正しい意味を理解し、適切に漢字が使えているのか、疑問を感じることが増えていませんか? 適当に漢字を使ってしまい、気付かないところで「恥をかいている」ということがあるかもしれません。
Google 先⽣やデジタルデバイスの出現により、便利になった反面、情報の中⾝については⼗分な吟味が必要な時代になっております。あなたの“漢字の知識”は確かでしょうか? もう⼀度、確認しておいても良いかもしれません。
「脳トレ漢字」第210回は、「寛ぐ」をご紹介します。ゆったりすることを意味する言葉ですが、使われている漢字を見ると、何となく読みが分かるかもしれません。実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。
「寛ぐ」とは何とよむ?
「寛ぐ」の読み方をご存知でしょうか? 「やすらぐ」ではなく……
正解は……
「くつろぐ」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「仕事や心配ごとなどを忘れて、伸び伸びとする。」「窮屈な服装・姿勢などをやめて、楽なかっこうになる。」と説明されています。心身を休め、ゆったりすることを意味する「寛ぐ」。
「仕事を終えて、ビールを飲みながら寛いだ。」「部屋着に着替えて寛ぐ。」などのように使われます。「寛ぐ」という言葉は、平安時代にはすでに使われていたとされます。当時は、冠がゆるむ・着物がゆるむなど、物理的にものが密着せず、隙間があいている状態を指していたそうです。
ものがゆるんだ状態を、心理的な余裕に見立て、心が安らぐ・安心するなどの用法で使われるようになったと考えられています。また、「寛(かん)」と読んで、態度がゆるやかなこと・厳しくないことを意味し、「寛に過ぎる処置」などのように使うことができます。
ほかにも、「寛」だけで「くつろぎ」「ゆた」と読むこともあるそうです。
「寛ぐ」の漢字の由来は?
「寛容」「寛大」などの言葉にも使われている、「寛」。この漢字は、家がゆったりとしていて大きいことを表しているとされ、「広い」「豊か」という意味が含まれるようになったそうです。そのため、「寛」が使われる言葉は、「心が広い」「ゆったりしている」という意味を持つようになったと考えられます。
能楽に由来する言葉
リラックスするという意味で使われる、「寛ぐ」。能楽の世界では、演者が演能の途中で観客に背を向けることを「寛ぐ」と言います。背を向けることで、その登場人物が場面から身を隠しているということになるそうです。
能楽は、室町時代から続く日本の伝統芸能の一つ。長い歴史の中で、人々から愛されてきたため、私たちが普段よく使う表現の中には、能楽の世界でも使われているもの・関係するものが複数あります。代表的なもので言えば、「ノリがいい」が挙げられます。
社交的な人を指して使われる表現ですが、能楽では謡(うたい)や囃子(はやし)のリズムのことを「乗(のり)」というそうです。はじめは、演能に対して使われていた表現が、いつしか人の性格に対しても使われるようになっていきました。
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いかがでしたか? 今回の「寛ぐ」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 普段使っている言葉の中には、意外な由来があったりして面白いですね。能楽や歌舞伎、落語など、伝統芸能に関係する表現はたくさんあるので、ぜひ調べてみてください。
文/とよだまほ(京都メディアライン)
HP:https://kyotomedialine.com FB
参考資料/『デジタル大辞泉』(小学館)
『日本国語大辞典』(小学館)
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