日本人の約8割が「疲れている」と回答するなど、疲労は現代的な“国民病”と言われます。仕事や人間関係のストレス、運動や睡眠の不足、スマートフォンへの依存など、様々な原因が指摘されますが、医学的に間違った「食事のあり方」を問題視するのが牧田善二医師です。新著『疲れない体をつくるための最高の食事術』が話題の牧田医師が解説します。
解説 牧田善二(まきたぜんじ)さん(糖尿病・アンチエイジング専門医)
高血圧を軽視してはいけない
塩分過多の食事で腎臓に負担
糖尿病の合併症以外で、腎臓を悪くする最大の因子は「高血圧」です。
高血圧と慢性腎臓病に関する研究は世界中でなされており、血圧が高くなれば腎臓が悪くなることがはっきりと証明されています。しかも、「ちょっと高め」くらいの軽度の高血圧でも、確実に悪影響を及ぼします。
ところが、高血圧も糖尿病と同様、健康診断で指摘されても多くの人が放置しているのが現実です。
高血圧症の診断基準として、上の血圧(収縮期血圧)が150あれば要注意です。しかし、それくらいではつらい症状も出ません。
ですから、「病院に行けば薬を飲めと言われるだけだ」「降圧剤は一度飲み始めたらやめられないと聞いた」などと理由をつけて治療を受けようとしないのです。
それでも、内心は気にしている人もいて、私もときどき「高血圧を放置していると脳の血管が切れたりしますか」などと聞かれます。
しかし、高血圧で心配すべきはそこではありません。上の血圧が150くらいあっても、そう簡単に血管は切れません。
でも、腎臓はやられます。しかも、「ちょっと高め」くらいでやられます。
2016年に中国の北京大学で、過去に世界中で行われた血圧に関する7つの研究結果を解析する試みがなされました。
それによると、上の血圧が120〜139、下の血圧が80〜90という高値レベルで、慢性腎臓病の発症リスクが1.28倍に上がったそうです。
ほかの研究機関からも、同様の報告がたくさん出ています。
すでに血圧が「高い」人はもちろん、「高め」の人も、じわじわと腎臓の機能が弱くなっていきます。そして、腎臓の働きが悪くなれば、慢性疲労から抜け出せなくなるだけでなく、がん、心筋梗塞、脳卒中などあらゆる病気に罹りやすくなり、かつ、その進行・悪化を早めます。
ですから、高血圧を軽視することなく、きちんと対処しましょう。
高血圧を呼ぶ原因は、ストレスや運動不足などもありますが、なんといっても食事内容が一番です。
とくに、塩分過多の食事は間違いなく血圧を上げます。
加工食品の塩分に気をつける
血圧とは、心臓から送り出された血液が動脈の壁に与える圧力のことです。
塩分の多い食事を摂れば、ナトリウムが腎臓の濾過処理能力を超えます。そして、ナトリウムを尿に出せなくなり、血中のナトリウム濃度が上がります。
すると、体はナトリウム濃度を調節するために、血液中に水を引き込みます。塩分の多いものを食べると喉が渇くのはそのためです。
水を引き込むことで血管を流れる血液量が増えれば、血管に与える圧力が上がる、つまり血圧が上がるのです。
高血圧になると、腎臓をダメにするだけでなく、体がボロボロになります。
血液を送り出すために心筋は強い収縮を繰り返さねばならず、それだけでも疲れやすくなります。
血管には絶えず強いストレスがかかり、動脈硬化が進みます。
とくに、細い血管が多い腎臓や脳は、しっかり栄養が行き渡らなくなり、大きな影響を受けます。
なお、塩分過多の食事は、血圧を上げる以前の問題として、過酷な濾過処理を強いることで腎臓にダメージを与えます。
コンビニやスーパーの弁当や総菜、加工食品などには、かなりの塩分が含まれていることがあります。
よほど気をつけないと、みなさんの大切な腎臓を守ることはできません。
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世界最新の医学的データと20年の臨床経験から考案『疲れない体をつくる最高の食事術』
現代人の疲れは過労やストレスではなく、「食」にこそ大きな原因がある。誤った知識に基づく食事は慢性疲労ばかりか、肥満や老化、病気をも呼び込む。健康長寿にも繋がる「ミラクルフード」の数々を、最新医学データや臨床経験を交えながら、具体的かつ平易に解説している。