急ぎ足の観光客だけでなく、地元の「みやこ人」たちからもこよなく愛される京都の「おうどん」。出汁や麺、具材など個性豊かなメニューの数々と、その美味しさの秘訣を紹介する。

たっぷりの食材を詰め込んだ「芳香炉」で味わう2種の麵

晦庵 河道屋本店(うどん鍋)

「芳香炉」8800円(2人前)。湯葉、真蒸(しんじょう)、飛龍頭(ひりょうず)、鶏、九条ねぎ、菊菜、ほうれん草、椎茸が具材。左は自家製の蕎麦とうどん。
食べ応え満点だが野菜中心なので健康的。具材の味を含んだうどんもつるっとして美味しい。

名菓「蕎麦ほうる」で名高い総本家『河道屋』は享保年間(1716~36)の創業。14代目当主が、昭和7年に開業したのが『晦庵(みそかあん)』だ。孫で現店主の植田健さん(70歳)は、「14代目は茶も嗜む粋人で、店を茶室のような数寄屋建築にし、時には茶会なども開いていたようです」と語る。風雅な門構えや網代建具、船底天井などが今も残る。同店の「芳香炉(ほうこうろ)」は、中国の鍋「火鍋子(ホーコーズ)」に当て字をして命名したもの。創業当時からの名物鍋で、当時は中央の筒に炭を入れて熱する仕組みだった。

湯葉や真蒸(しんじょう)、飛龍頭(ひりょうず) 、椎茸、菊菜など8種類ほどの具材を、利尻昆布と3種の節でとった出汁で煮込む。締めには自家製の蕎麦とうどんを入れ、すだちを絞って味わうのがおすすめだという。野菜や湯葉をうどんとともにたくさん食べられると、女性や家族客にも好評の品だ。

「デビッド・ボウイさんは庭の見える座敷、黒澤明監督は2階の座敷がお気に入りでした」と言うように、多くの著名人が訪ねることでも知られる。

玄関から入ってすぐの小上がり席。中庭を挟んで奥にはテーブル席、2階には座敷がある。
風雅な数寄屋建築も見所。店内には貴重な軸も。 

京都市中京区麩屋町通三条上ル下白山町295
電話:075・221・2525
営業時間:11時~20時(最終注文、「芳香炉」は19時) 
定休日:木曜
交通:京都市営地下鉄東西線京都市役所前駅より徒歩約5分

 

取材・文/中井シノブ 撮影/高嶋克郎、竹中稔彦
※この記事は『サライ』2022年3月号別冊付録より転載しました。

 

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