京料理や野菜、湯葉、豆腐、和菓子など京の食材が上質さを保ちながら発展するのは、地下深くにたゆたう清らかな水の力といっても過言ではない。古から都を潤してきた京の水は、今も満ちて京の食を高めていく。
Ristorante t.v.b|京の気候風土が育む食材でお誂え形式のイタリアンを
お茶屋や料理屋が軒を連ねる祇園町南側。石畳の通りに現代的なレストランが現れる。この店は、2007年に開業したイタリア料理店。もともと野菜中心の品書きで知られる店だったが、2017年に、京野菜など京都の食材をさらに充実させ新装開業した。
流行を意識しながらも落ち着いた空間で、「お誂え料理」という新たな形式を取り入れた。ちなみに、「お誂え」とは、ワゴンにのせて運ばれる野菜や魚介類、肉類などから、客が食べたい食材を選び、「この野菜をサラダに、この魚を炭焼きに」など指定できるもの。和食の割烹料理に通じる。食材遣いが巧みな京都ならではの形式といえるのかもしれない。
なかでも力を入れるのが、上賀茂や鷹峯の露地野菜を活かすこと。上賀茂は、神山湧水で知られる上賀茂神社のお膝元。また鷹峯界隈は「京見峠の水」など山間の水が湧く地。いずれも古より湧き出て滋味豊かな野菜を育んできた。
「そのまま食べて風味ある野菜だからこそ、調理し過ぎず個性を引き出します」と言うのは、鷲見好示シェフ(48歳)。名古屋や京都で多彩な料理を身に付け、その腕を見込まれ『リストランテt.v.b』の料理長に抜擢された。鹿ヶ谷南瓜はさっと揚げる、オクラや蓮根は軽く蒸すといった調理法で、くっきりした個性を封じ込める。さらには、京都の気候風土で育てられた「京都牛」や近隣の豆腐店で作られた湯葉も用い、「お誂え」という京都文化を今に繋ぐ。
Ristorante t.v.b
京都市東山区祇園町南側570-155
電話:075・525・7070
営業時間:12時~13時、18時~20時(いずれも最終入店)
定休日:日曜(不定休あり)
交通:京阪本線祇園四条駅下車、徒歩約10分