文/中村康宏
「実は怖い「体の糖化」老化を早め病を招く糖化物質《AGEs》蓄積を防ぐには【予防医療の最前線】」では老化物質である「AGE(エージーイー)」について解説しました。この老化物質は食事と密接に関係してるのはご存知の通りです。しかし、近年はAGEはカラダにいい物質とも言われるようになりました。どちらが正しいのでしょう? AGEの知見をアップデートし、AGEと上手に付き合う「アンチAGE食事術」を解説します。
■「AGE」は負の連鎖の始まり
AGEを作る「糖化反応」は体外でも体内でも起こります。カラダの中では、糖を利用してエネルギーを産生する反応によってAGEの形成と蓄積が起こります。一方、AGEは体外から摂取する食品にも含まれます。例えば、焼く、揚げるなど食品の調理や保存の過程においてAGEは作られ、コーヒーや醤油、赤ワイン、お味噌など「茶色い食品」にはAGEが多く含まれていることが知られています(*1)。
AGEの産生・蓄積には自然な年齢に伴う変化のほか、高血糖の持続、炎症や酸化ストレス、虚血(動脈硬化など)によって進んでいくことが知られています。これらは生活習慣病の原因となるものでもあり、悪い生活習慣でAGEの蓄積が促進され、それがまた炎症反応のスイッチである“RAGE(後述)”を介してAGEをさらに形成するという「負のサイクル」を加速させます。
■ AGEは老化現象の元凶
AGEは老化物質として知られています。AGEは細胞表面の“AGE受容体(RAGE)”で認識され、それによって酸化ストレスや炎症反応を引き起こします。すると、コラーゲンや筋肉などのたんぱく質の質を低下させ、血管の硬化、骨質の劣化などを招き、体内の老化が進みます。これは心臓病やがんなど、病気の進行に関与します。また、コラーゲンの変性によるシワやたるみなどの外見上の老化も引き起こします。
■でも、AGEは“善”!? ポイントはカラダの外と内の違い!
AGEが老化の原因であるということが知られるようになりましたが、「AGEは悪!」というレッテルが貼られています。しかし、近年は「AGEは善」と結論づける報告が増えています。例えば、AGEの一つである「メラノイジン」は強力な抗酸化物質で、脂肪肝を抑制したり、腸から脂肪の吸収を抑制したり、腸内環境を整える「カラダにいい存在」として知られています(*2)。
つまり、体内に蓄積したAGEは老化現象を引き起こしますが、カラダにまだ貯まっていないAGEはカラダにいい物質でもあるのです! そんなAGEと上手に付き合う7つの食事術をご紹介します。
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