旭姫の死と側室阿茶の局が登場
I:秀吉の妹で家康に正室として嫁いだ旭姫(演・山田真歩)が風邪の症状で登場しました。直接の説明はありませんでしたが、旭姫は、この直後に亡くなっています。
A:旭姫のような家康と秀吉の間の架け橋となった存在があって、戦国争乱の日々が終焉したと考えると、私たちは旭姫に感謝の意を表さないといけないのかもしれません。その墓地は京都市にある東福寺塔頭の南明院と静岡市の瑞龍寺にあります。よく見る肖像画は南明院蔵のものです。
I:ドラマなどで登場した時でないとなかなかお参りする機会はありませんから、この機会にお参りしてみたいと思います。さて、その旭姫の死のタイミングで、家康の新たなパートナー阿茶局(演・松本若菜)が登場しました。
A:劇中では新たな側室を迎えたような流れでの登場ですが、実際には10年ほど前から家康の側室になっています。1981年のTBS『関ヶ原』では、京塚昌子さんが演じていて、私はそのイメージが強すぎて阿茶局=肝っ玉母さんなんですよ(笑)。
I:実際には松本若菜さんの方がイメージに近いんじゃないですかね。その阿茶局ですが、登場初日で表の寄合にも顔を出す場面が描かれましたが、登場していなかっただけですでに古株だっということです。
I:もう10月になってしまったわけですが、尺の問題があったのでしょう。小田原攻めが意外とあっさり片付きました。奥州の伊達政宗はナレーションや台詞の中でのみの登場になりました。
A:まあ、家康とはこの段階ではあまり関係ないですからね。ただ、今後家康六男の忠輝と政宗息女の五郎八姫(いろはひめ)が婚姻するという流れになるわけですから登場してもよかったかなとも思います。
「心はひとつ!」家臣団の絆シーンに涙
I:今週の副題は「さらば三河武士団」です。小田原北条氏滅亡後の仕置で家康が北条氏の遺領に転封することになりました。それに伴って家康家臣団が城持ち大名に出世する様子が情緒的に描かれました。
A:井伊直政(演・板垣李光人)、本多平八郎(演・山田裕貴)、榊原小平太(演・杉野遥亮)、鳥居彦右衛門(演・音尾琢磨)、平岩七之助(演・岡部大)、大久保忠世(演・小手伸也)に所領が与えられました。
I:この場に酒井左衛門尉(督)忠次(演・大森南朋)がいませんでしたね。
A:酒井忠次はこの時期には隠居していて嫡男家次に家督を譲っています。いきなり家次が出てきても「誰?」となりますから端折ったのでしょう。酒井左衛門尉家も下総臼井に所領を与えられています。酒井家が出羽庄内藩に転封となるのは忠次の孫の忠勝の代ですね。
I:私はこのシーン、ちょっと涙がこぼれてしまいました。家康の少年期から苦難をともにしてきた家臣団が、それぞれ城持ち大名として出世していく。そして今後も「心はひとつだ!」と 盛り上がる。演者の人たちが松本潤さんを「殿」と慕って団結しているといわれますが、その雰囲気が体現された場面だなと……。
A:石川数正役の松重豊さんが家臣団を「徳川商店」になぞらえたお話をしていましたが(https://serai.jp/hobby/1150282)、今週の「心はひとつ!」のシーンを見て、改めて読み返すと、感慨もひとしおですね。
I:私たちも「松本君がんばれ!」って思っちゃいますよね。
●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。歴史作家・安部龍太郎氏の『日本はこうしてつくられた3 徳川家康 戦国争乱と王道政治』などを担当。『信長全史』を編集した際に、採算を無視して信長、秀吉、家康を中心に戦国関連の史跡をまとめて取材した。
●ライターI:三河生まれの文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2023年2月号 徳川家康特集の取材・執筆も担当。好きな戦国史跡は「一乗谷朝倉氏遺跡」。猫が好き。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり