松山や 秋より高き 天主閣 ── 正岡子規
松山城
多くの名句を生んだ、松山のシンボル
愛媛県松山市丸之内1
電話:089・921・4873(松山城総合事務所)
開場時間:本丸広場:5時~21時(11月~3月は5時30分~21時)、天守:9時~17時(8月は17時30分、12月~1月は16時30分まで)
入場料:520円
交通:松山空港より車で約40分。伊予鉄道大街道駅よりロープウェイ・リフト乗り場まで徒歩約5分
松山城は、町の中心にある城山とその西南麓に構える平山城(※平野の中にある山や丘陵に築かれた城)。松山の至る所から仰ぎ見ることができ、築城から数百年を経た今も町の象徴であり続けている。
城門をくぐり急勾配の坂道を登ると、ずっしりと天に向けて構える城壁に圧倒される。その向こうには、青空にくっきりと突き出た天守閣が、勇壮な趣で佇んでいた。
正岡子規は、代表句と称される作品をここで残している。
〈松山や 秋より高き 天主閣〉
城の天守が、秋の空より高く聳え立つ壮大な様子を詠んだ句だ。
高浜虚子は、城山で鳴く鶯が町に響き渡る様子をこう詠んだ。
〈しろ山乃 鶯来啼く 士族町〉
俳句研究者の青木亮人さんによれば、この句は武士の家系である「士族」を何気なく詠んだ点に松山俳句の精神性が読み取れるという。
「俳壇の中心にいた子規や虚子など松山出身者の多くが士族です。特に子規は子どもの頃から漢詩文を徹底的に叩き込まれ、文章力に長けていました。さらに松山藩は幕末に賊軍とされたので、子規も虚子もその悔しさから士族であるプライドが非常に高い。その自尊心は彼らの俳句人生にも反映されていました」(青木さん)
子規は病床中に故郷について綴っている。《世に故郷ほどこひしきはあらじ。(略)故郷近くなれば城の天主閣こそ先づ眼をよろこばす種なれ》(故郷ほど恋しいものはない。故郷に近づくと最初に天守閣が迎えてくれるのが嬉しい)松山城は、松山俳句の礎なのだ。
俳句ゆかりの城下を巡る
子規や虚子の足跡を辿って城下を歩くと、町の至る所に立つ句碑の数に驚かされる。愛媛県内には1000を超える句碑があるそうだが、その半数以上が松山に集中している。俳句好きなら句碑巡りもお勧めだ。また子規の旧宅を模した子規堂も写真など展示が充実しており一見の価値がある。
子規堂
子規の直筆書簡など資料が充実
愛媛県松山市末広町16-3
089・945・0400(正宗寺)
開館時間:9時~17時(最終入館16時40分)
休館日:無休
入館料:50円
交通:伊予鉄道松山市駅(電停)より徒歩約5分
松山城近くにある東雲(しののめ)神社には、高浜虚子の句碑が立つ。
〈遠山に 陽の当りたる 枯野哉〉
虚子はこの句について、「自宅を出て道後の方を眺めると、道後の後ろの温泉山にぽっかり冬の日が当たっていて、何か頼りになるものがあった」と解説している。
東雲神社近くには子規の句碑も。
〈牛行くや 毘沙門阪の 秋の暮〉
久しぶりの外出に季節の移ろいを実感したのだろう。
東雲神社
高浜虚子の名句に出会える神社
愛媛県松山市丸之内73-1
句碑の問い合わせは電話:089・948・6891(松山市文化財課)
見学自由
交通:伊予鉄道大街道駅より徒歩約8分
立ち寄り処
ホヤケン
地酒や郷土料理を食べながら一句
愛媛県松山市三番町2-5-17
電話:090・9250・1839
営業時間:18時~23時
定休日:日曜(連休は最終日)
料金:2000円~
交通:伊予鉄道大街道駅より徒歩約5分
すし丸本店
子規や漱石が愛した郷土料理「松山鮓」
愛媛県松山市二番町2-3-2
電話:089・941・0447
営業時間:11時~14時、16時30分~22時30分(最終注文22時)
定休日:無休
料金:松山鮓(吸い物付き)1155円
交通:伊予鉄道大街道駅より徒歩約5分
土産処
六時屋
虚子も魅了された郷土菓子タルト
愛媛県松山市勝山町2-18-8
電話:089・941・6666
営業時間:9時~18時
定休日:無休
料金:切タルトバラ140円(1個)、小タルト864円(1本10切スライス)~
交通:伊予鉄道上一万駅より徒歩約1分
※この記事は『サライ』本誌2022年8月号より転載しました。