文/印南敦史

糖質量のコントロールが食事の柱|『管理栄養士が伝える 長生き食事術』

明日の健康を手に入れたい。未来の病気のリスクを減らしたい。そう思うなら、真っ先に食事の内容を見直してみるべき。食事こそが健康なカラダの土台を作っているからです。(本書「はじめに」より引用)

こう主張するのは、『管理栄養士が伝える 長生き食事術 人生100年時代の「新・栄養学」入門』(麻生れいみ 著、光文社新書)の著者。6000人以上の食生活改善指導歴を持つという管理栄養士である。

現代においては(コンビニまで歩いて行けるような環境で暮らしていればなおさら)、「食べたものが健康の土台である」という当たり前の事実をつい忘れてしまいがちだ。

ましてや新型コロナウイルスの勢いが止まらない状況下においては、どうしてもストレスがたまるものでもある。

そんなこともあって「たまにはいいか」と気が緩み、普段なら避けていた新製品のカップ麺や、いかにもカロリーが高そうな弁当をふらっとレジに運んでしまったりすることもあるかもしれない。

しかし、やはりそれは危険だ。

日本人の死因は1位ががん、2位が心臓病、4位が脳卒中だと言われるが、その背景にはいずれも食生活の乱れがある。もちろん、肥満、糖尿病、認知症、アルツハイマー病といった生活習慣病の背後にあるのも“間違った食事”だ。

著者によれば、とくに注意したいのは、糖質過多による「血糖値スパイク」。これは、本来なら安定しているべき血糖値が乱高下する現象だ。

糖質をセーブして血糖値スパイクを抑えるだけでも、体調は良くなりますし、死を招く怖い病気のリスクは大幅に減らせます。
そのために必要なのが、糖質制限(糖質オフ)。そこで本書では、血糖値スパイクを避けるための糖質制限を軸に話を進めていきます。(本書「はじめに」より引用)

生涯現役でいるための食事の柱となるのは、糖質量のコントロール。日本人は平均すると1日240gの糖質を摂っているので、それを減らしていくことが大切だということ。コツは、「導入期」→「減量期」→「維持期」という3つのステップだ。

ステップ1は、糖質を極力ゼロに近づける「導入期」だ。まず1週間、いけそうならさらに1週間にわたり、主食、甘いお菓子、甘い果物、イモ類といった糖質を極力断つ期間である。

いかにも難しそうではあるが、なにしろ期間限定。やってみると意外と簡単に糖質は断てるそうだ。なお、いきなり“糖質極力ゼロ”にするよう指導していることには理由がある。

ダイエットのような食事改善は、初めのうちほどモチベーション(やる気)が高いものである。だが、食事を変えても1日や2日で目に見える変化が出るものでもない。つまりはその“時差”に気づかないと、「効果がない」と誤解してドロップアウトする恐れがあるのだ。

ですから、あえて穏やかに糖質制限を始めるのではなく、初めにガツンと糖質を断ってもらいます。それによって血糖値スパイクが避けられて、血糖値が安定してくると、食後の眠気やイライラもなくなり、頭がクリアになります。疲れも抜けやすく、朝からアクティブに動けるようになってきます。(本書48ページより引用)

しかし、いくらステップ1が効果的だといっても、糖質を断ち続けるのは楽ではない。また、がんばりすぎるとストレスになり、糖質オフの食生活の波に乗り切れなくなるかもしれない。

そこでステップ1は長くても2週間で終え、ステップ2の減量期へ移行すべきだというのだ。ステップ2は、糖質の摂取を1食20g以下、3食で1日60g以下とするもの。もちろん、3食以外の間食は禁物だ。なお、20gの糖質量の目安は次のとおり。

【主食の糖質20gの目安】
・ご飯(精白米) 55g(お茶碗に3分の1強)
・食パン 45g(8枚切り1枚)
・フランスパン 37g(長さ5㎝)
・パスタ(茹で) 75g(1皿の3分の1弱)
・うどん(茹で) 100g(1人前の2分の1弱)
・そば(茹で) 80g(1人前の3分の1)
・中華麺(蒸し) 55g(1人前の5分の2弱)
(本書50~51ページより引用)

糖質を1食あたり20g以下に抑えると、血糖値スパイクはほとんど起こらないという。体脂肪がメインのエネルギーとして使われるため、導入期に続いて体重と体脂肪率が右肩下がりでへっていくのだ。

必要な栄養とカロリーを補うため、糖質を減らした分、肉や魚などからのたんぱく質と脂質の摂取を増やし、野菜、海藻類、キノコ類を過不足なく食べるようにするといい。

ステップ2の3か月間で、多くの人はその人にとっての理想的な体重(理想体重、標準体重)に落ち着くので、それ以降はステップ3の維持期に入る。1食あたり20~40gの糖質を摂り、間食も糖質10g以下なら食べてもOK。糖質の摂取は1日70~130g以下となるそうだ。

仮に主食から30g、それ以外から10gの糖質を摂るなら、次の量が目安となる。

【主食の糖質30gの目安】
・ご飯(精白米) 82g(子ども用お茶碗1杯弱)
・食パン 67g(6枚切り1枚強)
・フランスパン 55g(長さ8㎝弱)
・パスタ(茹で) 112g(1皿の2分の1強)
・うどん(茹で) 150g(1人前の3分の2弱)
・そば(茹で) 120g(1人前の2分の1)
・中華麺(蒸し) 82g(1人前の2分の1強)
(本書52~53ページより引用)

なお、本書で紹介されている糖質制限は著者自身が実践している方法であり、働き盛り世代に対する食事指導の現場で活用し、確実な効果を上げているものだという。参考にしてみてはいかがだろうか?

『管理栄養士が伝える 長生き食事術 人生100年時代の「新・栄養学」入門』

麻生れいみ著
光文社新書
本体780円+税
2020年4月発売

管理栄養士が伝える 長生き食事術 人生100年時代の「新・栄養学」入門文/印南敦史
作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)などがある。新刊は『書評の仕事』 (ワニブックスPLUS新書)。
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