原作は『 月の満ち欠け 』で、第 157 回直木賞を受賞した作家・ 佐藤正午の数ある傑作のなかでも最高到達点との呼び声高いエンターテインメント小説『鳩の撃退法』。累計発行部数は20万部を突破し、第6回山田風太郎賞を受賞するなど高い評価を得るとともに、実写化不可能と言われ続けてきた本作が実写映画として “謎解きエンター<転>メントに生まれ変わった。

主演は映画『22年目の告白-私が殺人犯です-』(2017)、『 Diner ダイナー 』(2019)、『 カイジ ファイナルゲーム 』(2020)など数々の話題作に出演し、今や日本映画界を代表する唯一無二の怪優・ 藤原竜也 。

多くの作品で数々の名役を演じてきた藤原竜也が、今回は、最も謎めいた元直木賞作家・津田伸一(つだ・しんいち)を演じる。

さらに超豪華なキャストも集結している。
津田に翻弄される担当編集者・鳥飼なほみ (とりかい・なほみ)を 土屋太鳳 、ある日、突然家族と共に姿を消したバーのマスター・幸地秀吉(こうち・ひでよし)を風間俊介 、津田の行きつけのコーヒーショップ店員・沼本(ぬもと)を西野七瀬 、彼らが暮らす地方都市の裏社会を仕切る男・倉田健次郎(くらた・けんじろう)を豊川悦司 がそれぞれ熱演。

監督はドラマ「赤めだか」(2015)でギャラクシー賞ほかドラマ界の賞を総なめするなど、映画だけではなく TVドラマ・バラエティ・ミュージックビデオとジャンルを問わず、マルチに活躍する タカハタ秀太 が務める。

これはただの映画ではなく、天才作家・津田伸一が仕掛ける 史上最大の謎解きエンター<転>メント 。文字通り、目まぐるしく転換する物語。なぜニセ札は津田の元に舞い込んだのか? 囲いを出た鳩とは? 消えた家族の行方は?などなど…。
物語の中にはいくつもの謎が仕掛けられており、観客が楽しみながら謎に挑んでもらえる映画になっている。今回は、大ヒットを記念して、主演の藤原竜也の特別インタビューをお届けする。

【STORY 】
かつては直木賞も受賞した天才作家の 津田伸一(藤原竜也)。津田はとあるバーで担当編集者の鳥飼なほみ (土屋太鳳)に、書き途中の新作小説を読ませていた。
富山の小さな街で経験した“ある出来事”を元に書かれた津田の新作に心を躍らせる鳥飼だったが、話を聞けば聞くほど、どうにも小説の中だけの話とは思えない。神隠しにあったとされる家族、津田の元に舞い込んだ大量のニセ札 、囲いを出た鳩の行方、津田の命を狙う裏社会のドン、そして多くの人の運命を狂わせたあの雪の一夜の邂逅 。彼の話は嘘? 本当? 鳥飼は津田の話を頼りに小説が本当にフィクションなのか 【 検証 】を始めるが、そこには 【驚愕の真実】が待ち受けていた 。

大ヒット上映中!『鳩の撃退法』主演、藤原竜也スペシャルインタビュー!

謎めいた元直木賞作家・津田伸一(つだ・しんいち)を演じる藤原竜也。

――オファーを受けたときの感想は?

複雑な話だったので、整理して撮影を進めていくのは大変だろうなということと、現場でも、これは現実の事なのか、全スタッフ、共演者もそうですけど確認しながら、今これは小説の中の話だねと、いちいち考えながらやるのが大変でしたね。話自体としては、僕は原作読んでいないんですけど、非常に行ったり来たりして難しいかなと思っていたんです。しかし、監督の手腕というか、見事にまとめてくれて流石だなという印象を受けました。撮影中は富山が舞台だったので、富山の方たちの協力がなければ不可能な撮影でした。みなさんの協力が有難かったですね。

一発で撮ろうという監督の思いそして緊張感

――ふたつのパートで演じ方は変えましたか?

今までにないやり方で、僕としては新鮮でしたね。自分で書きながら、カメラの前で芝居はしているんだけど、それを実際に津田として演じているのか、リアルな体験なのか、そこのやり方が非常に新鮮でした。監督がわりと、これもはじめてだったんですけど、そこまでリハーサルを重ねずにやってみましょうか、ということだったので、スタッフの人たちは苦労するし、物申したい気持ちはわかるんだけど、僕らとしては、一発で撮ろうという監督の思い、そして、緊張感の中でやれたからこそ、成立できたこともあります。それは映画的な撮り方でいったら批判を浴びる手法ということはあると思います。難しいけれど、今回監督が採られた手法、テストせずに回せるところは回していくというやり方は、僕の中では新しかったけど、その緊張感が僕の中ではある種の演劇的な面白さというかそういうものにつながって、やりがいのある現場にはなりました。

――監督の狙いは何だと思いましたか?

一番最初に出たものを撮りたい、ということだったんじゃないですか。

――リスキーな手法では?

そこの選択は、僕は勝ち負けじゃないけど、勝者は監督じゃないかなと。飲みに行くたびに、僕が聞き役に回り、「テストくらいやらしてくれたっていいじゃないですかねー」と言うと、「まあまあねー、分かりますよ、照明はね、でもとれるときとったら、良いものがでるかもしれないじゃないですか」というようなね。逆に今回はそういう立ち回りもできたから、新鮮でした。

――ダメなときはやり直す?

もちろんもちろん、撮影ですからね。ライティングが決まっていないときは、それはお互いが主張し合える権利があるわけだから。でも行けるところまでいっちゃおうというのは、リスキーだとは思いますけど、好転する瞬間もあるから、良かったんじゃないかと思いますけどね。

――役に共感できるところは?

共感というか、彼は非常にダメな部分が多いじゃないですか。でもダメなりにも、そのことを否定的にとらえるわけではなく、そういう小説家っていっぱいいるんだろうなと。小説家にかかわらず、いつか正しいものが書けるかもしれない、いつかこの場所から一歩踏み出せるかもしれない、ただそれを強く望むことではなく、今あるこの自分を受けいれて、富山で暮らしていこうという、若者の象徴的な部分があるわけですよね。そういう部分というのは、彼の今を生きるみたいなね。共感する部分はあるけれど。

逆に僕なんかもっとアグレッシブというか、常に行動していきたいタイプだから、彼とはまた離れた性格を持っている部分はあります。演じた小説家の津田としての今ある自分自身を否定しない生き方というのは、嫌いではないですけどね。多くのものを望まず、争いを避けて通りたい、彼の持っているやさしさというのは良いなと思います。

リリー(・フランキー)さんもそうですけど、ミッキー(・カーチス)さん演じる房州さんが、僕の津田の拠り所というか、良い存在感で隣にいてくださいました。リリーさんも坂井(真紀)さんもそうですけど、豊悦さんだとかみんなに見守られて、僕とか風間君とか、七瀬ちゃんとか、太鳳ちゃんとかが、中心で遊ばせてもらったという感じ。監督もそうですけど、良い大人たちに囲まれて、なおかつ監督の手法で自由にやらせてもらって、その結果、すごく優れた映画になったと思うんですよ。富山ももちろんありますし、そういう環境がすべて整った映画ができてよかったなと思いますね。

勉強になることが本当に多かった

――演者と監督のディスカッションはありましたか?

個人的には、リリーさんとミッキーさんと豊悦さんもそうですけど、ずっと見てきて育った世代で、かっこいいおじさんたちじゃないですか。先輩たちとのやりとりというのは見ていて勉強になりましたね。

岩松了さんって演劇人で、演劇の世界では寡黙な恐いおっちゃんという評判ですけど、現場にいるときの岩松さんって、今回ぼくの上司の役で、ある一定のスピードをもって僕に起こったことを説明する。それは膨大な量のセリフなんですね。岩松さん、書いてもいいんじゃないですか、割っても良いんじゃないですかって言っても、僕がんばるって言っている。それは僕もそうですけど、必死に台本と現場と向き合って監督に対して表現する姿を見ていると、泣けてきますよね。岩松さんとかミッキーさんとかが、ここまでの思いでカメラの前に立っているんだという姿を僕は目の当たりにして、嬉しかったですね。勉強になることが本当に多かった。

今回初めての人が多かったから、濱田岳くんが来たときは、「釣りバカ日誌のハマちゃんが来た!」と思って嬉しかったです。ファン目線でいました。今回の役は作家で、この作品の書き手というかね、中心の人物ですけど、個人的には一ファンとしてみんなと接していましたね。それがまた逆に良かったんじゃないかと思います。

主人公が暮らす地方都市の裏社会を仕切る男・倉田健次郎(くらた・けんじろう)を演じる豊川悦司。

――富山ロケで印象に残った場所は?

富山はねきれいな場所でしたね。立山連峰に囲まれて、白く雪がかった山々に囲まれて寒い中やらしてもらいましたけど、今まで僕は色々な映画で、こういう苦しみとかって画に出るからって言われても、画なんかにうつらねえよ、馬鹿野郎なんて思う自分がいたわけですよ。でも映画を観ると、やっぱり富山でしかとれないものってあるし、何よりも、撮影中も撮影以外も協力してくれた人たちが優れているなと感じました。みんなしっかりしているし、エキストラさんたちも自分のやるべき仕事を理解して、スタッフの指示に耳を傾けて聞いてくれるし、本当に素敵でした。

現場では自由に実験的にやらせてもらったので楽しかった

――カフェのシーンの裏話はありますか?

面白いやり方でしたね。撮影しているときは、実は分かっていないことも多いんですよ、僕らは。風間君とも先日会って。「どうだった?」って聞いたら、「めっちゃ面白かったですよって。藤原さん、やってるときぼくら何撮っているか分からなかったですよね」って。確かにそうなんですよね。言われてみれば、「藤原君ここに立って台詞言ってみてください、もうひとりの津田が後ろに座っているので、彼に話しかけてみてください」って言われるくらいなんですよ。現場では、監督に言われた通り、台本に書かれたことをやっているだけで、実際ぼくらは正しいか分からないですけど、観たときに、一観客になるわけですよ。こういうことだったのか、面白い撮影方法だな、見事だなと。監督に今回はやられたってことですよね。

――監督はあまり説明しない?

しなかったですね。

――藤原さんからも聞かなかった?

そうですね。僕から聞く監督もいらっしゃいますよ。今回、スタッフを含め、色々な人が駆け引きをしていたんだと思う。監督も僕に対して、僕も監督に対して。スタッフに対して。共演者は共演者でわりと仲良かったんですよね。仲が悪かったというわけではないですけど、何も多くは語らずに、「そうか、監督がそういう思惑であれば、自由にやらせてもらおう」という感じで今回やってたんです。ほとんどのスタッフが富山に1か月間いたから、色々なお店で飯食ったり飲んだりしましたけど、監督とは一度も飯食っていないです。ソーシャル・ディスタンスですかね(笑)。一足先に保っていましたから、それが逆に功を奏したというか。

――箇条書きにするとクズだけど、かわいらしさがある役だと意図して表現された?

どうでしょう。結構僕にとっても言い方は悪いかもしれないけど、実験的なことが多くて。普通だったら芝居でもなんでも「竜也それ聞き取れないよ」とか、「何言っているか分からない、ブレス入れた方がいいよ」とか、自分で思っても修正することがあるんですけど、今回は突っ走ってみようかなとか、技術的に台詞を、句読点要らないなとか、まくしたててやろうかとか、今までやってきたことのないセリフのしゃべり方とか、テンポとか、僕個人としては面白かったです。公開されて何言っているか分からないと言われたら監督の責任ですけど、現場では自由に実験的にやらせてもらったので、すごく楽しかったし、見て間違いではなかったなとは思っています。

――印象的なシーンは?

まずカフェのが面白かったですし、風間くんと僕がピーターパンの話をしていて、幸せなら手を叩こうじゃなくて、クラッピングのありますよね、あそこのシーンはどういう風に盛り上がるんだろう、監督さんは、豊悦さん、風間君をどう描くんだろうなと思っていたら、ものの見事にピーターパンでしたっけ、どうやったらピーターパンの世界に観客を巻き込むんだろうって思っていたんですけど、やっぱりうまいな、監督って。瞬間的に、観客を寓話の世界に連れて行くわけじゃないですか。現実、富山からいきなり僕らが幼少期のころにみた寓話の世界に連れて行ってくれる。音楽と、ライティングと、しかも描写としてはめっちゃバイオレンスな仁侠映画のような、東映京都のような、でもどこかの片隅で寓話を入れ込むかっていうのがすごいですね。あそこのシーンは印象的でした。色々な可能性があるし、観る者によってとらえ方の違うシーンになってて、すごくかっこよかったです。

――舞台と演じ方のスタンスの違いは?

今回の映画に関しては強く思いましたね。カメラの前で監督の要求にこたえながら、芝居をする。そして津田という役を背負って、何か内に秘める思いを表現するのと、1000人の目の前で、一人一人に台詞を伝わるようエネルギーが伝わるように表現するというのは明らかに違いますね。どちらも違うエネルギーが必要になると思いました。

――一番意識されていることは?

演劇に関しては、言葉が分からなければ、お客さんはついてこれないですから、その瞬間に、話を追うとか、芝居を観るという感覚が薄れていくんですね。だからしっかりと伝えていかなければいけない。ある一定の熱量をもって。映画の場合はまた違うエネルギーを必要とするから疲れますよ。うまく変えていかなければいけない。

子どもが小さいから、撮影期間中もどうにかして東京に帰ってきた

――一番刺激を受けた共演者は?

今回、珍しいんじゃないかなってくらい、全員。はじめての人たちばっかりだった。太鳳ちゃんも本当に素敵な人です。太鳳ちゃんみたいに若く売れている人ってやはり理由があって。真面目に現場に向き合ってすごいなと思いますし、逆に柿沢(勇人)なんて若いころから面倒みてますけど、もっともっとこれを踏み台に飛躍して良い役者になってもらいたいなと思いますし、全員に刺激を受けた。だからファン目線で見ていましたよ。坂井さん綺麗だなーとか、こんなバーの人いたら毎日通うよなーとか。岩松さんも演劇で自分で書いて演出してあんなにすごい人が、富山にきてこんなに台詞に苦労して、それを見れただけで嬉しかったですし、リリーさんも共演したかった一人ですから、話したい事聞きたいこといっぱいあるなと思いましたし、豊悦さんも格好良かったし、風間君も。

豊悦さんは最後ラストシーン会っているんですよ。映画見たとき思いましたね、豊悦さん全部持っていったなって。うちらの1か月返して欲しいと思いましたね。豊悦さんて1週間もいなかったんですよ、富山。なのに、全部持っていくから、それが豊悦さんの力量なんですよ。今回は、監督と豊悦さんにやられた映画です。

僕はめちゃくちゃ働きました。でも子どもが小さいから、どうにかして東京に帰りたかった。21:30のはやぶさに乗れば、その日に帰れるんですよ。現場を20:50に出れば、大体富山駅着くんです。そういう日は、朝から色々なスタッフに撒いておくんですよ。「今日ちょっと帰りたいなー」とか、20:40くらいになると、若干焦ってくれる人、無理だろって日は、全スタッフゆっくりなんで、僕もあきらめるんですけど、若干焦ってくれる日は、「あと何カットくらいですかね、じゃあいっちゃいますか」とか。8回くらいは東京に帰れました。役者としては最低ですよ。そんな、帰れるか、みたいな。これは書かなくて良いですけど。富山の思い出は富山の駅に食品売り場があって、白エビ丼とかお寿司がすごいおいしいのが売っていて、それを買って帰るのがすごい楽しみで、21:30のはやぶさに乗って。大体馴染になってるから、急いで!って渡してくれるんですよ。缶ビールかなんか買って、夜の雪の降る富山駅を後にして、東京まで3時間半くらいかかります。長い帰路につくわけです。旅ですよ。本当に楽しかった。富山のまわり、飲食店の人も、太鳳ちゃんとかも飲みに連れ出して、色々な話をして、コロナ禍前の良い思い出です。

津田に翻弄される担当編集者・鳥飼なほみ (とりかい・なほみ)を演じる土屋太鳳。

ぶれない、動揺しない。役者として書かれたものを自信をもって表現したい

――苦労したことは?

自分自身を発見し、物語を追求しだし、自分の中で小説の想像が膨らんでいく。それを見事に太鳳ちゃんとか坂井さんに伝えていくわけじゃないですか。秀吉がどうならったらこうこうと理路整然と説明していくわけですよね。それっていうのは、実験的とも言いましたけど、今回ある一定のスピードを持って、まくしたてるようにしゃべりたいなと思っていました。あるテーマを持って。テーマを課したのは良いけど、やるのは意外と大変だなと。苦労したといえば苦労したけど、裏を返せば楽しかったな。やりがいのある撮影でしたね。あとは、寒さとか身体的なものは苦労のうちに入らないので、今回は台詞くらいですかね。この座組に入って何のストレスも感じることなく、最初から最後までやらせてもらいました。

――今まで巻き込まれ型の作品を多くやってきて、役に立ったことなどを教えてください。

今回は、ひとりひとりと他の役者さんと正面から向き合っていれば、ひとつひとつが成立していくだろうなと思っていたので、自分の中で考えて、こうやっていこうかなというシーンもありましたけど、わりとそのまま、現場に入って決めちゃったシーンの方が多いので、何かが活きたというよりは、現場に入って決めたというのが多かったですね。「ミッキーさんはじめまして、こうやっていきましょう」「テストやって、これやったら面白いですね」とか、ふたりで作っていったり、余計な芝居がいらない人たちばっかりだったから、ただ預ければ良いという人たちばかりだったので、僕としては楽だったのかもしれないですね。うまいひとたちばかりだったので。

――津田の芯として大事だったのは?

それはもう、個人的にはぶれない、動揺しない、役者として、書かれたものを自信をもって表現しようということだけですね。現場で悩んだりすることもありますけど、技術的な悩みではなく、これできるかなみたいな自分自身が不安になるものは一切持ち込まず、ただ集中して信じて現場に入ろうっていうのは決めてやっていましたね。

――それで津田がいる。

近いと思いますね。不思議だし、役柄が合っていたのかな、僕の心理と。

――ご覧になっていかがでしたか?

間違ってないんじゃないかなと。

――津田がこのタイトルにした理由は何だと思います?

まったく分からない。

――偽札ですよね。

そういうことでしょ。僕も全然分からなかった。原作読んでいなかったっていうのもありますけど、なんで鳩の撃退法なんだろうね? 多分現場でも、「鳩、つがい? 偽札?」って太鳳ちゃんとバーでやっているやりとりっていうのももう少しシンプルだったと思うんですよね。シンプルだったんですけど、太鳳ちゃんと僕と監督の中でも3人が引っかかっていて、名探偵コナンのように、ここまで少量のごくわずかなヒントで、ワードで、最後の解決までいけるのかという疑念が生まれて、ちょっと何か1手2手ではなく、何か、セリフを長くしたわけではないんですけど、より多くの疑念を僕らが抱けるように、若干シーンも長くなっていると思うんですよ。そこで初めて気づいたんですよ、こういうことかって。鳩の撃退法というタイトルが、非常に僕としてはハイセンスというかお洒落なネーミングを津田自身はつけたんじゃないかなと。最初で最後の大仕事じゃないかなと。

――津田の能力については?

すごい才能ですよ。なってみたいですよ。僕も。面白い。

――俳優にも似ている?

どうでしょうね。もちろん大変な作業で役者の仕事だとは思いますけど。個人的に伊集院静さんがすごく好きで。よく先生の作品読んでいるんですけど、ちょっと自分の中で、失礼かもしれないですけど、物書きってずるいじゃないですか、かっこいいじゃないですか。書いてあることが本物になるし、書いていることが正解だし、そういうことなんですよ、抽象的ですけど。津田が書くものっていうのが正解で、舞台でも映画でも脚本家が書くものが正解だし、その人しか知っていないし、どうぞって言われたらテストされているみたいで。だから作家っていう職業=ずるい人っていうイメージなんです。

――ずるいってのをイメージして演じた?

そこまで考えていません。でも僕はよく言うんですよ。ずるいものだって。それが正解なんだからって。

――伊集院さんを好きな理由は?

かっこいいじゃないですか。背も高くておしゃれで。本人も文体も。瞬間的に人の心をキャッチする文体とか。落ち込んだときに直接かけられる台詞みたいなのが好きなんですよね。

――好きな作品は?

最近出た、先生がルーティンにしているエッセイみたいなのはかっこよかったです。

――伊集院静さんが好きなのは腑に落ちます。

昔、『いねむり先生』をドラマでやっているんですよ、西田敏行さんと。前から先生の作品読んでいたので、実際にお会いしたら、かっこいいですよね。

実はこの物語はファンタジーだったんじゃないかな

――西野七瀬さんについて、どうでしたか?

個人的に、6代目の中村勘九郎さんがアイドルオタクなので、「七瀬ちゃん焼肉でも食べに行かない?」って、来てくれたんですよ。「こういうの申し訳ないんだけど、七瀬ちゃん、勘九郎って分かります」って言ったら、「いだてんやってる?」「そうそう」って。その方が「どうしても電話を、声だけききたいって、よろしいですか?」って、そしたら全然いいですよって代わってくれたんですよ。そんな僕のどうでもよい遊びに付き合ってくれる、本当に優しい子。

監督に、こうした方がいいんじゃないとか言われて、藤原君台詞合わせ付き合ってくれないと言われて、自分の中にない要素を引き出されようとしていて、それは彼女の中で色々なものが埋まっていないにもかかわらず、腑に落ちていないにもかかわらず、でも現場回さないといけないからやらないといけないじゃないですか。でも監督にもう一回もう一回と追い込まれていくわけですよね。それでもやっていく姿勢を見せつけられると、よくやっているなというその一言ですよね。可愛いし、素敵な方ですよ。

津田の行きつけのコーヒーショップ店員・沼本(ぬもと)を演じる西野七瀬。

――監督からはクランクイン前に何か言われましたか?

ただひたすら、自由にやってくださいと。

――自由と細かいのどっちが好き?

どっちでもいいですよ、本当にどちらでも。これはね、作品にもよると思うんですよ。自分がやっていることが、あれ正しいのかな、と不安になるのは厳しいことで、言っていただける方が楽になることもありますし、自分で突き進んだほうが良い部分もありますし、難しいですよね。監督によってちがいます。間違っていなかったかなと。まだ監督と話していないから分からないですけど。

――見終わって答え合わせをしたいお客さんに対して一言お願いします。

この映画は、本当に、ピーターパンのような、寓話の世界だと捉えてもらって良いんじゃないかな。監督の意図とは真逆かもしれないですけど、ファンタジーのような、生々しい表現はあるけど、何か心が温まるような、描写が沢山あるわけじゃないですか。だから実はこの物語はファンタジーだったんじゃないかなと、僕なんかは思いますけどね。

――どこを楽しんでもらいたい?

まず富山という場所が良かったので、本当に富山の方たちのための映画ですよ。ご当地映画ですよ(笑)ノンストップでしょ。それこそ。だから絶対に飽きさせない映画を監督が作ってくれたから、これこそ多くの人たちに見てもらえたらなと思います。

――ファンにメッセージをお願いします。

コロナが落ち着いたら、富山にロケ巡り行ってもらって、富山も潤って、お互いハッピーになればいいんじゃないですかね。

小説と現実、そして過去と現在が交錯しながら進む物語。小説(ウソ)か 現実(ホント)か。2021年夏、映画史に残る 「嘘」 をあなたは見破れるか。その謎に挑む、主人公はあなた 。藤原竜也演じる天才作家・津田伸一が仕掛ける謎とは? ぜひ劇場でご確認ください。

『鳩の撃退法』
【出演】
藤原竜也
土屋太鳳/風間俊介 西野七瀬
佐津川愛美 桜井ユキ 柿澤勇人 駿河太郎 浜野謙太
岩松了/村上淳 坂井真紀 濱田岳 ミッキー・カーチス/リリー・フランキー
豊川悦司
原作:佐藤正午「鳩の撃退法」(小学館刊)
監督:タカハタ秀太
脚本 :藤井清美 タカハタ秀太
音楽:堀込高樹(KIRINJI 主題歌 :「爆ぜる心臓」 KIRINJI feat. Awich (ユニバーサル ミュージック)
配給 :松竹
制作 プロダクション: AOI Pro.
制作 協力:松竹撮影所 松竹映像センター
公式HP https://movies.shochiku.co.jp/hatogeki-eiga/
公式 Twitter https://twitter.com/hatogeki_eiga

(C)2021「鳩の撃退法」製作委員会 (C)佐藤正午/小学館

【原作小説】鳩の撃退法 小学館文庫 佐藤 正午 (著)

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