簡単なようで、食感や味わい、形、調理法など、実は個性的な楽しみ方が提案されている日本のプリン。ここでは、老舗から注目の新店まで、全国各地で話題となっている名店の味を厳選して紹介する。
全体から漂うオレンジの香り
相楽園パーラー(神戸)
6000坪もの日本庭園が人気を集める「相楽園(そうらくえん)会館」が、2018年に「THE SORAKUEN」にリニューアル。『相楽園パーラー』は同施設の1階にある。
シェフの木村福孝さん(42歳)は地元の食材に着目し、「鶏園みやもと」の卵を使用した自家製プリンをここで提供している。
「みやもとの鶏は元気に走り回っていたのが印象的でした。卵の白身はきめ細かな卵白がたつので、黄身も美味しいに違いないとプリンを作ることにしたのです」
試行錯誤を繰り返し、全卵と卵黄の使用量を工夫して、理想の固さを発見。また、同店のプリンは長方形だが、長方形のテリーヌ型容器に流し込んだプリン液に、ゆっくり火を入れて固めている。こうすると、程よい固さがありながらも、しっとりした仕上がりになるという。
オレンジの香りを強調
「フランス修業中に食べた友人の母親の手作りプリンが、カラメルのほろ苦さにオレンジの皮をすりおろしてあって、実に香りが効いたものでした」(木村さん)
香りも大切な要素だと気づき、オレンジリキュールで風味を付けたホイップクリームを添えた。そして、新鮮なオレンジを皿の底に忍ばせ、ふちにもオレンジの皮を散らしている。カラメルは苦めだが、プリンやホイップクリームだけでなく、お酒との相性も考えてのこと。中甘口でキャラメル風味のある「マデイラワイン」と一緒に食するのがお勧めだそうだ。
相楽園パーラー
兵庫県神戸市中央区中山手通5-3-1「THE SORAKUEN」1階 電話:078・341・1191 営業時間:11時〜17時 定休日:水曜 交通:神戸市営地下鉄西神・山手線県庁前駅下車、徒歩約5分
取材・文/飯島千代子 撮影/山下亮一、高嶋克郎、鈴木暁