天長元年(824)、京都市の北西部、高雄に所在する高雄山寺と神願寺の二つの寺院がひとつになって神護国祚真言寺(神護寺)が誕生しました。高雄山寺は平安遷都を提案した和気清麻呂の氏寺で、唐で密教を学んだ空海が帰国後、活動の拠点とした寺院です。
東京国立博物館で開催の創建1200年記念 特別展「神護寺―空海と真言密教のはじまり」は神護寺に伝わる寺宝の数々を紹介する展覧会です。(7月17日~9月8日)
本展の見どころを、担当研究員の東京国立博物館・古川攝一さんにうかがいました。
「京都の西北、高雄に位置する神護寺は、紅葉の名所として古くから知られてきました。本展は神護寺の創建1200年を記念して行われます。見どころは、神護寺史上初めてとなる、本尊「薬師如来立像」の寺外での公開です。国家の安寧を願い造立され、観る者を圧倒する威厳と迫力、仏の聖性を感じさせる強いオーラは必見です。
現存最古の両界曼荼羅(密教の世界を図示したもの)である「高雄曼荼羅」は、弘法大師空海が制作に関わった貴重な作例です。「灌頂暦名」や「風信帖」(東寺蔵)など、空海の書の名品も展示されます。
このほか、繊細優雅な院政期仏画の傑作「釈迦如来像(赤釈迦)」、肖像画の最高峰「伝源頼朝像」、現存最古のやまと絵屛風「山水屛風」など、仏教美術のみならず、日本美術の至宝の数々が展示されます。
今年は空海の生誕1250年にもあたります。会場で空海の息吹が感じられる作品をご覧いただき、展覧会終了後にはぜひ神護寺を訪れてみてください。高雄を流れる清流、清滝川をわたり、石段を上ると楼門に至ります。門をくぐるとそこには、1200年変わらない清らかな空気が流れ、心が洗われる思いがします」
1200年の歴史の荒波を乗り越えて伝わった貴重な文化財を、会場でゆっくりとご鑑賞ください。
【開催要項】
創建1200年記念 特別展 「神護寺―空海と真言密教のはじまり」
会期:2024年7月17日(水)~9月8日(日)
前期7月17日(水)~8月12日(月・休)
後期8月14日(水)~9月8日(日)
会場:東京国立博物館 平成館
住所:東京都台東区上野公園13-9
電話:050・5541・8600(ハローダイヤル)
展覧会公式サイト:https://tsumugu.yomiuri.co.jp/jingoji/
開館時間:9時30分~17時、金・土曜日は~19時(ただし8月30日、31日は除く)(いずれも入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(ただし8月12日は開館)、8月13日(火)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照
取材・文/池田充枝