文/印南敦史
スーパーやコンビニではさまざまな食品が売られているが、それらはすべて2種類の原材料で製造されている。
ひとつは、米、大豆、小麦粉、野菜類、果物類、砂糖、塩、しょうゆなどの食品原料。これらは人間の長い食の歴史によって、安全だと判断されたもの。つまり、安心して食べられるものだ。
そして、もうひとつが食品添加物。ただし『OK食品 NG食品 どちらを食べますか?』(渡辺雄二 著、WAVE出版)の著者によれば、食品添加物は食品原料と違って安全性が確認されているものではない。安全かどうか、よくわからないまま使われている状況なのだ。
しかも、これらの添加物について、その使用を許可した厚生労働省は「安全性に問題はない」と言っているが、添加物の安全性は、すべて動物実験によって調べられているにすぎない。
つまり添加物をエサに混ぜてネズミやイヌなどに食べさせたり、直接投与したりして、その影響を調べているだけ。人間では調べられていないということだ。
とはいえ動物実験でわかるのは、「がんができるか」「腎臓や肝臓などの臓器に障害が出るか」「血液に異常が現れるか」「体重が減るか」など、かなりはっきりとわかる症状のみ。
人間が添加物を摂取した際の微妙な影響、すなわち「舌や歯ぐきの刺激感」「胃が張ったり、痛んだり、もたれたりなどの胃部不快感」「下腹の鈍痛」「アレルギー」など、自分から訴えないかぎり他人には伝わりにくい症状は、動物実験で確かめられるはずもないのだ。
また当然のことながら、人間へのそうした微妙な影響は、複数の添加物が使われたときに現れやすいものでもある。複数の添加物の刺激を、胃や腸などの粘膜が受けることになるからだ。
だが動物実験では、複数の添加物を与える実験はまったくと言っていいほど行われていないというのだから驚く。1品目についてのみ調べられているだけで、複数の添加物の影響についてはまったくわかっていないということだ。
ちなみにカップラーメンやカップ焼きそばなどには、15種類以上の添加物が使用されている。だとすれば、それらが一度に胃のなかに入ったときの影響を調べるべきだが、それがまったく行われていないのだ。
さらに問題なのは、動物実験で一定の毒性が認められたにもかかわらず、添加物として使用が認められているものが少なくないということ。
たとえばアメリカにおいては動物実験の結果、「赤色2号(赤2)」という合成着色料は「発がん性の疑いが強い」という理由で使用が禁止された。ところが日本では現在も使用が認められ、業務用かき氷シロップなどに使われている。
もちろん他にも、動物実験で発がん性が認められたり、その疑いのある添加物は数多く使われている。
また動物実験で催奇形性(胎児に障害をもたらす毒性)が認められたり、血液に異常を起こしたり、腎臓や肝臓などに障害をもたらす結果が得られているにも関わらず、使用が認められているものも少なくないのだそうだ。
とくに最近、盛んに使われている添加物で要注意のものがあります。それは、ダイエット食品・飲料に使われている合成甘味料のスクラロース、アセスルファムK(カリウム)、アスパルテームです。
スクラロースは、猛毒のダイオキシンや農薬のDDTと同じく、有機塩素化合物の一種であり、ネズミを使った実験では免疫力を低下させることが示唆されています。
また、アセスルファムKは、イヌを使った実験で肝臓に対するダメージや免疫力の低下を示唆する結果が得られています。アスパルテームは、ネズミを使った実験で白血病やリンパ腫を起こすことがわかっています。(本書「はじめに」より引用)
にもかかわらず、これらの合成甘味料はカレールゥ、ベーコン、梅干、スナック菓子、炭酸飲料など多くの食品に使われているというのだから恐ろしい。
なぜ、こんな状況になっているかというと、厚生労働省が、消費者の健康よりも、業者の都合を優先させているからです。それらの添加物の使用を禁止すると、日本やアメリカなどの企業の中では、営業活動が困難になってしまうところが出てきます。それを回避するため、使用を認め続けているのです。(本書「はじめに」より引用)
なお、こうした状況は、添加物がさかんに使われるようになった1950年代以降、ずっと続いているのだという。食の安全が叫ばれるなか、いまだに60年以上前の“常識”が守られているという矛盾だ。
だからこそ消費者は、自分や家族の健康、生命を守るために防衛策をとっていかなければならないということになる。いうまでもなく、発がん性やその疑いがあったり、肝臓や腎臓などにダメージを与えたり、免疫力を低下させるなど危険性の高い添加物を拒否することだ。
そこで、本書が役に立つわけだ。90ジャンルの食品について、危険性の高い添加物を含む製品を「×」(NG食品)、添加物を含まない、または安全性の高い添加物を少しだけ含む製品を「○」、その中間に位置する製品を「△」と危険度ごとに判定し、その根拠も解説しているのである。
製品写真もオールカラーで表示されているため、スーパーやコンビニでの買い物時にも役立つことは確実。自分の身を自分で守るため、ぜひ参考にしたい。
『OK食品 NG食品 どちらを食べますか?』
渡辺雄二 著
WAVE出版
定価 本体 1,500円+税
2019年4月刊行
文/印南敦史
作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』などがある。新刊は『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)。