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文/鈴木拓也
認知症になるのは不幸なことではない!? いたずらに恐れず認知症と向き合うコツ

■認知症を恐れる“「ボケたくない」という病”

国立長寿医療センターによる20~70代の男女を対象とした調査によれば、「高齢者になるのは不安」と回答した人は8割以上。その理由として、「寝たきりや認知症になって介護が必要になること」が筆頭に挙がる。

まだ若い世代ですら恐れる認知症だが、今の医学では完璧な予防も根治もできないのが現実。そのため、認知症を恐れるあまり、まだ元気なのに「認知症にかかったらどうしよう」と不安になる“「ボケたくない」という病”にかかっている人が増えている。そう指摘するのは、老年精神科医の和田秀樹さんだ。

■認知症はそんなに不幸なことではない!?

こんな不安症にかかっている人たちに向け、和田さんは、著書『知識ゼロからの認知症入門 「ボケたくない」という病』のなかで、「認知症になることは、実はそんなに不幸なことではありません」と、驚くようなことを言う。

その理由として一つには、症状には個人差があることを挙げる。例えば、生前は「それほどボケたように見えなかった人」が、死後解剖すると明らかにアルツハイマー型認知症の所見が出ている場合があること。また、徘徊といった異常行動が出るのは、認知症患者の1割程度に過ぎないとも。さらに、そもそも認知症にかかることが即、すべての能力が失われることを意味しないという。

アルツハイマー型では、一般的にまず記憶力が落ちていき、その後に少しずつ認知機能も低下していくのは事実です。しかし、アルツハイマーがかなり進行した人でも多くの残存機能があるくらいですから、軽度のうちは、残存機能をうまく使っていくことで、それまでと変わらない生活を送ることも、多くの場合、不可能ではありません。実際、軽度であれば、とくに生活に困ることはないという人も大勢います(本書022pより)

人生100年時代といわれる今、年をとれば認知症は誰にでも起こり得る病気。多少は生活能力が落ちても、「少しくらい人に迷惑をかけてもいい」くらいの心構えでいれば、不安に苛まれる必要もない。和田さんはシニア世代に、こうエールを送る。

■認知症の予防対策にカレーを食べよう

とはいうものの、やはりボケずに長生きできれば本望だろう。和田さんによれば、100%の予防は無理でも、医学的に正しくボケを遅らせる対策はあるそうで、本書で1章をもうけて22種類の対策を論じている。

その1つが「中高年ほどカレーを食べるべし」。

カレーのスパイスの1つ、ターメリック(ウコン)に含まれるクルクミンという成分には、アルツハイマー型認知症の原因となるアミロイドβをたまりにくくする作用があるからだという。インド人がアメリカ人に比べて、アルツハイマー型認知症の発症率が1/4程度と低いのは、カレーを常食としているからだとか。アミロイドβの蓄積は50代から始まるので、早めに意識してターメリックを摂るようにしたい。味噌汁やピラフに少量を混ぜるのもOKだが、摂りすぎは肝障害を招くリスクがあるので注意。

このほか、肉・卵・大豆製品を積極的に食べ、糖質は控え気味にし、睡眠不足に陥らないように心がけるといった、脳の健康に好ましい生活習慣が指南されている。

ただし、とにかくストイックに生きればいいというものでもなく、「太り気味」程度なら、無理にダイエットを頑張る必要はないそうだ。「あれもダメ」「これもダメ」だと、かえって脳の健やかさを損なってしまうからだ。

■自分の親が認知症にかかったら?

本書は、認知症を恐れる中高年以降の世代だけでなく、高齢の親が認知症になったときの対策についても触れられている。例えば、親が認知症で介護が必要と診断されてしまったら、子として何をすべきか?

和田さんは、「まずは要介護者認定を申請」するよう説く。この申請先は、親の住む地区の役所となる。申請者は、親本人でもよいが、家族も可能。子が遠方に住んでいる場合、地域包括支援センターに申請を代行してもらうこともできる。

注意したいのはその後。申請が受理されると、役所の担当者が自宅(または入院先)にやってきて、認定のための聞き取り調査が行われる。調査では、認知機能や社会生活への適応など聞かれるが、本人は「遠慮やプライドから、何でも『できる』『問題ない』と答えてしまう傾向」があることだ。そのせいで、本来は「要介護3」なのに「要介護2」などと認定され、症状に見合ったサービスが受けられなくなるリスクが生じてしまう。

これを防ぐため、家族の立ち合いが重要になってくる。そして、調査員には家族の口から、きちんと真実を伝える。親本人のプライドに配慮して、別室で話すのはかまわないので。介護の良好なスタートは、正しい認定から始まることを肝に銘じておこう。

*  *  *

本書は、誰もが認知症にかかってもおかしくない長寿社会の現実から目をそらしたり、やみくもに戦うのではなく、正面から向き合い、受け入れるべきところは受け入れることの大切さを説いた良書だ。健康なうちから認知症のことで頭がいっぱいになっている人には、ぜひ一読をすすめたい。

【今日の健康に良い1冊】
『知識ゼロからの認知症入門 「ボケたくない」という病』
https://www.sekaibunka.com/book/exec/cs/20401.html

(和田秀樹著、本体1200円+税、世界文化社)
知識ゼロからの認知症入門 「ボケたくない」という病

文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は散歩で、関西の神社仏閣を巡り歩いたり、南国の海辺をひたすら散策するなど、方々に出没している。

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