「町中華」はすでに日本の郷土料理のひとつといえる。その土地、土地の名産食材や気候風土、独特の食文化によって育まれ、地元民に愛される「町中華」の魅力とは何か。日本各地で進化を続ける名店にて、その真髄を探る。
春雨と白湯のご当地麵、“太平燕(タイピーエン)”



「太平燕(タイピーエン)」は熊本県民であれば、誰もが知る麺料理だ。白湯スープに野菜と肉、魚介類などがのり、茹で卵が加わる。一見、五目ラーメンのようにも見えるが、麺をすくうとそこに現れるのは春雨だ。
太平燕は元々、中国・福建省で祝い事などで食べられる特別な料理を指し、フカヒレや燕の巣などの高級食材が入っていたとされる。明治以降、華僑から太平燕が伝わり、フカヒレの代わりに春雨を、卵を燕の巣に見立てて、次第に今の形になったという説がある。熊本市内の中国料理店では、昭和初期からメニューにあり、学校給食にも登場する定番の県民食だ。
健康志向で人気が増す
『まるみ』は、熊本市の中心部からクルマで約30分、国道3号線沿いにある創業50年を数える町中華である。当然、太平燕は欠かせない定番。同店社長の入江雄二さん(71歳)はこう語る。
「近年は健康志向もあり、野菜が多く摂れて低カロリーの太平燕が、とくに女性に人気です」
熱々をいただきたい。優しい味のスープが春雨によく合い、具もたっぷり。見た目以上の量感で、満足のいく一杯になるはずだ。


中国料理 まるみ

熊本市北区植木町滴水440-2
電話:0120・540・063
営業時間:11時30分〜22時(最終注文21時)
定休日:月曜(祝休日の場合は営業、翌日休み)
交通:JR鹿児島本線植木駅よりクルマで約5分 駐車スペースは80台分あり、大型バスも受け入れる。
撮影/藤田修平
※この記事は『サライ』本誌2025年3月号より転載しました。

