文/鈴木拓也

少し前の総務省の調査になるが、約9百万人の登山人口のうち、50歳以上の人が占める割合が約6割。65歳以上の高齢者に限っても約3割となっていて、驚いた記憶がある。

それだけに、山の遭難者数にシニア世代が占める割合も多い。若い頃の体力を過信して、気持ちだけ若いまま山を登ろうとする人が少なくないのかもしれない。

しかし、ちょっとした知識とコツを把握しておくだけで、山でアクシデントに遭うリスクは、劇的に減らせる。今回は、特に初心者が知っておきたい基本知識を、『疲れない山歩きの技術 自分に合う歩き方探し 徹底サポートBOOK』より紹介したい。

山に適した歩き方がある

ふだんの街歩きと山歩きとでは、歩き方からして変わる。
山の段差・傾斜を上り下りするときは、「静荷重静移動法」と呼ばれる歩き方をする。これは、一歩踏み出したときは、親指の付け根(母指球)で着地するイメージで。その直後、重心軸の真上に荷重を移したら真っ直ぐ立ち上がる。そして、軸足を残したまま、後ろの足の荷重を抜く。これには、次のメリットがあるという。

膝への負担を軽減し重心のブレが減ることでスリップなどによる転倒など、歩行でおきるケガを防ぎます。この歩き方は、特に登りのあらゆるシチュエーションで活用することができます。(本書より)

前足親指の母指球で着地するイメージで(本書より)

下りも同様。斜度があるところでは、スリップを恐れて腰を引いてしまいがち。しかしこれでは、重心が荷重をかけている足のかかとに乗って、支えきれずにかえってスリップするリスクが生じる。ここは、怖くても腰を引かずに踏み込むのが肝心。危なそうな箇所では、つま先から下ろして地面の状況を探り、荷重を母指球に乗せるように心がける。

靴は必ず試し履きを

アウトドアブーム以降、各メーカーが競うように登山関連のギアを出しており、何を購入していいか迷うほど。だが、最初に検討すべきは、やはり登山靴だ。
かつて登山靴といえば、ハイカットのいかにも「山に登ります」な外観が主流だった。しかし最近は、様々なスタイルの山歩きを楽しむ登山者が増えたこともあり、販売店に並ぶ登山靴もバリエーション豊か。なかでも、ローカットの靴を使う人が増えてきているそうだ。

ローカットの大きな特徴は、足首の可動域が広く、下りで静荷重静移動法を意識するとき、足首への干渉がなく歩きやすいこと。ただし、ソールがやわらかいものが多く、重いザックを背負う場合は足の筋肉と筋持久力が必要です。(本書より)

どんな種類の靴が自分の山歩きに適切かを判断するだけでなく、販売店では実際に試し履きすることが重要。店には普段使う登山用の靴下を履いて行き、斜度のある場所や、フラットな場所を歩いて、靴の中の足ずれが起きないかを確認。サイズは、つま先が指1本余るくらいがベスト。これだと、下りでつま先に詰まっても、足の爪が当たることがない。

つま先が指1本余るくらいになるかを確認(本書より)

総合的な運動能力を鍛える

たとえパーフェクトなギアを揃えても、やはり自分の身体が一番重要な資本となる。

本書監修者の上級登山インストラクター・栗山祐哉さんは、より強い登山者になる方法として、「もっと重たいものを持って山に登り、体を鍛える」というような考え方では、「遭難者予備軍」になるだけだと忠告している。日頃のトレーニングは大事だが、それはひたすらスクワットをやり込むというような、特定の部位ばかり鍛えるというものではない。登山は、意外と総合的な運動能力が必要となり、それに応じたトレーニングをすることになる。

その1つが「LSDトレーニング」。LSDとは、「Long Slow Distance(ロング・スロー・ディスタンス)」のことで、最低1時間半かけてゆっくりと走るという有酸素運動の一種。まったくきつい運動ではないが、「毛細血管の隅々に酸素を運ぶ能力が高まり、ミトコンドリアの数が増え、長時間の運動のため疲労耐性が高まる」という効果があるそうだ。頻度は、週に3回のトレーニングで、うち1回をLSDにするのが目安。

これとは別に、脚力と心肺を同時に鍛えるエクササイズの1つに取り上げられているのが、バックステップランジ。静荷重静移動法に必要な筋力の強化などを目的とし、より実践的にザックを抱えて行う。やり方は以下のとおり。

1.ザックに自分にとって負荷になる程度の重量のものを入れて抱える。足を閉じ頭を一番高い位置まで伸ばして立つ。

2. 片足を後ろにしてステップし、前足のももが床と水平となる高さまでしゃがむ。前後の足で地面を踏みスタートの位置まで戻る。このとき、体重の8割を前足に加重する。


3.スタートの位置に戻ったら、連続して左右交互に一定のテンポで繰り返し行う。

* * *

登山初心者は、フィジカル面の準備は、どうしても自己流、あるいはぶっつけ本番となりやすい。しかし、こうしたベーシックな知識をあらかじめ備えておくだけで、本番の疲労度や事故のリスクがずいぶん違ってくる。長く山歩きを楽しみたい方にとって、本書は参考になるところが多いはずだ。

【今日の健康に良い1冊】
『疲れない山歩きの技術 自分に合う歩き方探し 徹底サポートBOOK』


栗山祐哉監修、坂主拓國協力
メイツユニバーサルコンテンツ

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文/鈴木拓也 老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は神社仏閣・秘境巡りで、撮った映像をYouTube(Mystical Places in Japan)に掲載している。

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