餅売り婆再登場と真田昌幸
I:家康が浜松から駿府に移ることを印象づける演出として三方ヶ原の大敗の時に家康に石入りの餅を渡したり、脱糞したという噂を広めたりしたという設定の団子売りの老婆(演・柴田理恵)が再登場しました。
A:浜松は働き盛りの家康が17年間拠点にした思い出の地。老婆の登場でいろいろな思い出がよみがえったのではないでしょうか。浜松城は後に「出世城」と称されたそうです。今年の夏の甲子園静岡県代表が浜松開誠館高校。浜松市から代表が出るのは21年ぶりでした。私は勝手に「家康公のお導き」と解釈しています(笑)。
I:そして今週は、真田昌幸(演・佐藤浩市)が家康と対峙しました。家康の壺を手にして、その壺を信幸に譲ると言い放ちます。それを咎められると、〈おお、皆様もご存知でござったか。自分のものではないものを人にやることはできぬということを〉のくだりはしびれましたね。
A:真田家はもともと武田家に仕えていましたが、武田家滅亡後に家康に仕えることになりました。このとき家康は小田原北条氏との交渉の中で、真田領である上野沼田を北条に割譲することを勝手に決めてしまう。「いくらなんでもそれはないだろう」というのが劇中で描かれているところです。
I:単純に考えれば、真田が怒るのも無理はないですよね。
A:小国の悲哀と泣き寝入りしてもおかしくないところですが、真田昌幸と家康の因縁はここから始まります。劇中では、家康の娘、あるいは家臣団の娘を家康の養女として真田家嫡男信幸(演・吉村界人)の正室として迎えたいと言い出します。
I:そこで白羽の矢が立ったのが本多平八郎忠勝(演・山田裕貴)の娘・稲(演・鳴海唯)。平八郎にこんな大きな娘が育っていたとは! 劇中ではまったく描かれてこなかったので、ちょっと驚きでした(笑)。
A:第1回からすでに長い時間が経過しているわけですから、家臣団にも家族が増えているわけです。
I:於愛の方(演・広瀬アリス)が勝手に自分の日記を読んでいた家康の尻をパシーンとはたく場面が再び登場しました。
A:於愛の方が本当に日記をつけていて、それが今日まで伝えられていたら、戦国史の貴重な記録になっていたのは間違いありません。もし於愛の方が日記をつけていたとしたら、どんなことが書かれていたのか想像するだけで楽しいですね。
●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。歴史作家・安部龍太郎氏の『日本はこうしてつくられた3 徳川家康 戦国争乱と王道政治』などを担当。『信長全史』を編集した際に、採算を無視して信長、秀吉、家康を中心に戦国関連の史跡をまとめて取材した。
●ライターI:三河生まれの文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2023年2月号 徳川家康特集の取材・執筆も担当。好きな戦国史跡は「一乗谷朝倉氏遺跡」。猫が好き。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり