大友・四国連合軍は総崩れとなり府内(現在の大分県大分市)へ退却。敵に囲まれる絶望的な状況となり、長宗我部信親は家臣全員とともに22歳の短い生涯を終えるほどでした。

国道57号線沿いにひっそりと残る戸次川古戦場跡

国道57号線沿いにひっそりと残る戸次川古戦場跡

壮絶な最期を遂げた長宗我部信親の墓

壮絶な最期を遂げた長宗我部信親の墓

小田原攻めの功績により小諸城主として大名復帰

仙石秀久は島津軍の挑発に乗って惨敗し、さらに軍監の職務を放棄して自国の讃岐に帰国しました。少年時代から豊臣秀吉に仕えてきた仙石秀久でしたが、さすがに怒りを買い所領を没収。高野山へと追放されてしまいます。

しかし、ここで諦めないのが仙石秀久。天正18年(1590)の小田原攻めの際には、浪人の身でありながら豊臣秀吉軍に加わって奮戦します。この功績によって先の罪を許され、改めて信濃国佐久郡を与えられるとともに小諸城(現在の長野県小諸市)主となるのです。

豊臣秀吉の許しを得て、本丸に桐紋の金箔瓦を使った三層の天守を備えたとされます。天守台に残る野面石積みの石垣が、仙石秀久の時代を物語ります。

昭和35年に再建された小田原城天守。小田原攻めが大名復帰のきっかけとなった

昭和35年に再建された小田原城天守。小田原攻めが大名復帰のきっかけとなった

仙石秀久が手がけた三層の天守が立っていた小諸城天守台跡

仙石秀久が手がけた三層の天守が立っていた小諸城天守台跡

関ヶ原の戦いでは徳川秀忠を支える

豊臣秀吉亡き後は徳川家康に近づきます。慶長5年(1600)の関ヶ原の戦いでは、中山道を進んだ徳川秀忠の東軍が小諸城に入城。この時、西軍についた真田昌幸・幸村(信繁)親子が守る上田城(現在の長野県上田市)を攻めた「第二次上田合戦」では、徳川秀忠軍が苦戦の上に敗退。関ヶ原に遅参してしまいます。

関ヶ原の戦い後も、仙石秀久は小諸城主を継承。在城24年の間に小諸城の大改修を行い、二之丸、黒門、大手門を建てました。また、小諸城の拡張・修築および城下町づくり、戦国争乱により荒廃した農村の復興がはかられるなど、佐久における近世封建制の基礎が築かれた時代と位置付けられています。

領民に親しまれていた仙石秀久のエピソードが残っています。小諸城のある浅間山麓周辺は当時から蕎麦の産地でした。仙石秀久によって、小諸の蕎麦は蕎麦切り(現在の細長い蕎麦)として領民に広められたといわれています。蕎麦切りを通じて、領民とのコミュニケーションをはかり、領民からは親しみを込めて「仙石さん」と呼ばれていたそうです。

初代小諸藩主としての役割を全うし、慶長19年(1614)に死去。江戸より小諸への帰途、武州鴻巣(埼玉県鴻巣市)において亡くなりました。享年64歳。

仙石秀久の時代に築かれた小諸城大手門(国重要文化財)

仙石秀久の時代に築かれた小諸城大手門(国重要文化財)

小諸城に入城した徳川秀忠が腰かけた「憩石」

小諸城に入城した徳川秀忠が腰かけた「憩石」

因縁の上田城を仙石氏が治める

仙石秀久の死後は息子・仙石忠政が小諸藩主を引き継ぎます。しかし元和8年(1622)、因縁の上田城へと入封せよとの命令。仙石忠政は、廃城同然だった上田城の復興を計画し、幕府から城普請の許可を得ます。寛永3年(1626)から工事に着手するものの、寛永5年(1628)に仙石忠政は病死。さらに、重臣の抗争などの事情で上田城の復興は未完成に終わっています。

現在の上田城は、ほとんどが仙石忠政の時代に築かれたものです。未完成とはいえ、わずか2年足らずの間に、埋められていた堀を元通りに掘り返し、本丸は7棟の隅櫓と土塀、東西虎口に2棟の櫓門など体裁を整え、二の丸も掘と土塁、各虎口の石垣などができあがりました。

仙石忠政以降、政俊、政明と3代84年間にわたって仙石氏が上田を治め、溜池の築造・改修などによる農業振興と上田縞(紬)などの産業育成に力を注ぎました。

仙石忠政によって上田城の本丸・二の丸が改修された

仙石忠政によって上田城の本丸・二の丸が改修された

織田信長に見いだされ、豊臣秀吉のもとで出世を重ねた仙石秀久。九州攻めでは大失態を犯したにもかかわらず、功績によって再び大名に復帰し、豊臣秀吉のみならず、徳川家康・秀忠親子の信頼も得るに至りました。皆から好かれ、領民からも「仙石さん」と親しまれた魅力の源とは一体何だったのでしょうか?

※歴史的事実は、各自治体が発信している情報(公式ホームページ等)を参照しています。

写真・文/藪内成基
奈良県出身。国内・海外で年間100以上の城を訪ね、「城と旅」をテーマに執筆・撮影。主に「城びと」(東北新社)へ記事を寄稿。異業種とコラボし、城を楽しむ体験プログラムを実施している。

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