福井には、何百年も受け継がれてきた伝統の蕎麦食文化がある。
文化8年(1811)の古文書には、蕎麦切りを、大根おろし、葱、花かつおなどで食べる、御馳走としての蕎麦が記録されている。薬味の内容などは、今、みんなが食べている越前おろし蕎麦と、まったく変わりがないのだ。
現在、今庄では、昔ながらの蕎麦のおいしさを復活させようという活動が始まっている。
伝統の食文化というものは、私たちの祖先が、子供たちや子孫に、命を養うおいしいものを食べさせたいと工夫を積み重ねた、知恵と愛の結晶だ。
今日より明日、明日よりさらに未来へと、変わっていくのが良いこともあるだろう。
同時に、昨日と変わらぬ時間を過ごせることの幸福を、大切にしなければいけないこともある。
蕎麦は昔のままがいい。
守るべき宝物は、過ぎてきた時間の中にある。
ほっと今庄・おばちゃんの店
住所:福井県南条郡南越前町今庄9-13
電話番号:0778-45-1144
営業時間:10時~17時
定休日:火曜
文・写真/片山虎之介
世界初の蕎麦専門のWebマガジン『蕎麦Web』(http://sobaweb.com/)編集長。蕎麦好きのカメラマンであり、ライター。伝統食文化研究家。著書に『真打ち登場! 霧下蕎麦』『正統の蕎麦屋』『不老長寿の ダッタン蕎麦』(小学館)、『ダッタン蕎麦百科』(柴田書店)、『蕎麦屋の常識・非常識』(朝日新聞出版)などがある。