池田勝入(恒興)、森長可討ち死に
I:池田勝入(恒興/演・徳重聡)と森長可(演・城田優)のふたりが大きく取り上げられました。本来クローズアップされてもいい羽柴秀次(演・山下真人)は「はっ!」という台詞だけの扱いでした(笑)。
A:この小牧長久手の戦いですが、前述の通り、秀吉と家康の一大決戦。劇中では、秀吉と仲違いした織田信雄が、三人の家老を粛清するという場面も前週に描かれました。粛清された家老のひとり津川義冬(よしふゆ)は、かつて尾張守護だった斯波義統(しばよしむね)の息子ですから、権力の有為転変を印象付けてくれました。
I:守護の斯波氏の地位を信長が簒奪し、信雄の家臣になっていた旧主の息子を粛清する。ところが信雄は織田家の権力を秀吉に簒奪されようとしている。まさに下剋上。
A:劇中で描かれたように池田勝入と森長可が討ち取られました。討ち死にした池田勝入ですが、劇中では「織田を裏切り」と表現されていましたが、織田家中で反秀吉の立場を明確にしたのは、柴田勝家とか佐々成政とかくらいですかね。勝家の与力だった前田利家も秀吉に味方していますから。
I:ということは、池田勝入がことさら「織田を裏切り」といわれる筋合いはないということですよね。むしろ機を見るに敏ということになりませんか?
A: そういう側面はあるかもしれません。機を見るに敏といえば、勝入の息子輝政は、後に家康の縁戚となり、池田家は鳥取藩、岡山藩と大藩藩主となります。取り入る能力はあったのかもしれないですね。
I:合戦シーンは、「中入り」のことがじっくり描かれました。
A:井伊の赤備えが登場したり、黒糸縅胴丸具足、肩から数珠をかけ、突盔形兜(とっぱいなりかぶと)に獅噛の前立てに鹿角の脇立を備えた本多忠勝(演・山田裕貴)の名乗りがあったり、ドラマのクライマックス? と思ってしまうくらい臨場感がありました。左衛門尉酒井忠次(演・大森南朋)の「天下すくい」も飛び出しましたし(笑)。
I:なんだか盛りだくさんでしたが、私はもっと雄々しくなってきた家康の姿が見たかったです。ちょっと出番少なくないですか? と思いましたね。さて、そうした中、次回予告に佐藤浩市さん演じる真田昌幸の姿が登場しました。
A:これは見逃せません。最近ご無沙汰している人も、真田昌幸を見るためだけでもいいので戻ってほしいですね。(https://serai.jp/hobby/1142902)
※城田優さんが演じた森長可。「6兄弟のうち5人が織田家に殉じた森一族の悲劇」はこちら。
●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。歴史作家・安部龍太郎氏の『日本はこうしてつくられた3 徳川家康 戦国争乱と王道政治』などを担当。『信長全史』を編集した際に、採算を無視して信長、秀吉、家康を中心に戦国関連の史跡をまとめて取材した。
●ライターI:三河生まれの文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2023年2月号 徳川家康特集の取材・執筆も担当。好きな戦国史跡は「一乗谷朝倉氏遺跡」。猫が好き。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり