
この秋にスペインの農場で収穫して搾ったばかりの「エキストラヴァージン緑果オリーブオイル」(井上誠耕園)を使って、東京・麻布『分とく山』の野﨑洋光さんが考案した和の献立。左手前から時計回りに「けんちん汁」「鯛飯」「ほうれん草白和え」(作り方は後述)
“日本の地中海”とも呼ばれる瀬戸内海に浮かぶ小豆島(しょうどしま)は、温暖な気候に恵まれ、古くからオリーブ栽培がさかんでした。この地で、親子3代70年にわたってオリーブを生産し手摘みの伝統を守るオリーブ農家が「井上誠耕園(いのうえせいこうえん)」です。
井上誠耕園では、毎年11月、オリーブが完熟する少し前に、“オリーブオイル・ヌーヴォー”とも言うべき「エキストラヴァージン緑果オリーブオイル」を販売しています。完熟一歩手前の緑果からとれるオイルは、爽やかな香りとピリッとした心地よい辛みと程よい苦み、加熱しても失われない力強い風味が特徴的です。
しかし、緑果オリーブから搾れる油の量は完熟オリーブの約半分しかなく、さらに小さな島で栽培できるオリーブには限りがあります。それでも、「もっと多くの方に、緑果オリーブオイルの美味しさを楽しんでいただきたい」と、井上誠耕園の3代目園主・井上智博さんは考えました。
そして、提携農家を求めて、一路、オリーブ大国・スペインへ。探し求めたのは、愛情を込めて安心・安全なオリーブを作っている農家です。一軒一軒訪ね歩き、ようやく、農薬を使わない有機栽培をしている老舗農家「ルケ家」に出会います。

井上誠耕園の3代目園主・井上智博さん(左端)と 搾油責任者・大坪さん(右端)、 スペインのオリーブ農家・ルケファミリーのラファエルさん(中左)と マニュエルさん(中右)
「ルケ家」との出会いから11年。今年も、スペインの農場から「エキストラヴァージン緑果オリーブオイル」が届きました。園主である井上さん自らが現地に赴き、農家の目利きで収穫時期を見極めたうえで、収穫してすぐに搾ったフレッシュなオリーブオイルです。
果実の熟し具合から判断して、今年は、昨年よりも約1週間、搾油を遅らせることにしたそうです。物作りに真摯に取り組む農家だからこその決断でしょう。その甲斐あって、すっきりした味わいながらまろやかな口当たりで、多くの方に喜ばれるオリーブオイルに仕上がりました。

まだ緑色の段階の若いオリーブの果実(緑果)から搾ったばかりのオイルは、鮮やかな緑色をしている。

そんな緑果オリーブの搾りたてを瓶に詰めた、井上誠耕園の「エキストラヴァージン緑果オリーブオイル」。爽やかな風味と心地よい辛みが楽しめる
オリーブオイルというと、パスタやサラダといった料理が真っ先に思い浮かぶと思います。もちろんそういった料理とオリーブオイルとの相性は抜群なのですが、じつは日本人になじみ深い和食にも大いに活用できるのです。
そこで今回は、今だけしか味わえない「エキストラヴァージン緑果オリーブオイル」を使って、日本料理店『分とく山』総料理長の野﨑洋光(のざき・ひろみつ)さんに、家庭で楽しめる和の献立を3品教えていただきました。

野﨑洋光(のざき・ひろみつ)さん。1953年、福島県生まれ。「東京グランドホテル」、「八芳園」を経て、80年に『とく山』料理長、89年に東京・麻布に店を構える日本料理店『分とく山』総料理長となる。
※ 次ページでは野崎さんに、フレッシュなエキストラヴァージン緑果オリーブオイルを使った、家庭でできる和の献立3品をご紹介いただきます。
