日本語の会話の中には、カタカナで表される言葉がたくさんあります。
私たちはそれを外来語として当たり前に使っていますが、実際に英語圏の人にもそのまま通じるのでしょうか?
最近、よく耳にする「コスパがいい」「コスパ最強」という日本語。買い物やレストランの感想、サービスの評価など、さまざまなシーンで使われています。
今回は、「コスパ」というカタカナ語を手がかりに、英語ではどんな言い方をするのかご紹介しましょう。

コスパは英語で通じるの?
日本語で「コストパフォーマンス(コスパ)」というと、「払ったお金に対して、どれだけ満足できる価値があるか」を表す言葉です。
安いのにとてもおいしいレストランや、手頃な価格で長く使えるもの、料金のわりにサービスが充実しているホテルなど。私たちは日常のさまざまな場面で、「コスパがいい(悪い)」といいますね。
けれど、この「コスパ」は和製英語で、英語圏ではほとんど通じません。英語ではこのような感覚を一語でまとめることはあまりなく、状況に応じて表現を選びます。
たとえば、
“This is a good deal.”(コスパいい買い物。)
や
“That’s good value.”(いい価値があるね。/コスパがいいね。)
などということができます。

コスパを英語でいうと?
それでは、英語の「コスパがいい」の表現をもう少しくわしくみていきましょう。
今回は、特に “worth”と “value” という二つの言葉に焦点をあててみます。
‟worth”
「価値」「値打ち」また、「〜するだけの価値がある」という意味があります。
お金や時間をかける価値があったかどうか。また、その結果としての満足感や納得をあらわします。“worth” は、自分がどう感じたかという視点の言葉です。
たとえば、
“It was totally worth it.”
(本当にやってよかった。)
“The ticket was expensive, but it was worth it.”
(チケットは高かったけれど、その価値はあった。)
このように、“worth”は「自分にとってどうだったか」という意味で使われます。
“value”
“value”は、対象そのものを見て評価する言葉です。その値段に対して、内容や質がどれくらい見合っているか。つまり、価格と中身のバランスを客観的に測ります。
ファーストフードの「バリューセット」という表現でも、なじみがありますね。
たとえば、
“You get a lot of value for the price.”
(この値段でこの内容はかなりお得だね。)
“Honestly, it’s really good value.”
(正直、かなりコスパがいいと思う。)

最近では、「タイパ(タイムパフォーマンス)」という言葉もよく耳にします。
時間に対してどれだけの満足や成果が得られるか、というニュアンスです。
“This app is really efficient.”
(このアプリはとても効率がいい。)
“It really saves time.”
(とても時間の節約になる。)
などのように、英語ではこの感覚も一語で表しにくく、やはり状況に応じて言い換えます。
日本語ではひと言で自然に伝わる感覚も、英語では少し具体的に言葉にして表す必要があるように感じます。
最後に
セルビア出身の現代アーティスト、マリーナ・アブラモヴィッチ(Marina Abramović)の代表作のひとつに、2010年、ニューヨーク近代美術館で発表された《The Artist Is Present》があります。
会場に置かれたテーブルを挟み、向かい合う二脚の椅子。その片方に1日およそ7時間、合計700時間以上にわたって、アブラモヴィッチは座り続けました。来場者はもう一方の椅子に座り、言葉は交わされず、ただ互いに見つめ合います。“A minute of silence” by Artist Marina Abramovic
それでも、多くの人がその場に長く留まり、なかには何時間も座り続ける人や、涙を流す人もいました。かたちある作品を残すのではなく、「いる」と「見る」そのものを作品とするこの試みは、現代的な「コスパ」という視点から見れば、価値が測りにくいものかもしれません。
だからこそ、この作品に、多くの人が心を動かされたのだと思います。
ただ「いる」と「見る」ことの尊さに、日々気づき続けるのはむずかしいですが、ふとした瞬間に、そのような感覚に触れられたらと思います。
次回もお楽しみに!
●執筆/池上カノ

日々の暮らしやアートなどをトピックとして取り上げ、 対話やコンテンツに重点をおく英語学習を提案。『英語教室』主宰。 その他、他言語を通して、それぞれが自分と出会っていく楽しさや喜びを体感できるワークショップやイベントを多数企画。
→The English Schoolホームページ
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com











