建設会社専務にして、女性建築家集団代表。その元気の源は、3種類の食品群をバランスよく組み合わせた朝食だ。
【岡野美紀子さんの定番・朝めし自慢】
神奈川県横浜市に、女性建築家による総合プロデュース集団がある。『WHAIS(ワイズ)』である。その代表理事を務める岡野美紀子さんが、次のように語る。
「私自身が建設業界で長く働いてきて、住まいの鍵は女性が握っていると感じてきた。けれど、間取りや設計の多くの部分は男性目線で作られがち。そこで女性の要望に柔軟に、かつ的確に対応できる場を作りたいと思っていました」
もうひとつ、優秀な女性建築家の活躍の機会が少ないことも気になっていた。かくして2009(平成21)年、女性建築家集団『WHAIS』を設立。女性ならではの視点を生かした数多くの住宅や店舗を手がけてきた。具体的にいえば、見せる建築よりも使い勝手を重視した、裏動線までをも考えた設計だ。
昭和33年、宮崎県生まれ。共立女子短期大学卒業後、日本経済新聞社サイエンス編集部に勤務したが、父・岡田清人さん(現会長)の独立に伴い退社。昭和57年、父と一緒に『栄港建設』を設立した。
「建築畑ひと筋の父に引き込まれるように、会社設立手続きから関わることに。簿記学校にも通いました。父は仕事を家に持ち込む人で、現場監督や職人さんたちが度々家に来ていたので、建築の世界に抵抗はありませんでした」
以来40年、人手不足やバブル崩壊、構造不況などを乗り越えてきた。現在、弟の岡田雅人さんが社長、岡野さんは専務取締役。“ただいま”“おかえり”の声が行き交う明るく風通しのいい社風だ。
社員が作る“eikoランチ”
朝は早い。午前4時30分から5時に起床。1時間半の愛犬との散歩後、朝食は7時半頃だ。
「生野菜やポテトサラダ、卵とソーセージの動物性たんぱく質、牛乳とヨーグルトが定番。それにスープは“だし&栄養スープ”を愛用。バランスよく栄養補給できる上に、お味もいいんですよ」
昼は市販の弁当が多いが、週に一度は“eikoランチ”がある。
これは料理上手な社員が、ひとり暮らしの会長の健康を気遣って3年前から始めたものだ。
「父のために糖尿病食を作ってくれ、私や希望する社員も無料でこの恩恵に浴することができます」
まことに家庭的な職場である。
人と人との繫がりが、仕事と知識の幅を広げる
“女性のプロ”たちによる空間作りで好評を得ている『WHAIS』だが、もうひとつの柱が“ツナガル活動”だ。岡野さんが語る。
「異なる業界の方々と“ツナガル”ことが、多くのビジネスチャンスを生むと考えております。私自身、神奈川県の中小企業家同友会で他業種の方々とお会いし、知識も仕事の幅も広げることができました。この体験を孤独になりがちな女性事業家たちにも生かしたい」
そのために定期的に開催しているのが“ランチラボ+プラス”だ。ゲスト講師を迎え、仲間とともにランチを囲んで勉強会を開く。新しい出会いにより多くの価値観を知り、また自分の価値観を伝えることで、互いに成長し、学びあえるという。
この行動力は私生活にも及ぶ。
“毎日お米を食べているけれど、お米ってどう作るの?”という疑問がわけば、夫の祐三さんと一緒に米作りを実践。また、3年前に日本で開かれたラグビーワールドカップでは、アフリカ・ナミビア共和国の選手らに茶道の点前を披露。
公私ともに、その柔らかな物腰のなかに、尽きぬ好奇心と行動力が秘められている。
※この記事は『サライ』本誌2021年10月号より転載しました。年齢・肩書き等は掲載当時のものです。 ( 取材・文/出井邦子 撮影/馬場 隆 )