おしゃべりする、ぼーっとする、読む、学ぶ、考える、俗世間の塵を払う──そこは人間にとって大切なものに満ちた場所。喫茶店でしか出会えない“普段着の京都”をご案内します。

自家焙煎豆とサイフォンで最高のコーヒーを淹れる店

現代的な内装だが、コーヒーは自家焙煎の実力派。「焙煎だけは人任せにできない」という。

店主の山本一夫さん(72歳)によれば、『はなふさ』という店は、もともと裏寺町にあった。山本さんの父が創業し、京都で初めてサイフォンを採用した店として賑わった。大阪万博の頃は1杯100円で1日10万円稼いだという。中学生の頃から手伝っていた山本さんは、28歳のとき、金閣寺のそばで『山本屋コーヒー店』として独立し、のちにこの東天王町にも店を出した。

「『はなふさ』の名前だと、流行ったときに親のおかげだと思われる。それがくやしくてね」

平成13年に元祖『はなふさ』が閉店したのち、ようやく『はなふさ』を名乗り、ふたつの店舗をそれぞれ『ノース店』『イースト店』として今にいたる。

サイフォンを扱う山本さんは姿勢がよく、作業に無駄がない。思わず見とれてしまう。カウンターに座るのもおすすめだ。

「ツバメ返し」で濃厚に

やや苦みのある「サントスブレンド」480円。「クラブハウスサンド」880円は、カリっと焼いたサンドイッチ用のパンが香ばしい。

ガスバーナーでフラスコを熱すると、ポコポコと湯が沸いて上の漏斗にコーヒーができていく。このときフラスコの底に少し湯が残ってしまうので、山本さんはコーヒーをフラスコに戻して、再び沸かす。これを早業で行なう。誰が呼んだか「ツバメ返し」。『はなふさ』流の濃厚なコーヒーができあがる。

ブレンドの定番は、やや苦みの「サントス」と、軽い酸味とコク、香りの「モカ」。前者は、クリアな苦みで、喉越しがよい。後者は、フルーティな香りのあとにワインのような酸味が広がる。明快にコントロールされた味。飲み比べれば、誰もが違いのわかる男(女)になれる。

看板にはサイフォンと蝶ネクタイのマーク。豆は60kgの麻袋で仕入れ、週1回自宅の隣で焙煎。

はなふさ珈琲店 イースト店
京都市左京区岡崎東天王町43‐5レジデンス岡崎1階
電話:075・751・9610
営業時間:8時~翌2時
定休日:無休
交通:京都市営バス東天王町バス停より徒歩約1分
焙煎豆も販売。喫煙可。駐車場あり。

【立ち寄り情報】
・金戒光明寺まで徒歩約10分。「黒谷さん」と呼ばれる古刹。比叡山を下りた法然が初めて草庵を結んだ地。京都守護職となった会津藩主松平容保が本陣を置いたことでも有名。
・南禅寺まで徒歩約12分。
・銀閣寺まで哲学の道経由で徒歩約25分。

取材・文/大塚 真、撮影/塩﨑 聰
※この記事は『サライ』2021年10月号別冊付録より転載しました。

 

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