそうで、今回も出かける前から興奮の様子です。

展示室を探し回っていると……ありました! あの銀鶴です! 田辺さん、まるで少年のように目を輝かせてこう話します。

「切手と同じアングルで見ると感無量ですね。切手だとどうしても、細かな文様や装飾がわかりにくいのです。実物を間近で見ることができて本当に嬉しいなあ」

銀鶴の実物を前に、興奮気味の田辺さん。思わず、ピンセットを手に、切手と比較しながら見入ってしまいました。※撮影には許可をいただいています。

銀鶴の実物を前に、興奮気味の田辺さん。思わず、ピンセットを手に、切手と比較しながら見入ってしまいました。※撮影には許可をいただいています。

さて、切手の図案に仏像が選ばれることはたくさんありますが、意外にも神社の宝物が採用されることは珍しいといえます。なぜ、銀鶴が切手になったのでしょうか。

「選ばれた理由は公表されていません。ただ、銀鶴は滅多に美術展などで展示されることがありませんし、たくさんある古神宝類の一つです。発行に関わった関係者が美術に造詣が深かったことは間違いありませんね」

田辺さんによると、普通切手は消印が見えにくかったり、デザインが著しく不評だったなどの理由で、図案が変更されることも少なくないそうです。その点、銀鶴は約34年という長きにわたって愛された存在。美術的価値もさることながら、切手の題材としても秀逸だったと言っていいでしょう。

なんと、会場では美術史家で切手蒐集家としても名高い山下裕二さんと偶然に出会ってしまいました。切手の話題に大盛り上がりの2人でした。

なんと、会場では美術史家で切手蒐集家としても名高い山下裕二さんと偶然に出会ってしまいました。切手の話題に大盛り上がりの2人でした。

さあ、あなたも100円切手の“銀鶴”に出会いに、上野まで出かけてみませんか?(ただし銀鶴の展示は2月12日までです)

◎特別展「春日大社 千年の至宝」
【会期】2017年1月17日~3月12日まで
 ※ただし銀鶴の展示は2月12日まで
【会場】東京国立博物館平成館 特別展示室にて
【住所】東京都台東区上野公園13-9 東京国立博物館
【電話】03-5777-8600(ハローダイヤル)
【開館時間】9時30分~17時(入館は閉館の30分前まで)
【休館日】月曜
【料金】1600円
【交通】JR上野駅公園口、もしくはJR鶯谷駅南口より徒歩約10分
※展覧会公式サイト/http://kasuga2017.jp/

写真・文/山内貴範
昭和60年(1985)、秋田県羽後町出身のライター。「サライ」では旅行、建築、鉄道、仏像などの取材を担当。切手、古銭、機械式腕時計などの収集家でもある。

※ 発売中の『サライ』2月号では、「切手」を特集しています。

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