古くから、人々は幸せな生活を願ってきました。誕生、婚礼、子宝、富や繁栄、長寿など日常の暮らしを豊かにしてくれる事象に心を注ぎました。不安定な世界情勢が続き、予測不能な天災が懸念される昨今、山種美術館で開催の「【特別展】HAPPYな日本美術 ―伊藤若冲から横山大観、川端龍子へ―」は新しい年を迎えるにふさわしい幸せを呼ぶ展覧会です。(12月14日~2025年2月24日)
本展の見どころを、山種美術館の学芸員、竹林佐恵さんにうかがいました。
「吉祥のモティーフには、長寿や子孫繁栄、豊かな生活など、幸せを願う人々の思いが込められ、おめでたい意匠として、古来、絵画や工芸に表されてきました。本展では、縁起物の代表といえる松竹梅、古くから信仰を集めた富士山、幸運をもたらす七福神など、現代の私たちにもなじみ深い吉祥モティーフを主題とした作品をご紹介します。
鶴は、「鶴は千年、亀は万年」といわれるように、亀とともに長寿を象徴する動物です。伊藤若冲《鶴図》(個人蔵)は、つがいの鶴が、同じく長寿を象徴する松とともに描かれています。のびやかな筆致の若冲の水墨表現が魅力的な作品です。
また、展覧会では、ユーモラスな表現や幸福感のある情景を描いた作品など、見ているだけでHAPPYな気持ちになれる作品も展示します。《埴輪 猪を抱える猟師》(個人蔵)は、猪を脇に抱えて、にやっと嬉しそうな表情を浮かべています。作品を前に、こちらまで自然と笑みがこぼれそうです。
川端龍子《百子図》(大田区立龍子記念館)は、子どもたちが象と楽しそうに戯れる様子を描いています。1949(昭和24)年、子どもたちの願いが届き、象のいない上野動物園に、インドから「インディラ」と名付けられた象が贈られました。「百子図」は子孫繁栄を象徴する伝統的な画題ですが、龍子は子どもたちと象の平和な光景として描き、龍子の温かなまなざしが感じられる作品です。
会期中、1月19日(日)には、安村敏信氏による講演会「HAPPY三題噺~白蛇・七福神・百~」を開催します!
イベント詳細・申込み:https://w.pia.jp/t/happy-lecture/
年末年始にHAPPY感満載の展覧会で、心温まるひとときをお過ごしください!」
古墳時代から近代・現代まで、仏様から富士山まで、幅広いジャンルの名品がお待ちしています。ぜひ会場にお運びください。
【開催要項】
特別展「HAPPYな日本美術 ―伊藤若冲から横山大観、川端龍子へ―」
会期:2024年12月14日(土)~2025年2月24日(月・振休)
会場:山種美術館
住所:東京都渋谷区広尾3-12-36
電話:050・5541・8600(ハローダイヤル)
公式サイト:https://www.yamatane-museum.jp/
開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
休館日:月曜日(ただし1月13日、2月24日は開館)、年末年始(12月29日~1月2日)、1月14日(火)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照
※今後の状況により会期・開館時間等は変更する場合があります。
取材・文/池田充枝