神社によっては狛犬以外の動物や鳥を飾ることがある
神社の入口に2対で祀(まつ)られる狛犬(こまいぬ)。それは神様を守る役目をもっているが、神社によっては他の動物や鳥を飾ることがある。
例えば盛岡八幡宮(盛岡市八幡町)の鳩。片方が嘴(くちばし)を広げ、片方が閉じ、仏教寺院の仁王像と同じ阿吽(あうん)の関係だ。
一般に鳩は平和の象徴とされる。中国料理で鳩は普通の食材だが、日本人はまず食べることがない。
この鳩は八幡神(はちまんじん)と縁が深い。八幡神は九州の大分県にある宇佐の地に出現した。その使いは金の鷹だったが、鷹は間もなく金の鳩に変身したという。
鷹と鳩、ずいぶん性格の違う鳥の組み合わせだ。この2種類の鳥は、神様がもつ柔和で徳を供えた和御魂(にきみたま)と、猛々しい心の荒御魂(あらみたま)の象徴ともいう。
もともと八幡様は戦いの神だったから鷹がふさわしい。
しかし八幡様は戦いで亡くなった者の霊を慰めてもいる。その儀式を放生会(ほうじょうえ)といい、いまでも大きな八幡系の神社では行なわれている。
鷹の勇壮な姿は魅力十分だが、八幡様はいつまでも鳩と一緒にいていただきたいものだ。
文/田中昭三
京都大学文学部卒。編集者を経てフリーに。日本の伝統文化の取材・執筆にあたる。『サライの「日本庭園」完全ガイド』(小学館)、『入江泰吉と歩く大和路仏像巡礼』(ウエッジ)、『江戸東京の庭園散歩』(JTBパブリッシング)ほか。