ガラスを発明したと考えられるメソポタミアから東地中海沿岸では、3400年ほど昔に、石をくぼめた型に入れて焼き上げた青ビーズや、粘土のまわりにガラス紐を巻いて器にするカラフルなコアガラスが作られました。

植物文ペンダントとロゼット文ビーズ エーゲ海地域
前14-前12世紀

古代エジプトにガラスが伝わった新王朝時代、エジプト王家はガラスを独占。「ファラオ一族御用達」のガラス工房が宮殿内に存在し、王族しかガラスを手にできませんでした。

ファラオ頭部 エジプト 前14世紀前半

そして2400年ほど前、アケメネス朝ペルシア帝国の宮殿では、水晶のような透明なガラスを尊ぶようになりました。それらは金属同様に鋳造でした。そして古代ローマ時代直前に、今日に続く吹きガラス技法が発明されました。

獅子頭形杯 アケメネス朝ペルシア 前5-前4世紀

MIHO MUSEUMの「古代ガラス-輝く意匠と技法」展は、こうした古代ガラスの進化を所蔵品とともに紹介する展覧会です。(3月3日~6月9日)

本展の見どころを、MIHO MUSEUMの展覧会広報ご担当、東 容子学芸員にうかがいました。

「MIHO MUSEUMにはガラスが宝玉であった時代の美しい装身具や器が多数収蔵されています。本展では、ガラスと関連作品200点余を展示し、古代のガラス文化を文明ごとにお楽しみいただきたいと思います。

碗 東地中海地域 前2-前1世紀 H6.6cm×D10.4cm

この作品は、制作当初は薄茶色の碗でしたが、外側を覆うプラチナに輝く銀化と、それが取れた下地に現れる葡萄色とグリーンの組み合わせが出色です。

銀化とは、経年によりガラスの表面が層状となり、光を様々に屈折させる現象で、いわば時が与えた偶然の産物ですが、人間には思いも及ばない色彩を呈し、やはり自然にはかなわないとの思いを抱かせるほどの美しい輝きを見せます。

会場に並ぶガラスの輝きとともに、それらを生み出した職人たち、そして器を愛でた各文明の立役者たちに思いを馳せていただければ幸いです」

長頸壺 東地中海地域 前3-前1世紀

ビーズ、コアガラス、モザイクガラス……じっと目を凝らしたくなる会場です。ぜひ足をお運びください。

【開催要項】
2024年春季特別展 古代ガラス―輝く意匠と技法
会期:2024年3月3日(日)~6月9日(日)
会場:MIHO MUSEUM
住所:滋賀県甲賀市信楽町田代桃谷300
電話:0748・82・3411
公式サイト:https://www.miho.jp
開館時間:10時~17時(入館は16時まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は開館し、翌平日休館)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照

取材・文/池田充枝

 

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