2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』で主人公秀長役を演じることになった仲野太賀さん(左)と脚本家の八津弘幸さん。(C)NHK

ライターI(以下I): 3月12日15時に、2026年の大河ドラマが『豊臣兄弟!』であることが発表されました。Aさんの事前予想だと、待望する古代史大河はまだかもしれないが、戦国もないと予想していましたから見事に外しましたね。

編集者A(以下A):『豊臣兄弟!』とアナウンスされた瞬間、「え? また戦国?」と思ってしまいました。「足利義満とかやらないかな」と淡い希望を抱いていたのですが、見事に打ち砕かれました(笑)。

I:でも、会見の途中で考え直したのですよね?  

A:考え直したというと大げさですが、脚本が『半沢直樹』『陸王』『下町ロケット』や『家康、江戸を建てる』で知られる八津弘幸さんということで、期待していいのではないかと強く感じています。さらに主人公が豊臣秀長で、演じるのが仲野太賀さん。硬軟、シリアス、チャラい男までなんでもこなせるユーティリティープレーヤー。個人的にはドラマや映画になった『今日から俺は!!』で演じた不良高校生役が大好きな役者さん。どんな脚本になろうと魅せてくれるはずです。

I:それでも、会見では、1981年の『おんな太閤記』(秀吉が西田敏行さん、秀長が中村雅俊さん)、1996年の『秀吉』(秀吉が竹中直人さん、秀長が高嶋政伸さん)のような「型破りな秀吉に従順な弟」だと二番煎じ、三番煎じになるのではみたいな質問していましたね。

A:はい。毎年のように当欄でも繰り返しますが、大河ドラマファンにとって、大河ドラマの出来不出来は1年間の生活スタイルにかかわる重要問題ですから。

I:でも、会見でのやりとりの中で『豊臣兄弟!』の制作統括を務める松川博敬氏は、「歴史好きで推しは秀吉」ということが判明しましたね。

A:最初に携わった大河ドラマは『風林火山』(2007年)といっていましたね。最近では昨年前期の朝ドラ『らんまん』を手掛けたそうです。その松川さんは次のように語ってくれました。

私は今47歳ですが、私自身が幼少の頃、ちゃんと見るようになった大河ドラマが『独眼竜政宗』『武田信玄』のあたりでした。それが歴史に興味を持つようになったきっかけになったという原体験がありました。自分が大河ドラマに関わるようになって、その頃の自分を思い出したというか。日本史の中でも最も有名な『太閤記』を題材に、小さなお子様や、歴史のことをあまり知らないんだよなと思っていらっしゃるような視聴者の皆さんも含め、皆さんに楽しんでもらえる企画をやりたいということで、八津さんにお声がけしたというのが出発点です。

I:主人公が秀長ですが、そうすると、秀吉の最期までは描かずに終わる感じなんですかね。

秀長が亡くなるところがドラマのゴールかなと思っています。その後の秀吉ひとりになって、孤独な暴君になっていくかもしれないですけど、ゴールとしては秀長が秀吉の天下統一を見届けて亡くなっていく、というところかなと思っています。

僕自身が豊臣秀吉のファンというのもありますが、大河ドラマでは竹中直人さんの秀吉以降、脇に回ることになり、そうなるとおのずと悪役になることが多くて、今の若い人たちというのはそういう秀吉しか知らなくて、原型の秀吉を知らないんじゃないかと思ったりしています。本当は史上稀にみる、痛快なサクセスストーリーというのが『太閤記』だと思うので、そこをもう一度やったらおもしろいんじゃないかと思いました。そこに兄弟の絆という新しい視点を加えてやると、より一層、少年漫画みたいにおもしろくなるんじゃないかと思っています。

A:確かに豊臣秀吉という人間は、日本の歴史上稀にみる成功者です。例えば、今年の大河ドラマ『光る君へ』ですが、官職のうち、関白は藤原基経以来藤原一族が、道長以降は道長の子孫である五摂家(近衛、九条、一条、二条、鷹司)が独占していました。

I:そうした歴史の中で、藤原氏以外で初めて関白に就任したのが秀吉なんですよね。

A:近衛前久の猶子になったとはいえ、当時の人々にとって、驚天動地の出来事だったと思います。さらに幕末まで数えても藤原氏以外で関白になったのは、秀吉の後継の秀次だけということになります。確かに日本の歴史上で最上級のサクセスストーリーの体現者です。秀長を主人公にして、その死まで描くということになると、秀吉が闇落ちした晩年を描く必要がなくなるわけです。

I:ということで、さらに、制作統括の松川氏のお話をどうぞ。

秀吉と秀長は実際に仲の良い兄弟で、最後は手を携えて天下を統一しました。秀吉は天下が近づいてきた時、ダークサイドに落ちていき、弟とも対立するということも描くことができるし、でも最後はやはり腹心ということでも描けます。歴史的に言うと朝鮮出兵という愚策に対して、「兄者それだけはやめてくれ」と言ったりして、でも、最後まで見捨てなかったんですよね。

今まで描かれてきた秀長は従順で、基本的には兄の指示に従う弟だったと思いますが、今回、まだ決まった訳ではないですが、豊臣秀吉ってやっぱりすごい人物で、奇跡の人物だと思うんですが、ひとりでやる仕事量じゃない仕事をやった人で、きっとその裏側で弟秀長がものすごく努力したんだろうという想像をしています。ひょっとしたら豊臣秀吉という人物の手柄ってふたりでやって得たものじゃないかって想像するんです。本当に、兄弟が舞台裏でどんな会話をしたかなどは歴史上には残っていないから、表で秀吉が殿様として振る舞っていたけど、舞台裏に行ったらめちゃめちゃ怒られていたり、殴り合いの喧嘩をしていたかもしれないとか、本当に弟に頭が上がらないとか……そこをなんとか、宜しく頼むよと秀吉に言われて、しょうがねえな、と言いながら秀長がいろいろと努力するみたいな想像をしていきたいなと思っています。ちなみに、2026年って、1996年の『秀吉』からもう30年なんですよね。30年ぶりというところもあります。

30年ぶりの「主人公秀吉」に立ちはだかる難題。次ページに続きます

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