ライターI(以下I):女武者といえば、昨年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』でも登場した巴御前や『女城主直虎』では大河の主演になった井伊直虎が思い浮かびます。今週はお田鶴(演・関水渚)の武者姿にひときわ心を揺さぶられました。制作陣がそれを狙っていたかどうかはわかりませんが、少女時代のかわいらしい回想シーンの後に、凛とした甲冑姿。萌えたという方も多かったのではないでしょうか。
編集者A(以下A): 瀬名(演・有村架純)の幼馴染として序盤から登場しているお田鶴は当然のことながら実在の人物で、今川方の武将鵜殿長照(演・野間口徹)の妹になります。鵜殿長照亡き後は、鵜殿家を背負ったそうです。
I:なかなかの烈女だったんですね。それにしては、巴御前なんかと比べても知名度は今ひとつ。地元の伝承では、家康軍と対峙した際には18人の侍女が田鶴に殉じて討ち死にしたそうです。本編の記事でも触れましたが、田鶴の討ち死にを嘆いた瀬名が百本の椿を植えて菩提を弔ったといいます。
A:今週の本編では、そうした伝承をうまくストーリーに取り入れた感じがしますね。「松潤家康」も田鶴を救おうとしますが、もはや時すでに遅し、という感じでした。
I:少女時代の回想で、駿府の街中でお団子を一緒にほおばりながら、将来を語らっていたシーンがひときわ胸に響きました。
A:なるほど。そういうこところが胸に響きましたか。さて、そのお田鶴を演じた関水渚さんからコメントが寄せられました。関水さんは1998年生まれの24歳。第40回ホリプロスカウトキャラバンをきっかけに芸能界入りしたそうです。
I:何度も言いますが、甲冑姿は凛としていて、今後が楽しみな感じがしましたね。現在、男女が逆転した『大奥』がNHKでやっていますが、武将バージョンをやったら面白いのではないかと思ってしまいましたね。
A:なるほど。甲冑姿の女性武将をメインに据えるということですね。そういう合戦シーンも見てみたいですね。
I:はい。それでは関水さんのコメントをどうぞ。
田鶴は、周りの人の幸せをとにかく願い続けている人。自分が大切にしているものは絶対に守り抜く、誰にも譲らないという意志の強さがありますし、相手がどう思っているかはわからないけれど、田鶴としては家族や友達、周りの皆に幸せを与えたいという、ひたむきさがある人でした。
A:最期の時まで自分の中の忠に従った女性だったんでしょうね。そういう芯があったからこそ、女城主が務まったのかもしれません。
I:田鶴さんの存在感はけっこうあったと思うんですけど、大河ドラマは初出演ですよね。
5か月近く演じてきたので、今では田鶴が身体にしみついています。田鶴だったらこうするかな、と意識して演じるというよりも、衣装を着て現場に行ったら田鶴の気持ちになっているので、自然にその時感じたままに演じていました。こんなに長期でひとつの役を演じた経験はなかったので、ここまで感覚的に演じられたのも初めてな気がします。私にとって初めての大河ドラマで、緊張も楽しさもあり、思い出いっぱいの作品になりました。これからもまだまだ作品は続くので、今後は一視聴者として楽しみたいと思います。
A:ああ、初めての大河ドラマにして、あの存在感。今後もどんどん大河に登場してほしいですね!
●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。歴史作家・安部龍太郎氏の『日本はこうしてつくられた3 徳川家康 戦国争乱と王道政治』などを担当。『信長全史』を編集した際に、採算を無視して信長、秀吉、家康を中心に戦国関連の史跡をまとめて取材した。
●ライターI:三河生まれの文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2023年2月号 徳川家康特集の取材・執筆も担当。好きな戦国史跡は「一乗谷朝倉氏遺跡」。猫が好き。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり