
スイスの独立時計ブランドORIS(オリス)が、伝説的なダイアルデザイン「ブルズアイ」を約30年ぶりに復活させました。グレーとブラックの二色が描く同心円が、的(ブルズアイ)を想起させることから、コレクターたちが親しみを込めて名付けたペットネームです。1910年代から同社のモデルに幾度となく登場してきた意匠が、ビッグクラウン ポインターデイトという名作コレクションのなかで帰ってきました。
文/土田貴史
飛行士のために生まれた、時を超える実用美
ビッグクラウン ポインターデイトの誕生は1938年。航空黎明期、パイロットたちが直面していた課題を解決するために生み出された時計です。
その最大の特徴が、名前の由来でもある「ビッグクラウン(大型リューズ)」です。当時の飛行士は厚手のグローブを装着して操縦にあたっていました。そのため、通常サイズのリューズでは時刻調整が困難でした。
ORISはこの実用面の問題に着目し、グローブを着けたままでも操作しやすいよう、リューズを大型化しました。この人間工学に基づいた設計が、約90年を経た今もビッグクラウンシリーズのアイデンティティとして受け継がれています。

もうひとつの特徴が「ポインターデイト」です。一般的な時計の日付窓とは異なり、中央の赤い先端を持つ針が外周の日付表示を指し示す機構です。この方式は視認性に優れ、日常生活において瞬時に日付を確認できる利便性を提供します。時分針と同じ感覚で日付を読み取れるため、ビジネスシーンでのスケジュール管理にも重宝するでしょう。赤色アラビア数字との組み合わせにより、レトロスタイルな文字盤デザインを実現しています。

今回復活した「ブルズアイ」の名は、そのダイアルデザインに由来します。クールグレーとブラックの二色が描く同心円パターンが、射撃の的を思わせることから、時計愛好家たちがこう呼んできました。このデザインが初めてORISの時計に登場したのは1910年代。当時のカタログには二色の同心円デザインを持つ懐中時計が掲載されています。20世紀半ばには高い人気を博し、最後に採用されたのは1998年。それ以降、姿を消していた意匠が、四半世紀以上の時を経て戻ってきました。
38mmのステンレススチールケースに収められたこのモデルは、コインエッジベゼルとチェルボ ボランテ製の黒い鹿革ストラップを組み合わせ、赤のデイト表示リングがアクセントを添えます。自動巻きムーブメント「Oris キャリバー754」を搭載し、シースルーバックから赤いローターを楽しむこともできます。

流行に左右されず、独自の信念を貫く。そのORISの精神を体現する「ビッグクラウン ポインターデイト ブルズアイ」は、時を超えて愛される普遍的な価値とは何かを、静かに問いかけてくる一本です。

自動巻き(Oris Calibre 754)、パワーリザーブ41時間、ポインターデイト、ステンレススチールケース(径38mm、厚さ12.2mm)、シースルーミネラルガラス、チェルボ ボランテ製ブラック鹿革ストラップ、5気圧防水、36万8500円(税込)。問い合わせ/オリスジャパンTel.03-6260-6876
www.oris.ch





