木村達成さんというはまり役

I:さて、三条天皇役の木村達成さんですが、舞台経験豊富な俳優さんです。台詞回しがどっしりと重厚で聞きやすく、前帝の一条天皇(演・塩野瑛久)より年上だったということをしっかり強調してくれました。

A:その木村さんのお話が届いています。『光る君へ』公式ホームページ掲載の「君かたり」からです。

亡くなる直前に「闇だ」と言って、「闇でなかったときはあったかのう」っていうセリフがあったんですけど、なんだかんだ、置かれている立場も苦しかったと思いますけど、一生懸命楽しんでいるわけではないと思いますけど、それこそ謳歌したような感じはあったかなと。それこそ、道長との駆け引きのシーンもわりと楽しんでいるように僕は受け取ってはいたので。やっと長い東宮時代から晴れて帝になれたっていうのもあったぶん、そこらへんの政治、政を動かすのも心は踊っていたような気持ちはしますけどね。

I:道長たちから譲位を迫られ、幾度も攻防戦を繰り広げていましたが、結局は譲位せざるを得なくなったことについても、こう語ってくれています。

全部出し尽くしちゃったんで、しゃあないなとは思っていますよ。しょうがないな、って。もう正直そこで「ずっと(帝で)いたい」と言っても、道長も自分の右腕という風にはなかなかもうなってくれそうもなかったので。「目と耳になれ」っていうセリフは僕は好きでしたけど、あんまり動いてくれなかったので、それ以降は「しょうがないな」っていう、本当に敦明に託したという感じですかね。自分が退位した後でも、譲位した後でも、家族は幸せでいて欲しいっていう気持ちは絶対どこかにあると思うので。

A:『光る君へ』では幾度となく天皇の退位、即位、崩御などが描かれてきましたが、切ない最期が多い印象ですね。木村さんは三条天皇の最期をどのように受け止めていたのか、そこもお話してくれています。

何かとやっぱり、最期の思いには託していたと思います。それこそ娍子は泣いているけど、最後、見えない月を見て、もう一回、闘志に火をつけているような、そのような感じはありましたね。だからたぶん、亡くなった後、敦明が東宮から降りていることにブチキレていると思いますよ。「なにやってんねん!」っていう。敦明らしいけどね。

I:確かに、ブチキレていそうですね、三条天皇(笑)。木村達成さんにはまたの大河ドラマへの登場を期待したいですね。

●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。「藤原一族の陰謀史」などが収録された『ビジュアル版 逆説の日本史2 古代編 下』などを編集。古代史大河ドラマを渇望する立場から『光る君へ』に伴走する。

●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2024年2月号の紫式部特集の取材・執筆も担当。お菓子の歴史にも詳しい。『光る君へ』の題字を手掛けている根本知さんの仮名文字教室に通っている。猫が好き。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

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