文/印南敦史
・老化は一種の病気にすぎない
・だから、治療も予防もできる
・当然、「老けてしまった」と諦めなくてもいい
(本書「プロローグ 見た目も中身も『マイナス10歳の体』へ」より引用)
抗加齢医学研究の第一人者である『最新医学が教える 最強のアンチエイジング』(米井嘉一 著、日本実業出版社)の著者が、まず最初に伝えておきたい大切なことは、この3点なのだそうだ。
もちろん人間である以上、老化を避けることはできない。だが老化はひとくくりにできるものではなく、人によって「正常な老化」と「病的な部分が加わった老化(老化状態が増すかたち)に分けられるというのだ。
いうまでもなく「正常な老化」とは、1年ごとに積み重ねられていく体の加齢現象。ところがそこに、食べすぎ、飲みすぎ、タバコ、運動不足などを原因とするメタボや高血圧などの病的要因が加わると、「顕著な老化現象」が表れてくるということだ。
だが、それは終わりを意味するわけではない。なぜなら、その部分は「病気」だからだ。「正常な老化」ではなく、病気がもとでストンと落ちてしまった部分(老けた部分)である以上、もとの状態に戻すことは可能だというわけである。
そして、そのために必要なのは、いうまでもなく「体によい生活」を続けていくこと。それさえできれば、元気な人のレベルに追いつくことができるのだ。
ちなみにここで著者が紹介していることは、大きく分けて3点ある。まず1点目は、「老化の原因は人によって違うため、それを見つけて治していくことが大事」だという考え。つまりは、自分自身の老化の原因を探り当てることことがスタートラインになるのだ。
当たり前のように思えるかもしれないが、現実的にそうしようという思いにはなかなか至るものではない。また、原因を突き止める機会も少ないのではないだろうか。そういう意味では、本書を利用すれば、そうした原点に立ち返ることができるといえそうだ。
2点目は、「エビデンスに基づいて自分の弱点を見つけ、それを治す」こと。そのためには、自分自身に内在する危険因子を探る必要があるという。
ただし、ここには重要なポイントが隠されているそうだ。必ずしも、因子がひとつだとは限らないということ。もちろんひとつだけであればいいのだが、ストレス対策、糖化・酸化対策、腸内細菌の対策など、あれもこれもと出てくると、すべてに対応することが難しくなってくる。
そのため収拾がつかなくなり、「もう、全部や~めた」ということになってしまいがちだというのだ。人間はすべてをこなせるわけではないだけに、ひとつ、あるいはふたつに絞って対応しないと効果が上がらないわけである。
そして3点目は、「まず、自分の最大の弱点を治す」ということ。これこそが、老化を防ぐ一番効率的な方法だというのだ。
こうした“老化は病気”だという考え方を軸として、本書では老化を止めるための方法が紹介されているのである。
少し前置きが長くなったが、今回はそのなかから「食べ方」に注目し、ひとつのトピックをご紹介することにしよう。「かけそば」ではなく「月見そば」を食べれば、GI値は下がるというのである。
GI値とは、食品が体内で糖に変わって、血糖値が上昇するスピードを計ったもの。GI値が低い食品は血糖値が急激に上がることを抑制し、GI値の高い食品は血糖値を急に上げてしまうというのだ。
基準値のブドウ糖(グルコース)を50g摂ったときの面積(血糖値の上昇曲線面積)を100とした、一般的な区分は次のとおり。
GI値が55以下……低GI
GI値が56〜69……中GI
GI値が70以上……高GI
(本書107ページより引用)
主食として、ごはんとパスタのGI値を比較した場合、パスタのほうがGI値は低い。ごはん(精白米)は84、スパゲティは65だからだ。とはいえ、「血糖値を下げるためにパスタを食べる」というのはナンセンス。「ごはんだけをもくもくと食べる」とか、「スパゲティの麺だけを食べる」というような食べ方をすることはないからである。
主食にごはんなどの炭水化物を摂っても、副菜としてサラダやおひたしを食べ、豆腐や肉を食べ、さらに味噌汁を飲む。そうすることでGI値は全体として下がっていきます。(本書112ページより引用)
しかし、「かけそば」「かけうどん」の場合には、そば、うどんだけしか食べないことになってしまう。すると必然的に、GI値は上がってしまうわけだ。そこで、卵をのせて月見そばや月見うどんにすれば、それだけでGI値を下げられるということだ。
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このように、とっつきやすい話題が盛り込まれているだけに、無理なく読み進めることができるはず。「老いはどうにもできないんだから」と、なにもしないうちから諦めるのではなく、まずは本書を手にとってみてはいかがだろう?
『最新医学が教える 最強のアンチエイジング』
米井嘉一著
日本実業出版社
1,620円(税込)
発行年2019年3月
文/印南敦史
作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』などがある。新刊は『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)。