元NHKアナウンサーであり、2000人以上の方に教えてきた墨屋那津子さんが上梓した『あなたの話が「伝わらない」のは声のせい』(飛鳥新社)では、「自分本来の声」を活かして話すことで、内容は変えずに「伝わる」話し方になるメソッドを公開。これまで、ありそうでなかった“読むボイトレ本”として注目を集めています。

墨屋さんのボイトレは、声の出し方を少し変えるだけで、見違えるようにビジネスもプライベートもうまくいくと評判です。従来の声本・話し方本に多かった「抑揚をつける」「くっきりはっきり」「声を作る」といった「偽の自分」を演じる必要は一切なし! 本書から、声の使い方や話し方のコツなど、トレーニングをする前に知っておきたい「声」や「話し方」についてご紹介します。今回のテーマは、説得力がある「伝わる話し型」です。

※本書には各所にQRコードが掲載されています。スマートフォンでコードを読み取ると、筆者による1分程度のレッスン音声を聞けます。

文/墨屋那津子、イラスト/みわまさよ

「くっきり・はっきり」話すと、かえって相手のストレスに?

突然ですが、あなたがお店でカレーライスを注文したとします。そのとき、もしご飯、野菜、お肉、ルーがそれぞれ別々に出てきたらどう感じるでしょうか?
「ご飯が出てきた」「次は野菜か」「今度はお肉。これで終わりかな」
「あっ、最後にカレーのルーが出てきた!」……
ここまで来てようやく、「これはカレーライスだったんだ!」と気づく。そんな状況、少し困ってしまいますよね。

実は、人前で話すときに「くっきり・はっきり」を意識しすぎると、これと似た状況が起こりえます。「くっきり・はっきり」言葉を細かく区切ってしまうと、抑揚が多すぎて不自然。相手が情報を1つずつバラバラに受け取ってしまい、結果、全体の意味がつかみにくくなる可能性があります。これが複雑な話が伝わらない理由です。そうならないよう、相手にストレスを与えない、クセのない「伝わる話し型」をぜひ覚えておいてほしいのです。「伝わる話し型」のポイントは、「意味のまとまりをひと息で話しきること」です。この、スミヤメソッドの「伝わる話し型」は、日本語がもっとも相手に伝わる方法であり、ほとんどの人が知らない秘技とも言えます。話し方がうまい人は、この型で話しています。私もNHKでは「クセのある話し方をせず、まっすぐに話しなさい」「意味のまとまりはひと息で読みなさい」と教えられました。

そして、さらに大事なポイントを2つ付け加えて、「伝わる話し型」は、次の3つのポイントからできています。

【話し型の3つのポイント】
(1)なるべく言葉をつなげて、意味のまとまりをひと息で
(2)抑揚をつけず、まっすぐに話す
(3)話す前に息を吸って、1音目にアクセントをつける

こうすると、どんな内容も相手にスッと伝わるのです。できたら、3つのポイントはすべて実践していただき(意外とかんたんです!)。もし難しかったら、まずは(3)だけでもやってみてください。

図でわかる「くっきり・はっきり」

ブツ切りで話をするのは、言ってみればかたまりのお肉を「ミンチ状態」にして相手に出すようなもの。それに対して、意味のまとまりをひと息で話しきるのは、お肉をかたまりのまま「ステーキ」で出すのと同じです。下記の図でもわかるように、ミンチ肉の状態だと同じ話なのに聞く側は長く感じますね。でもステーキ状態だと、話がスッキリし、話す人に品格も感じられるのです。

文章をミンチ状(ブツ切り)にせず、下記の図の下のように「意味のまとまりをひと息でまっすぐ話す」のが、最も伝わる「話し型」です。話す前に息を吸うと、自然と1音目にアクセントがつき、エネルギッシュになります(調子が上がります)。そして、残りの息が減るにつれて、自然と音の調子は下がっていきます。結果として、話の内容がおのずと説得力のある形で、相手の頭の中にスッと入っていくのです。

話が上のように間や抑揚が多いミンチ状態(バラバラ)
だと相手は話が長く感じられたり、わかりにくく感じます。
下のようなステーキ状態でまとまっていれば、話がスッキリ感じられ、話す人に品格が漂います。1音目にアクセントをつけて、後は自然に下がっていく様子をすべり台のような三角形で示しました。

自己紹介するときは、下記の図のような感じになります。多くの人は好感度アップをねらって、語尾が上がるように、中途半端に区切って話してしまいます。しかし、公の場ではそれは不自然で逆効果。意味のまとまりまでひと息で話したほうが、相手にとって自然でわかりやすく、心地よく聞こえるのです。

多くの人は印象をよくしようと語尾を上げるように話しますが、それは逆効果。
1音目にアクセントをつけて、自然にエネルギーが下がるように話すほうが、相手にとってわかりやすく、心地よく聞こえます。

*  *  *

あなたの話が「伝わらない」のは声のせい
墨屋那津子
飛鳥新社 1,650円(税込)

墨屋那津子(すみや・なつこ)
アナウンサー(元NHK)/キャリアカウンセラー
石川県生まれ。NHK『おはよう日本』『ニュースウオッチ9』ニュースリーダー、NHK E テレ『100 分de 名著』語り手などで活躍。30年以上にわたる幅広い経験を通じて培った「声のキャリア」と「声の原則」を基盤に、声の出し方を変えることで誰でも瞬時に「伝わる話し方」を実現する「スミヤメソッド」を確立。「自分本来の声」を最大限に引き出し、声の力で多くの人の課題解決に貢献。人生を好転させるサポートをしている。即効性が特徴で、「同じ話をしても印象が変わる」「滑舌が劇的に改善」「話し方に説得力がついた」と評判を呼び、口コミだけで2,000人以上が受講。また、カナダ・トロント大学と専修大学で実践的講義を行う。企業のコミュニケーション顧問やセミナー講師も務める。国内外のCEO、要人、アナウンサー、ナレーター、会社員、学生など幅広い受講者の声を変えてきた実績がある。

 

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