秀頼と家康の二条城での対面

I:家康と秀頼の対面が二条城でなされました。この対面はその前段階で難しい段取りを積み上げて実現したといわれます。劇中でも〈この加藤清正、秀頼さまのお側を片時も離れず  命に代えてお守りいたします〉と加藤清正(演・淵上泰史)が発したように豊臣恩顧の大名が秀頼の立場を守るために奔走したといいます。

I:清正らからすれば、秀頼は大恩ある太閤秀吉の忘れ形見。それはもう「なんとかお守りしたい」という一心だったのでしょう。彼らの心情に思いを馳せると胸が締め付けられる思いがします。

A:一方で、加藤清正などは、この段階で徳川家とも縁戚関係にありました。

I:やはりある時点までは、徳川も豊臣恩顧の諸将もなんとか共存の道を模索していたような気がします。

A:どこでどうボタンのかけ違いが起きたのか――。やはり、冒頭でもお話ししたように、関ヶ原敗者たちの「乱世を踏み台に旧に復したい」というエネルギーでしょう。これもまた歴史のありのままの姿です。

I:なんともやりきれないですね。

A:そして、二条城での対面をやり終えた加藤清正ですが、所領の熊本への帰路に発病して、ほどなくして亡くなるということになります。

I:徳川による毒殺説も流れるほどの急な出来事だったようですね 。歴史には奇妙な死がつきものですが、加藤清正の死もまた、そのひとつに数えられますね。

長い長い時の流れを象徴する演出

I:今週のトピックスは、家康と今川氏真の昔語りの場面ではないでしょうか。

A:当欄では将軍になった家康と氏真に昔語りをさせてほしい旨、幾度か記事にしてきましたが(https://serai.jp/hobby/1120603)、制作陣と「同じ月を見ていた」ような気がして感慨深いですね。

I:氏真とのやり取りはなんだかしみじみするというか、自然に涙がこぼれてしまいました。ドラマは2023年1月から始まって今、11月になっているのですが、本編での時の流れは、西暦でいうと1556年から1612年。56年の歳月が経っているわけです。

A:56年前の家康は劇中では次郎三郎と呼ばれて駿府の今川館に人質となっていた時期です。そのころは氏真が主筋であったわけですが、時の流れを経て立場は逆転しました。見ている私たちもいろいろな思いがこみあげてくる名シーンになりました。

I:そのやり取りの中で、洋時計が組み入れられたのも、なんだか粋というか絶妙というか、家康と氏真の間に流れた56年という長い長い年月を象徴しているような気がして、なんと胸に染み入る演出かと思ってしまいました。少年時代から老年まで演じた松本潤さんの1年を振り返ると、ほんとうに感慨深いです。ファンの方にとっては、なおさらだと思います。

A:過去の記事でも触れていますが、家康は生涯氏真と対面する際は、旧来の如く礼節を以て接していたそうです。この時点で、初回に登場していた家康家臣団はほとんど鬼籍に入っていました。それだけに、昔のことを語り合える「友」の存在は家康にとっても心の支えになっていたのではないでしょうか。

I:こうして昔語りのできる「友」の存在はありがたいですよね。私もいつの日か、こうして友人と昔語りをして、人生の来し方を振り返る時がくるのでしょうか。

スペイン国王から贈られた洋時計。次ページに続きます

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