文/中村康宏、内本菜穂
世界の三代珍味のひとつとして有名なフォアグラ。
フランス語で、フォア(foie)は「肝臓」、グラ(gras)は「脂の多い」で「脂肪肝」を意味します。
ガチョウ等に沢山の餌を与える事で肝臓を肥大させて作るとされているが、人間も同じように栄養を蓄えすぎてしまう事で脂肪肝となります。
健康診断を受けた成人の20〜30%は脂肪肝を指摘されており、現代では生活習慣病のひとつとして関心が高まっています。(World J Gastroenterol. 2012 Apr 7; 18(13): 1508–1516.)
脂肪肝とは
肝臓の細胞の30%以上に中性脂肪が溜まった状態を脂肪肝といいます。
脂肪肝の一部は、「脂肪肝→慢性肝炎→肝硬変→肝不全や肝臓がん」と進行することもある疾患です。
現在、日本では、過栄養や運動不足、肥満から脂肪肝の割合は増加しています。
脂肪肝になっていても自覚症状はほとんどありませんが、体の代謝機能が落ち、糖尿病や脂質異常症、高血圧等の発症にも繋がる為、健康診断等で脂肪肝を指摘された場合は早期に治療する事が大切です。
脂肪肝の検査、診断
脂肪肝は超音波(エコー)やCTなどの画像解析による検査で肝臓への脂肪の溜まり具合を判断し、血液検査とあわせて診断します。
血液検査では、肝細胞が壊れると肝臓の酵素であるASTやALTの値が上昇する場合が多く、γ-GTP(ガンマ‐GTP)などの上昇も見られます。
γ-GTP(ガンマ‐GTP)はアルコールに敏感に反応するため、飲酒した翌日の採血で上昇が見られた場合は、一定期間の禁酒後に再検査し、アルコールによる上昇か、肝臓等の障害による上昇かを判断する必要があります。
脂肪肝の改善と肝機能を高める方法
脂肪肝の改善
まずはなぜ脂肪肝になったのか、ご自身の生活を振り返り原因を明確にする事から始めましょう。
お酒の飲み過ぎが原因である場合は日々の飲酒量を見直し、休肝日を作っていく事が大切です。
また、アルコールの分解には沢山の水が必要となります。肝臓の負担を減らす為にもお酒を飲む時は必ずお茶やお水等のチェイサーを飲むように心がけましょう。
コロナ太りによる急激な体重増加で脂肪肝になってしまったという方も多く見受けられます。
食べ過ぎや運動不足が続いている場合は、糖質(https://serai.jp/health/1055744)や脂質(https://serai.jp/health/1053440)の摂りすぎに気をつけてバランスの良い食事を摂る事、何か食べたくなったら体を動かして、摂取エネルギーを減らし消費エネルギーを増やす習慣に変えていくのも良いでしょう。
弱った肝臓の機能を回復させる食材
(1)大豆製品(https://serai.jp/health/1058372)
大豆に含まれる良質なたんぱく質やレシチン等の栄養素が肝臓の機能を高めてくれます。
(2)シジミ
シジミに含まれるオルニチンが肝臓で有害物質であるアンモニアの解毒を促進させます。肝臓の働きを保ち疲労回復にも有効です。
(3)オレンジ、グレープフルーツ
「抗脂肪肝ビタミン」とも呼ばれるイノシトールが含まれ、脂肪の流れを良くして、肝臓に余分な脂肪が蓄積しないようにコントロールする働きを担っており、脂肪肝を防ぐ効果があります。
(4)レバーや豚肉、玄米
ビタミンB群が豊富に含まれ、肝機能を正常化させる働きがあります。
* * *
私達の体の中で重要な働きをしてくれている肝臓。
脂肪肝と指摘されてもいまいち病識のない方も多いのではないでしょうか。
私達がお酒や食事を楽しめるのも、ひとつ肝臓のおかげである事を認識し、日々労わる事も大切にしていきたいですね。
文/中村康宏
医師。虎ノ門中村クリニック院長。アメリカ公衆衛生学修士。関西医科大学卒業後、虎の門病院で勤務。予防の必要性を痛感し、アメリカ・ニューヨークへ留学。予防サービスが充実したクリニック等での研修を通して予防医療の最前線を学ぶ。また、米大学院で予防医療の研究に従事。同公衆衛生修士課程修了。帰国後、日本初のアメリカ抗加齢学会施設認定を受けた「虎の門中村康宏クリニック」にて院長。一般内科診療から健康増進・アンチエイジング医療までの幅広い医療を、予防的観点から提供している。近著に「HEALTH LITERACY NYセレブたちがパフォーマンスを最大に上げるためにやっていること」(主婦の友社刊)がある。
【クリニック情報】
虎の門中村クリニック
ホームページ:https://toranyc.com
住所:東京都港区虎ノ門3丁目10-4 虎ノ門ガーデン103
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