「町中華」はすでに日本の郷土料理のひとつといえる。その土地、土地の名産食材や気候風土、独特の食文化によって育まれ、地元民に愛される「町中華」の魅力とは何か。日本各地で進化を続ける名店にて、その真髄を探る。

春雨と白湯のご当地麵、“太平燕(タイピーエン)”

麺に春雨を使う。鶏ガラや豚骨で取った白湯スープとよくからみ、具材もたっぷり。最後の一口までおいしくいただける。968円。
調理の際は1人前の材料を小皿に分けて用意。入江さんが修業時代にホテルで習ったやり方を守る。春雨は戻してある。
具材は、豚肉、イカ、モヤシ、ハクサイ、ニンジン、キクラゲなど。野菜は素早く炒めシャキシャキ感を残す。茹で卵をのせて完成。

「太平燕(タイピーエン)」は熊本県民であれば、誰もが知る麺料理だ。白湯スープに野菜と肉、魚介類などがのり、茹で卵が加わる。一見、五目ラーメンのようにも見えるが、麺をすくうとそこに現れるのは春雨だ。

太平燕は元々、中国・福建省で祝い事などで食べられる特別な料理を指し、フカヒレや燕の巣などの高級食材が入っていたとされる。明治以降、華僑から太平燕が伝わり、フカヒレの代わりに春雨を、卵を燕の巣に見立てて、次第に今の形になったという説がある。熊本市内の中国料理店では、昭和初期からメニューにあり、学校給食にも登場する定番の県民食だ。

健康志向で人気が増す

『まるみ』は、熊本市の中心部からクルマで約30分、国道3号線沿いにある創業50年を数える町中華である。当然、太平燕は欠かせない定番。同店社長の入江雄二さん(71歳)はこう語る。

「近年は健康志向もあり、野菜が多く摂れて低カロリーの太平燕が、とくに女性に人気です」

熱々をいただきたい。優しい味のスープが春雨によく合い、具もたっぷり。見た目以上の量感で、満足のいく一杯になるはずだ。

牡蠣の甘唐辛子炒め。熊本近海産の牡蠣を揚げ、ニンニクの芽やギンナンなどと甘辛く炒めた。熊本ではポピュラーな一品。1980円。
テーブル席のほかに円卓や座敷も用意して、ひとり客から家族連れ、団体まで受け入れる。11時半の開店後すぐに満席になる人気店。

中国料理 まるみ

熊本市北区植木町滴水440-2
電話:0120・540・063
営業時間:11時30分〜22時(最終注文21時)
定休日:月曜(祝休日の場合は営業、翌日休み)
交通:JR鹿児島本線植木駅よりクルマで約5分 駐車スペースは80台分あり、大型バスも受け入れる。

撮影/藤田修平

※この記事は『サライ』本誌2025年3月号より転載しました。

サライ2025年3月号は大特集『「ガチ中華」VS「町中華」』

 

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