テレビドラマや舞台、映画やCMなど数々のメディアを横断して活躍し続けている俳優の光石研さん。今年6月には12年ぶりの単独主演映画『逃げきれた夢』が公開され、60歳を越えてますます活躍の場を広げています。そんな光石さんに、インタビュー後編では老いとの向き合い方についてお話しを伺いました。

【前編】初老男性のリアルを光石研さんが好演! 映画単独主演は12年ぶりはこちら

将来のことは定まってはいないけれど、俳優業は続けていきたい

――映画の中で、周平は自分の病気ばかりでなく、親の介護、定年、いろんな問題に出くわします。光石さんは映画を通じて、何か自分の将来について考えることはありましたか。

本当にそうですね。僕ら俳優は定年がないから、何かあやふやで。周りにいる僕の同級生なんかも言ってくれるんですよ、「お前、仕事があることは本当に幸せなことだよ」って。彼らは“定年”っていう札が如実にぱっと回ってくるから、定年後はどうするか、その辺をものすごくシビアに考えてますよね。話を聞くと、「年を取ってきたな」ってすごく感じますね。

だからって、何をどうするかってことはわからないんです。自分に照らし合わせて、計画を立てなきゃいけないんでしょうけど、これがなかなか(苦笑)。日々の仕事に追われてるのにかこつけて、何も手をつけてないんですよね。本当はちゃんとしなきゃいけないんでしょうけど。

――俳優は定年がないですが、光石さんは今後、何歳まで働きたいと計画していますか。

それは全くわからないです。どうしましょうかねぇ。僕らはセリフ覚えが仕事の一つであるものですから、記憶をしなきゃいけない。この映画の周平じゃないですけど、記憶力が衰えてくるとなると周りに迷惑をかけるから、そこはちょっと考えなきゃいけないだろうなと思うし。それに、撮影現場は過酷なところに行ったりすることもあるので、体と相談しながらかなと思いますね。かといって将来、全然動けなくなって、仕事をやめてもどうなのかっていう考え方もありますよね。体の動くうちに次のセカンドライフにいくという考え方もあるし。まだ全然、定まってはいないです。そうはいっても、俳優は続けていくでしょうね。

セカンドライフは俳優業と棲み分けをしながら好きなことを

――セカンドライフについて、考えることもありますか。

すみません。今、たまたま言ってみただけで、全く想像してないです! 田畑を耕すとか、そんなことは全然できないし、しないでしょう。僕は街が好きですから。でも、友だちのなかには、ソロキャンプで各地を回っているやつもいるし、突然、大型バイクの免許を取って乗ったり、軽自動車を改造したり、山登りにハマったやつもいるし。そういうのを見ていると彼らも彼らで楽しそうだし、自分も何か考えなきゃなとも思うんですよ。

コロナの時にはまた、イラストを描いたりしていたんです。子どもの頃に大好きだったから。周りのものを描いたり、自分の顔を描いたり、割と身近なものを題材に。ペンを買ったりして道具を揃えて、色をつけたりしてみたんですけど、これがやってみたら楽しくてね。コロナが収束し始めたら、なんだかんだとまた忙しくなっちゃって、離れましたけど。風景画とかも描いたら、面白いかもしれないですね。そういうこともいいなと思います。あとたまってきたDVDを見返す時間も欲しいし、持っているレコードを1枚1枚、きれいにしたいなっていうのはずっと思っています。レコード針を替えなきゃなとか。本当に暇になったら、そういうことをやりたいですね。

そんなことを多少は思っていますけど、本当に仕事がポンと1か月くらい、何もないとかになったら、そういうことをやり始めても、僕の精神状態が大丈夫か不安です。芝居、演技から離れるということになったら、「なんで?」ってなっちゃわないかなって。これまでずっとやり続けている分、ちょっとどうなるか自分でも全く想像できません。上手いこと、棲み分けできたらいいんですけど。

また12年後はすぐにやってくる、怖いですよね(笑)

――仕事や趣味のできる今後を考えて、健康維持のため、何かしていますか。

あんまり変わったことはしてないです。ただ、40歳に入った頃にタバコをやめたんです。元々、体質に合っていなくて、かっこつけて吸っていただけだったので、どこかでやめたいなとずっと思っていました。それがとある現場で、「みんなでやめようか」という話になり、いい機会なのでみんなでやめました。それが今も続いていて、よかったと思っています。煙草をやめて太ったという話をよく聞くので、このままじゃいけないと思って、「じゃあちょっと走ってみようかな」と、以来ジョギングをしていて。その勢いでマラソンをしていたのですが、コロナで大会がなくなったり、走るのもだめという風潮もあり、足を悪くしたこともあって、今はウォーキングに変えました。足が治ったら、また走れたらと思っています。

お酒に関しては、もうちょっと飲んでもいいかなと思っています。僕はお酒を覚えたのが少々、遅いんです。若い頃は飲んでもビール1杯とかぐらいで、ちゃんと飲むようになったのは40歳を越えてから。本当の酒飲みじゃないから、何か食べながらでないと飲めない。その程度なので、がぶ飲みせず、美味しいご飯の時に美味しいお酒をちょっとだけ嗜む程度ならいいのかなと(笑)。

――これからも出演作品が目白押しですね。楽しみにしています。次回の単独主演作は12年後ではないですよね?

12年後は73歳か。いったい、どうなってるんですかね。全く想像つかないです。はるか先だと思っているけど、もうすぐなんでしょう。怖い、怖い(笑)。

●光石研(みついしけん)
1961年9月26日生まれ、福岡県出身。高校在学中に『博多っ子純情』(78)のオーディションを受け、主役に抜擢。以後、様々な役柄を演じ、映画やドラマ界、舞台などで幅広く活躍。2016年には第37回ヨコハマ映画祭助演男優賞(映画『お盆の弟』(15)・『恋人たち』(15))、2019年には第15回コンフィデンスアワード・ドラマ賞 主演男優賞(「デザイナー 渋井直人の休日」(TX))、出身地の北九州市より市民文化賞を受賞。近年は『青くて痛くて脆い』、『喜劇 愛妻物語』(20)、『バイプレーヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~』、『マイ・ダディ』(21)、『おそ松さん』、『異動辞令は音楽隊!』(22)、『波紋』(23)などがある。

●光石研さん主演映画

『逃げきれた夢』

6月9日(金)より新宿武蔵野館、シアター・イメージフォーラムほか全国ロードショー
光石研
吉本実憂 工藤遥
坂井真紀
松重豊
監督・脚本:二ノ宮隆太郎
制作プロダクション:コギトワークス 配給:キノフィルムズ (c)2022『逃げきれた夢』フィルムパートナーズ
公式サイト:https://nigekiretayume.jp/

取材・文/高山亜紀 撮影/小倉雄一郎(小学館) スタイリング/上野 健太郎 KENTARO UENO 
ヘアメイク/大島 千穂 CHIHO OHSHIMA
衣装/ジャケット、ニット、パンツ/全てFUJITO(Directors TEL:092-733-3997) シューズ/スタイリスト私物

 

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