『枕草子』102段に書かれていた、ある秘事

A:そして、この『枕草子』102段にはある秘事が書かれているのです。「御前に御覧ぜざむとすれど、上のおはしまして、御とのごもりたり」の箇所です。「中宮様の御前にご覧に入れようとするけれども、主上がおいで遊ばしていらっしゃる」ということで、一条天皇と中宮定子が同衾していたことが記録されています。

I:二月のつごもり=二月の末の出来事です。この10か月後、中宮定子は「悲劇の皇子」を生むことになります。

I:そして、この脚本の凄いところは、こうした文化的なやり取りが行なわれた直後に「左大臣様がお越しだそうでございます」との言葉に、瞬時に場の空気が凍ったことです。

A:「ブラック道長」の登場か? と思ったのですが、そうとも言い切れない展開になりました。これはこれでとても面白い場面になりました。

I:私が興味深かったのは、道長が一条天皇の振る舞いに激怒しているけれど、それを知らないはずのまひろが、白居易の政治などを揶揄した『新楽府其五十 采詩官』を読んでいる場面です。まひろが読んでいたのは、「君耳唯聞堂上言 君眼不見門前琴」のあたり。天子(皇帝や天皇)よ、耳をふさがず人民の真意を聞いて欲しい、目をふさがず現実を見て欲しい、といったことを揶揄で詩にしています。離れていても、道長とまひろは同じ方向をいつも見ているということかと。

A:なんだかすごい展開になってきましたね。

※『枕草子』の引用は『新編日本古典文学全集』当該巻より。

●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。「藤原一族の陰謀史」などが収録された『ビジュアル版 逆説の日本史2 古代編 下』などを編集。古代史大河ドラマを渇望する立場から『光る君へ』に伴走する。

●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2024年2月号の紫式部特集の取材・執筆も担当。お菓子の歴史にも詳しい。『光る君へ』の題字を手掛けている根本知さんの仮名文字教室に通っている。猫が好き。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

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