日本人の約8割が「疲れている」と回答するなど、疲労は現代的な“国民病”と言われます。仕事や人間関係のストレス、運動や睡眠の不足、スマートフォンへの依存など、様々な原因が指摘されますが、医学的に間違った「食事のあり方」を問題視するのが牧田善二医師です。新著『疲れない体をつくるための最高の食事術』が話題の牧田医師が解説します。

解説 牧田善二(まきたぜんじ)さん(糖尿病・アンチエイジング専門医)

昭和26年、北海道生まれ。北海道大学医学部卒業。久留米大学医学部教授などを経て、平成15年、糖尿病などの生活習慣病、肥満治療のための「AGE牧田クリニック」を開業。

いかに腎臓を長く健全にもたせるか

心臓と腎臓の機能は「心腎連関」

沈黙の臓器である腎臓は、慢性疲労はもちろん、さまざまな病気と深い関わりを持っています。

とくに、慢性腎臓病と心血管障害はリンクしており、腎臓の機能が落ちると心不全が起きやすく、心臓の機能が落ちると腎不全が起きやすいことがわかっています。このため、最近では「心腎連関」(心不全と腎不全の複雑な病態の絡み)、「心腎症候群」という言葉も使われるようになっています。ここで、図9を見てください。

高血圧や糖尿病というありがちな病気、しかも放置されがちな病気に罹ると、腎臓を弱らせて慢性腎臓病に移行しやすくなります。

慢性腎臓病になると心腎連関を起こし、心筋梗塞に罹りやすくなるだけでなく、脳卒中やがんのリスクも上がります。

とくに、慢性腎臓病によって大腸がんが増えることがわかっています。

大腸がんは、日本人女性のがんによる死亡原因の1位です。罹患率は乳がんが1位ですが、死因となると大腸がんが圧倒的に多いのです。

このあたりも、慢性腎臓病の激増と無関係ではないでしょう。

もともと腎臓は、加齢と共にその働きは少しずつ落ちていきます。それでも、人生70年くらいの時代には、なんとかなりました。

しかし、100歳まで生きるとなれば、いかに腎臓を「長く健全にもたせるか」が、非常に重要な課題となります。

これからは、みなさんの慢性疲労について、「疲れが溜まっているな」で終わらせず、腎臓にも注意をはらってください。

さらに、食事にはなお一層気を配っていきましょう。

疲れない食事は、腎臓を労る食事でもあるのです。

***

世界最新の医学的データと20年の臨床経験から考案『疲れない体をつくる最高の食事術』

現代人の疲れは過労やストレスではなく、「食」にこそ大きな原因がある。誤った知識に基づく食事は慢性疲労ばかりか、肥満や老化、病気をも呼び込む。健康長寿にも繋がる「ミラクルフード」の数々を、最新医学データや臨床経験を交えながら、具体的かつ平易に解説している。

『疲れない体をつくる最高の食事術』
牧田善二/著 四六判208ページ 小学館刊 1650円(税込)

 

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