正しい意味を理解し、適切に漢字が使えているのか、疑問を感じることが増えていませんか? 適当に漢字を使ってしまい、気付かないところで「恥をかいている」ということがあるかもしれませんね。
Google 先⽣やデジタルデバイスの出現により、便利になった反面、情報の中身については⼗分な吟味が必要な時代になっております。あなたの“漢字の知識”は確かでしょうか? もう⼀度、確認しておいても良いかもしれません。
「脳トレ漢字」第168回は、「月代」をご紹介します。江戸時代まで、男性は髷を結っていました。「月代」は、当時の髪型に関係する言葉です。実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。
「月代」とは何とよむ?
「月代」の読み方をご存知でしょうか? 「つきしろ」ではなく……
正解は……
「さかやき」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「中世末期以後、成人男子が前額部から頭上にかけて髪をそり上げたこと。また、その部分。」と説明されています。中世頃までは、半月型に丸く剃り上げていたそうです。鎌倉時代に入り、戦乱が続くようになると、兜の中に熱気がこもるのを防ぐため、額から頭頂部にかけて、広めに剃るようになりました。
当時は、あくまで戦に備えた髪型という認識だったため、戦いが終われば元の髪型に戻していたと言われています。しかし、「応仁の乱」以降、戦いが日常化すると、「月代」の風習も定着していきました。江戸時代に入ると、一般民衆のあいだにも広がり、様々な髷形が生まれたのです。
「月代」は、明治4年(1871)に断髪令が出されるまで、男性の一般的な髪型として普及しています。
「月代」の漢字の由来は?
「月代」は「月額(つきびたい)」とも言い、名称の由来については諸説あります。一説では、中世の貴族が冠や烏帽子(えぼし)から髪の毛がはみ出さないように、全額部を半月形に剃っていたことに由来すると言われています。
モボ・モガの登場
明治に入り、男性は髷を切り落として、短髪にするようになりました。階級ごとに細かく定められていた女性の髪型も、この頃から誰でも好きな髪型ができるようになったと言われています。しかし、当時はまだ日本髪の人気が根強く、女性が断髪するのはかなり稀でした。
そのような時代の転換点となったのが、モガ(モダンガール)の登場であると言えるでしょう。モガとは、最先端のファッションに身を包んだ女性のことで、同じく西洋風のおしゃれを追求したモボ(モダンボーイ)とともに、大正時代から昭和初期にかけて人気を博しました。
第一次大戦に従軍した看護師のフランス人女性が、髪を短く切ったことに影響を受けたとされ、日本のモガたちは先導して断髪するようになったそうです。髪にウェーブをあてたり、短い髪に着物を合わせたりと、自由におしゃれを楽しんだモガ。
ダンスホールなどの社交場に集い、交流していたモボとモガは、不良集団と呼ばれ、世間からひんしゅくを買うこともあったそうです。しかし、彼らはまさに新しい時代の象徴だったと言えるのではないでしょうか?
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いかがでしたか? 今回の「月代」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 「月代」には、前額部から頭上部にかけて剃り上げた部分という意味があることが分かりました。
女性の断髪がそうであったように、男性の「月代」も、当初はおかしな髪型だと言われていたかもしれませんね。前衛的と思われるようなものも、数年後には大流行しているということもあるのではないでしょうか?
文/とよだまほ(京都メディアライン)
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