大河ドラマ「どうする家康」が佳境をむかえた今、江戸時代の260年間、日本に平和な世をもたらした徳川家に関心がもたれています。

尾張徳川家は、家康の九男、徳川義直を家祖とし、徳川将軍家の分家御三家(紀州、尾張、水戸)の筆頭として諸大名のなかで最高の格式を誇っていました。

徳川美術館は、家康の遺品や尾張徳川家に伝えられた重宝、いわゆる「大名道具」ほか歴代当主やその家族の遺愛品を中心におよそ1万点余を収蔵しています。

徳川美術館の「将軍と尾張徳川家-政と儀礼-」展は、将軍と尾張徳川家の関係性から政(まつりごと)や儀礼を紹介する展覧会です。(11月11日~12月15日)

本展の見どころを、徳川美術館の学芸員、板谷寿美さんにうかがいました。

「本展は将軍家と尾張徳川家の関係性に着目しながら、絵図や文書などの歴史史料に基づいて、江戸城や名古屋城での将軍・当主の政務や儀礼に迫る展覧会です。

将軍が政務や儀礼を行う場は、江戸城本丸御殿の「表(おもて)」とよばれる場所でした。

東武御本丸絵図 江戸時代・18世紀 徳川林政史研究所蔵

将軍の代表的な政務の一つに大名家の当主の御目見(おめみ)えに応じることが挙げられます。御目見えには将軍の権威を高める効果があり、将軍と当主との距離や人・物の配置が非常に重要でした。それらは大名家の格式ごとに細かく決められていました。史料では簡潔な記載のため想像しにくいですが、本展では将軍や当主の位置をイラストで示し、御目見えの様子をイメージできるようにしました。

年中御登城之節御式御席図(部分) 江戸時代・寛政7年(1795) 名古屋市蓬左文庫蔵
「江戸城白書院における尾張家当主の年頭御礼」 板垣真誠制作

将軍と当主の間では贈答品のやり取りも行われ、その中でも刀剣は最も格の高い贈答品で、将軍から刀剣を下賜されることは稀有で名誉なことでした。

重要文化財 刀 無銘 正宗
鎌倉時代・14世紀 徳川家継(7代将軍)下賜・徳川継友(尾張家6代)拝領
徳川美術館蔵

将軍や当主の政務や儀礼の様子は時代劇では見るものの、実際には意外と知られていない世界であり、この機会にご覧いただければ幸いです」

ドラマのもとになっているような史料に遡って江戸時代の歴史を目の当たりにできる展覧会です。ぜひ会場に足をお運びください。

【開催要項】
特別展 徳川林政史研究所 開設100周年記念 将軍と尾張徳川家-政と儀礼-
会期:2023年11月11日(土)~12月15日(金)
会場:徳川美術館
住所:愛知県名古屋市東区徳川町1017
電話:052・935・6262
公式サイト:https://www.tokugawa-art-museum.jp
開館時間:9時~17時(入館は16時30分まで)
休館日:月曜日
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照

取材・文/池田充枝

 

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