取材・文/山内貴範
切手の再使用を防ぐため、郵便局で押される消印。ひと口に消印といっても様々なバリエーションがある。
珍しい消印が押されているだけで、未使用切手の数倍の値段で取引される例も珍しくないが、希少品を集めるのは上級者向けだ。初心者でも手軽に消印の楽しさを味わう方法はないだろうか。日本屈指の切手蒐集家である手嶋康さん(79歳)は、こうアドバイスする。
「たとえば近年、ご当地ブームですよね。旅行の記念に、各地の郵便局が独自に作っている“風景印”を集めてみるのはどうでしょうか。その土地の名所が描かれているので、旅行ついでに集める楽しさがありますよ」(手嶋さん)
風景印は通常の消印よりも一回り大きく、赤茶色のインクで捺印される。集める方法はとても簡単。郵便局の窓口で郵便を差し出すときに「風景印を押してください」とお願いするだけだ。地域の代表的な郵便局であればたいてい準備されているので、はがき代52円を用意するだけで簡単に集められる。
「私も切手展に参加したときは、記念に現地の郵便局の風景印を押して、自分宛に郵便を出すことがあります」と、手嶋さん。旅の思い出になるし、切手蒐集家にとってはそのままコレクションにもなるわけだから、一石二鳥というわけだ。
筆者はライターという仕事柄、日本各地を取材で回る機会が多い。新年早々、岩手県盛岡市に出張したので、盛岡城近くの盛岡内丸郵便局に立ち寄って風景印を入手した。全国の風景印を集めたら壮観だろうし、旅行する楽しみが増えそうだ。
近年、社寺仏閣の御朱印集めがブームになっているが、次は“風景印ブーム”が来るかもしれない!
取材・文/山内貴範
昭和60年(1985)、秋田県羽後町出身のライター。「サライ」では旅行、建築、鉄道、仏像などの取材を担当。切手、古銭、機械式腕時計などの収集家でもある。