遺言書

人生の最後に、自分の意志を確実に実現してもらうために欠かせないのが「遺言執行者」です。遺言書を作成しても、その内容を実際に執行する人がいなければ、せっかくの遺志が思うように実現されない可能性があります。今回は、遺言執行者の基本的な役割から選び方、費用相場まで、詳しく見ていきましょう。

100歳社会を笑顔で過ごすためのライフプラン、ライフブック(R)を提唱する、独立系ファイナンシャルプランナー藤原未来がわかりやすく解説します。

目次
遺言執行者とは何か? 基本をわかりやすく解説
遺言執行者の主な「やること」一覧とその重要性
誰を遺言執行者にすべきか? 判断のポイント
遺言執行者の報酬・費用の相場とは?
安心のために今できること|専門家との相談を考える
まとめ

遺言執行者とは何か? 基本をわかりやすく解説

遺言執行者について正しく理解することは、円滑な相続手続きの第一歩です。まずは基本的な定義から、相続人との違い、指定しなかった場合のリスクまで、順を追って見ていきましょう。

遺言執行者の定義と法的な位置づけ

遺言執行者とは、遺言書の内容を実現するために必要な手続きを行なう権限を持つ人のことです。民法では「遺言の執行に関する一切の権利義務を有する」と定められており、遺言者の代理人として法的な行為を行なえます。

遺言執行者は、遺言書で指定されるか、家庭裁判所によって選任されます。一度就任すると、相続人であっても遺言執行者の同意なしに遺産を処分することはできなくなります。

遺言執行者と相続人の違い

遺言執行者と相続人の違いは、遺言執行者は遺言を実行する実務担当者であり、相続人は被相続人から財産を承継する人になります。なお、遺言執行者は遺言や家庭裁判所によって指定されますが、相続人は民法によって定められています。

遺言執行者を指定しないとどうなる?

遺言書に執行者の指定がない場合、相続人が共同で遺言の執行を行なうことになります。しかし、相続人全員の合意が必要な場面で意見が分かれると、手続きが停滞してしまいます。

また、複雑な手続きに関する専門知識が不足していると、間違った処理をしてしまうリスクもあります。このような事態を避けるためにも、遺言執行者の指定は重要な検討事項といえるでしょう。

遺言執行者の主な「やること」一覧とその重要性

遺言執行者の業務は多岐にわたり、法的な知識と経験が求められる重要な役割です。具体的にどのような業務を行なうのか、その流れと注意点を詳しく見ていきましょう。

財産の分配・登記・預金の解約など

遺言執行の基本的な流れは、以下のようになります。まず、遺言書の検認手続きを家庭裁判所で行ないます(公正証書遺言以外の場合)。その後、相続人調査を行ない、戸籍謄本等で相続人を確定します。

並行して相続財産の調査も実施し、財産目録を作成します。次に、各相続人に遺言執行者就任の通知を行ない、財産目録を交付します。その後、遺言内容に従って具体的な執行手続きを開始します。

執行できない場合の対応とは?

遺言の内容によっては、執行が困難または不可能な場合があります。例えば、遺言作成後に財産が処分されていた場合や、債務が資産を上回る場合などです。このような場合、遺言執行者は家庭裁判所に相談し、適切な対応方法を検討する必要があります。場合によっては、遺言の一部のみを執行したり、執行者を辞任したりすることもあります。

誰を遺言執行者にすべきか? 判断のポイント

家族や親族を遺言執行者に指定する最大のメリットは、費用を抑えられることです。専門家への報酬が不要で、相続財産から執行費用を差し引く必要がありません。また、故人の意向や家族の事情をよく理解しているため、遺言者の真意に沿った執行が期待できます。

しかし、法的知識不足により手続きでミスを犯すリスクがあります。また、相続人間で利害が対立する場合、身内の執行者では中立性に疑問を持たれることがあります。

司法書士や弁護士に依頼する選択肢

専門家を遺言執行者に指定する最大のメリットは、確実で迅速な執行が期待できることです。司法書士は不動産登記の専門家として、相続登記手続きに精通しています。費用も比較的抑えられる傾向があり、中規模程度の相続には適した選択肢といえます。

弁護士は法律全般の専門家として、複雑な相続案件にも対応できます。相続人間で争いが生じた場合の対応力が高く、高額な相続や複雑な家族関係がある場合に特に有効です。

選任の手続きと変更方法も解説

遺言執行者の選任には、主に2つの方法があります。一つは遺言書での指定、もう一つは家庭裁判所での選任です。執行者の変更については、正当な理由があれば辞任や解任が可能です。新たな執行者が必要になった場合は、家庭裁判所に選任の申立てを行ないます。その場合は業務分担について明記しておくことが重要です。

遺言執行者の報酬・費用の相場とは?

遺言執行者への報酬は、執行の複雑さや財産規模によって大きく異なります。適切な予算設定のために、専門家別の費用相場と決定方法を理解しておくことが重要です。

司法書士に依頼した場合の報酬

司法書士への遺言執行報酬は、一般的に相続財産の0.5%から1.5%程度が相場とされています。「金額ベース」では財産が大きいほど高額になりますが、「割合ベース」では逓減方式を取ることが多いため、財産額が3,000万円以下の場合は1.0%から1.5%、3,000万円を超える場合は0.5%から1.0%程度となることが多いようです。最低報酬額を30万円から50万円に設定している事務所も多く見られます。

弁護士に依頼する際の費用感と契約注意点

弁護士への遺言執行報酬は、司法書士よりもやや高めに設定されることが一般的です。報酬率は相続財産の1.0%から2.0%程度が相場で、最低報酬額は50万円から100万円程度となることが多いようです。

弁護士に依頼する際は、契約書の内容を詳細に確認することが重要です。基本報酬に含まれる業務範囲、追加業務が発生した場合の報酬体系、実費の取扱いなどを明確にしておく必要があります。

報酬の決め方と遺言書での明記方法

遺言執行者の報酬は、遺言書で具体的な報酬額を指定するか、報酬の算定方法を指定する方法があります。遺言書で報酬について何も定めていない場合は、家庭裁判所が相当と認める額を報酬とすることになります。

報酬を遺言書で定める際は、適正な水準に設定することが重要です。また、報酬の支払い時期についても明記しておくことをお勧めします。

安心のために今できること|専門家との相談を考える

遺言執行を確実に行なうためには、事前の準備と適切な専門家選びが重要です。将来のトラブルを避け、円滑な相続を実現するための具体的なポイントを確認しておきましょう。

信頼できる相談先の選び方とチェックポイント

適切な専門家を選ぶためには、相続分野での実績と専門性、コミュニケーションの質、報酬体系の明確性を総合的に評価することが重要です。初回相談時の対応、質問への回答の分かりやすさ、こちらの状況への理解度などを総合的に判断し、信頼関係を築けるかどうかを確認しましょう。

独立系FPという選択肢

一般的に、遺言作成には公証人・弁護士・司法書士の関与が必要となる場合が多く見られます。

一方、独立系FPは現状を整理し、必要な専門家を適切にコーディネートし、相談者にわかりやすく嚙み砕いて説明することが可能です。また、遺言は財産分けだけでなく、相続後の生活や家計にも影響します。FPは資産運用・保険・不動産・税制を横断的に考慮し、包括的なサポートを提供することが可能です。

贈与、生命保険、家族信託など、遺言以外の手段も組み合わせて最適化し、遺言だけでは解決できない問題も、事前に洗い出して対応できます。

まとめ

遺言執行者は、遺言の内容を確実に実現するための重要な役割を担います。適切な遺言執行者を選任することで、相続手続きの円滑化と相続人の負担軽減を図ることができます。

家族・親族に依頼する場合は費用を抑えられる一方、専門知識の不足によるリスクがあります。司法書士や弁護士などの専門家に依頼する場合は、確実性と安心感が得られますが、それに見合った費用が必要になります。

重要なのは、それぞれの事情に応じて最適な選択をすることです。相続財産の規模、相続人間の関係、手続きの複雑さなどを総合的に判断し、必要に応じて専門家のアドバイスを求めることをお勧めします。遺言書作成の際は、遺言執行者の指定も含めて包括的に検討し、将来の相続に備えて十分な準備をしておきましょう。

適切な準備により、大切な財産を確実に次世代に引き継ぐことができるのです。遺言についてはコンサルティングに徹する独立系のファイナンシャルプランナーへの相談をお勧めします。

●構成・編集/京都メディアライン(HP:https://kyotomedialine.com FB:https://www.facebook.com/kyotomedialine/

●取材協力/藤原未来(ふじわらみき)

株式会社SMILELIFE project 代表取締役、1級ファイナンシャルプランニング技能士。2017年9月株式会社SMILELIFE projectを設立。100歳社会の到来を前提とした個人向けトータルライフプランニングサービス「LIFEBOOK®サービス」をスタート。米国モデルをベースとした最先端のFPノウハウとアドバイザートレーニングプログラムを用い、金融・保険商品を販売しないコンサルティングフィーに特化した独立フランチャイズアドバイザー制度を確立することにより、「日本人の新しい働き方、新しい生き方」をプロデュースすることを事業の目的とする。

株式会社SMILELIFE project(https://www.smilelife-project.com

 

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